おやじ達の青春夏

団塊世代のおやじ達が過ごした楽しかった青春時代の想い出の数々。

#27★★隠れてないで出てきなさい!

2013-11-14 | おやじ達の青春夏・エピソード

小遣いも無くなって来たので、久しぶりに家に帰って来た。
暑い・・・暑い・・・。
家の手伝いをして小遣いをせびるのだ。
それにしても蒸し暑い。
2日もしない内に海に帰りたくなるがここはガマン、ガマンだ。
久しぶりに会ったサカキバラと銭湯に・・・
日に焼けて黒いのは分かっていたがまさかこれほどに黒いとは思わなかった、
真っ黒だ。他の人がチラチラと見ている。
それもその筈だろう19日間、毎日、
朝から夕方まで海に居るのだから顔から足先まで真っ黒で漁師みたいだ。
サカキバラも来年は髪も伸ばせるので自分も地元の友達ナオエ達と館山に家を借りると張り切っていた。
家に帰って3日目にタカハシから電話が「ミナミハラ?」
「うん、俺」
「さっきさぁ、エジプトから電話があってねェ昨日から友達3人で箱根の保養所に居るんだって、
それでね良かったら泊りに来ないかって誘われてさぁ、
フミオと俺は行くけれどミナミハラはどう行かない?」
「フミオの車で行くけれど向こうは3人だからさ~」
「ミナミハラ、暇だったら行くかと思ってさ~」
「いいね~行きたいけどさ~久しぶりに家に帰って来たばかりだから出ずらいな~」
「明日の何時?」
「お昼頃」
「解った、夜までに電話するよ」
エジプトは、タカハシが海で知り合った子で目が大きく
鼻が高くツタンカーメンのような顔をしているので付いたあだ名だ。
親に聞きにくい。
どうしょう・・・。
そうだ「宿題が溜まっているから明日、タカハシの家で勉強して来ても良い?」
「また出かけるの?」
「少しは家にいれば?」と母親が・・・。
「うん、だって・・・勉強だから・・・」
「ちゃんと勉強するの?」
「大丈夫だよ」
「・・・・・」
「それと小遣いも・・・」
「・・・・・」
翌日、母親に「じゃ~行って来るから」
「もしかしたら泊って来るかも知れない」
「今日、帰って来るんじゃないの?」
「お父さんに怒られてもお母さん知らないからね!」
「解った」
調理場から親父が怖い顔をして
「何処へ行くんだ!」
「勉強しに」
前日に隠して置いた荷物を取り出しフミオと待ち合わせた御徒町へ・・・。
そして経堂の駅前でタカハシを拾い。
真赤なムスタングでいざ箱根、芦ノ湖までドライブ・・・。
保養所はエジプトのお父さんの観光会社の物らしい。
「そう言えば途中で何か食べ物とか飲み物を買って来てって言ってたよ」
「保養所の近くには何も無いんだってさぁ」
箱根に近づくにつれて天気が悪くなって来た。
どうやら雨らしい。
地図で探しながらやっと着いた。
高台にある和風平屋の保養所、家の前には大きな駐車場が大型のバスが止められる位はある。
玄関前に車を止めて、プップゥ~とクラクションを鳴らした。
「中から女の子達が・・・」
「久しぶり~」
「ヤッチン、久しぶりね~」
「元気~」
「真っ黒じゃない、海で軟派ばかりしてるんでしょ~」
「そんな事無いよ」
「ハギヤさんも久しぶりね~」
「お互いに上野近辺なのに会わないわよね」
「ねぇ、入って、入って」
廊下を挟んで右側には障子張りの広い部屋が3っあり左側にガラス戸越しに駐車場が見える
。天気が良いと芦ノ湖が見えるらしい。
奥に入りリビングルームに通された。
「お友達を紹介するね」
「チエちゃんは知ってわよね」
「そしてユキちゃん」
「みんな学校の友達なの」
「よろしく、どうぞ」
「此方こそ」
「ビールとかも買って来たよ」
「今日はお昼頃から雨が降っていてね何も買いにいけなかったので助かったわ」
