おやじ達の青春夏

団塊世代のおやじ達が過ごした楽しかった青春時代の想い出の数々。

#24★★女が消えた・・・

2013-10-25 | おやじ達の青春夏・エピソード
今年は初参加のサカキバラが・・・。
地元の友達で学校は違うが中1年の頃からの付き合いだ。
まだ女の子と付き合った事もないウブな奴で、
よく銭湯で女の子の事やパーティの事、
軟派の事等々と楽しい話を随分聞かせていた。
海にも何度も誘ったが奴は照れ屋な上に校則で
頭が坊主だったので女の子と接するのを嫌がっていたのだ。
そんな奴を何とか言い含めて海に誘い出した。
一人っ子なので両親を説得させるのも大変だったが、やっとの事で初めての外泊許可が出た。
それもたったの2泊。
海岸に出て知り会いの女の子と話をするにも顔を赤らめ会話が続かない。
そんな奴を見て女の子達が「かわいい~」と坊主頭を撫ぜられてますます照れていた。
2年前の自分を見ているようだった。
二日目の日、天気が悪く小雨まじりの曇り空、海で雨に振られるとやる事が無い。
他の連中は朝から麻雀をやっている。
麻雀好きな連中は晴れていても海岸に出ようともせずに麻雀を・・・。
そんな時、外で車のクラクションが鳴った。
「プッ、プッ、プゥ~」
誰だろうとサカキバラと窓から覗いて見ると
オープンの真っ赤なトヨタS800、私も知っている奴だ。
サカキバラの中学時代の同級生セキグチ君が助手席に女の子を乗せて遊びに来た。
似合わね~と思ったが声には出さずに
「うゎ~新車じゃない・・・カッコいい~ナ~、」
車が・・・と心で・・・。
彼は地主農家の跡取り息子で何でも手に入る羨ましい生活環境だそうだ。
それにしても草加の隣町、
八潮に住んでいるらしいが東京に隣接する地域に住む男にしては
センスが悪いし言葉に少々ナマリと独特のアクセントがある。
「よ~、解んね~べょ~此処」
「アッチコッチ探した~ョ」無理に標準語を使おうとしている。
「コイツはよ~ぉ~、ケイコちゃん」
「こっつぅ~はともだつのミナミハラとサカキバラ」
「こんにちは!」と可愛いい声、
そして不釣り合いなカップル、車の力だなと思った。
「こんにちは!」
サカキバラが「何時、買ったの車」と指をさした。
「母ちゃんに家の後継ぐからってョ~頼んべょ~6月に買ったよぉ~」
「いいなぁ~」
「入れば!今日は天気が悪いから海に出ないで家で音楽聞いてたよ」
無論、家にはテレビ等はない、
あるのはトランジスタ・ラジオかレコードプレイヤー位で電話や扇風機すらも無い。
「今日は皆海に出ないから中で麻雀やってるよ、上がれば!」
「うん」
「それじゃ~おじゃますま~す」
「はぃ、どうぞ、どうぞ・・・とリーチ」
4人はチラリと女を品定めしたが、
男友達には目もくれずに再び麻雀に・・・。
サカキバラが二人を紹介した。
セキグチは部屋に入るなり麻雀卓の傍に座り込み除きこんでいた。
ねっから麻雀が好きなようだ。
連れて来た女の子は関口の傍に寄り添い退屈そうにボ~っと眺めている。
時々、サカキバラと言葉を交わす程度で、
関口は会話に加わる訳でもなく麻雀に見入っている。「
セキグチ、車で海岸でもドライブしてくれば・・・」
「あぁ~後で行くべ~」
私自信は麻雀やパチンコ等の掛け事は好きではない。
こんな物に時間を費やす暇があるなら軟派と言うゲームをしていた方が楽しいと思っている。
「好きさ、好きさ、好きさ、お前の~すべェテ~お~、お前が~好きだょ~、お前が好きな~んだ~」
もう、音楽も聞きあきて来た。
「サカキバラ、雨降ってないから渚銀座でもブラつこうか?」
セキグチ達はもう1時間近くも麻雀を・・・。
「もう直ぐ半チャン終わるから、終わったら俺の変わりに入れば・・・」
と言うオタケの言葉。
待ってましたとばかりに「いい~」とニコッと一つ返事。
何かトラブルにならなきゃいいければと思いながらサカキバラと二人で外へ
「チョット海岸へ行って来るから」
我々の海での過ごし方を知っている奴は女連れで此処へは来ない。
仲の良い女の子や付き合っている子と会うのは都心で、