「チエ、コップ出してくれる」
「あと、これ乗せるお皿もねぇ・・・」
「これで良いの?」
持って来たポータブルプレィヤーでレコードを聴きながら、久しぶりの再会に話が盛り上がった。
外では雨が強くなったらしく屋根に当たる雨音がうるさかった。
柱時計がボ~ンボ~ンと鳴った。
9時だ。
普通だとこの辺で踊りを初めてチークタイムに持ち込むと言うパタ~ンだが、
気取り屋のタカハシとフミオは踊りはやらない。
せっかく三対三なのに・・・
部屋も丁度3つ有るし・・・
と勝手な思いを・・・。
そんな時にチエちゃんが「飲み過ぎちゃったみたいだから先にお部屋に行くわね」
するとエジプトが
「ハギヤさん付いて行って布団ひいてあげて」
うわ~良いタイミング。
となると俺はユキちゃんかぁ・・・。
ユキちゃん私達も部屋に行こうか?
タカハシ君達は真ん中の部屋で寝てね。
とエジプトは言いながら部屋に行ってしまった。
え~~別々に・・・。
その時、ガラス戸にライトが・・・
車のヘッドライトの光が部屋の中を一周した駐車場で車がUターンしたようだ。
すると、いきなりエジプトが慌てて部屋に入って来て
「パパが来た見たい!」
「え~うそ~」
「ホントに~」
「え~どうしょう」全員が慌てた。
「隠れようぜ」とフミオが言った。
そうだ隠れよう。
外は雨なので表に逃げる訳にはいかない。
玄関からは駄目だしそうなると勝手口か窓だけ等と家の中をウロウロと・・・。
「そうだ靴も隠さないと・・・」とタカハシが言った。
3人が一斉に玄関に走った。
外からは車のドァーの閉まる音が・・・バタン、バタンと・・・。
靴を抱えて隠れる所を探した。
俺は勝手口からドァーの外に出たが真っ暗闇の中を雨が強く降っている。
しかた無く軒先で雨をよけながら立ちすくんでいた。
あ~来るんじゃなかったな~家でおとなしくして居れば良かった。
と後悔をした。
雨が跳ねて足がビッショリ冷たい。
どれ位時間が経ったのだろうか?
時間が長く感じる。
タカハシ達どうしたかな?
すると勝手口のドァーが開きエジプトの声
「ヤッチン!パパが中に入りなさいって」
しぶしぶと中に入りお父さんと対面・・・。
「こんばんは、どうもすみません」
「キョウコ、何か拭く物を持って来なさい」
隣には運転手らしき人とタカハシが立っていた。
「三人で来たと言う事はもう一人は何処にいるのかな?」
「分りません」
「二人とも部屋に来なさい!」
「キョウコお前もだ!」
部屋にはユキちゃんとチエちゃんがかしこまって座っていた。
タカハシに小さな声で
「ねぇ、フミオは?」
「わからない」
「別々に逃げたから分からないよ」
運転手らしき人がフミオを探している。
各部屋に行き「隠れていないで出て来なさい」と呼んでいる。
何処にも居ない。
部屋に戻って来て「社長居ませんね」と言いながら
押し入れを開け左右、上下と覗き込んで探し
次は隣の納戸をそ~っと開け「うっ」と言いながら後ずさりを・・・。
驚いたようだ。そこにはフミオが立っていた
犬がチンチンをするように両手を胸元に置き手に靴を片方づつぶら下げていた。
思わず噴き出しそうになったが・・・。
「こんばんは、おじゃましています」あの気どり屋のフミオが・・・。
この姿と“おじゃましています”が可笑しかったが笑う訳にもいかず
隣に座っているタカハシを見ると下を向き肩が小さく震えていた。
声を出して笑いたかったがジィ~と我慢をした。
怒られながらも納戸のフミオの姿が頭から離れず思い出し笑いをこらえる方がつらい。
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