海へは絶対に連れて来ないし来たとしてもせいぜい1日か2日で帰る。
連れてきた場合にはけして眼を離せないのだ。
油断すると必ず誰かに連れていかれる。
連れて来た女の子に余程の自信があるなら別だが、
付き合いが浅い場合にはなおさらだ。
毎日、誰にも束縛されず、親の目が届かない自由な生活、
そんな生活をしている俺達の所へ女づれで、それも放りっぱなしで・・・何か起きない筈がない。
ましてや、この日は俺とサカキバラを除いて男が4人。
腹を空かせたライオンの檻に入って来たような物だ。
外に出かけたが天気が悪いせいか人出が少なく、
思うような娘は居なかったので2時間位ぶらついて家に戻って来ると、
家の中でセキグチか騒いでいる。
中へ入ると女の子の姿が見当たらない。
「やっぱし」と思った。
良く知らない友達の女には手を出して欲しくはなかったが心配が的中したのだ。
取りあえず「どうしたの?」と聞いた。
「ケイコが居無いんだょ~」
周りを見るとおオタケが居無い、
やったなオタケ・・・
まさかオタケが連れて行ったなんて言う訳にもいかないので、
トボケたふりをして「どうしたんだろう?」。
皆、知っているのだが言う訳にはいかないのでトボケている。
サカキバラはニヤニヤと笑っている。
「ぶらぶらと外に散歩にでも行ったんじゃないの?麻雀ばかりしてるからつまんなくて」
「待ってれば帰って来るよ」
さらに数時間が経ったがまだ帰らない。
知っていながら知らない振りをして心配するそぶり。
退屈な時間が過ぎて行く。
心配している友達をほって置く訳にもいかず・・・。
「オタケ~、早く帰ってきてよ~、頼むから」と心の中で呟いた。
麻雀をやっていたマコトとトシオ、チルの3人は痛まれず
「ミナミハラ、オキヤマの所へでも遊びに行ってくるわ!」と言って出ていった。
残された我ら3人。
「怒って電車で帰ぇたかなぁ~、そんなら俺も帰るべ~」
「それはないだろと思うよ、もう少し待って見れば!」
夜になってもまだ帰らない。
「何かあったかな~」
「警察に行った方が良いべ~かな~」
警察、まずいよそれでは誘拐になっちゃう
「警察に言うと、女の子の家に連絡が入るんじゃないの」
何で俺が言い分けをしなきゃなんね~んだ。
「セキグチは大丈夫なの?」
「荷物も車に有るんだから帰るわけもないしね」
「そぉ~か~」
「もしかして、誰か友達にでも会っちゃったんじゃないの?ここ電話も無いから連絡もできないしね」
これに納得したのか機嫌が悪くなったようだ。
しまったと思ったが言ってしまった事は取り返しがつかない。
何で俺がこんな思いをしなきゃならないんだよ。
突然、セキグチが立ち上がり外へ、車のトランクが閉まる音がした。
戻って来ると
「これ、置いて行ぐからよぉ~ケイコに渡して、俺、帰っから~よ~」
と女物のバックを玄関に置いて車に戻った。
止めるよりこの方が良いと思った。
我々も後を追い「じゃ~、気を付けてな~、戻ったら連絡するように言っとくから~」
「・・・・・・・」何も言わずに車を出した。
二人で顔を見合わせ「まいったな~」
「女連れで来て女取られちゃったなんてカッコわるいもんな!」
「だけど、オタケもやるよね」
「そうかな~、俺達の事を知っている奴から取るなら取られる奴も悪いんだからが仕方ないけど、
そんな事を知らない奴は油断しているから、そう言う奴の女に手を出すのは止めてほしいよなぁ~」
「俺達の知り合いだからよけい立場がないよなぁ」
「オタケ、帰って来るのかな~、セキグチ、アイツもう2度と此処へは来ないな!」
そして夜10時が過ぎようやく「ただいま~」とオタケと女の子の明るい声。
一緒に帰ってくるなよ~もしもセキグチが居たらどうすんだよ。
女も女だよ7時間も家開けてただいまは無いだろう、
少し気を使って別々に帰って来るとかしろよ。
俺がセキグチだったら大喧嘩になってるよ。
待てよ、なって無いかな?もしかしたら真っ赤なスポーツカーで軟派しに行ってたかも・・・。
取りあえずトラブルが無く良かった。

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