
「アタシにも献呈してよ~う


◆献呈 Widmung~『ミルテの花Op.25』(R.シューマン)◆
Widmungって“献辞”という意味らしい。どうも昔から、“献呈”という邦題に違和感があった。でも、ま、しょうがないか。
“献辞”とはいっても、中身はもう聴いているこっちが恥ずかしくなってしまうような一方的な愛の告白だ(一歩間違うとセクハラだな

しかもリュッケルトの詩。
この詩に加えて、上昇・下降を繰り返すアルペッジョがシューマンの溢れる情熱を物語っている。
シューマン30歳

(この“献呈”という歌曲が収められている『ミルテの花Op.25』という歌曲集は全26曲で構成されており、結婚前夜に自分の花嫁であるクララへプレゼントしたものだそうです。この『ミルテの花』が作曲された1840年という年は、『リーダークライスOp.24』、『リーダークライスOp.39』、『女の愛と生涯Op.42』、『詩人の恋Op.48』といった連作歌曲があいついで作曲された年でもあり、“歌曲の年”とも言われているそうです。シューマンは室内楽やピアノ曲など、同じジャンルの曲をまとめて作曲する傾向が強い作曲家だったので、これらもその一例ということになりますね。)
題名は忘れたが、シューマンを題材にした昔のシロクロ映画(たぶんコレ)で、ロベルト&クララVSフリードリヒ・ヴィークの結婚裁判のシーンをちらっと観たのを今ふと思い出ししました(苦笑) ロベルトやクララの伝記をちゃんと読んだことがないので真偽のほどはわからないが、なぜか、その法廷の場にリスト(これがまたあまりに似てなくて笑えるのだ!)も居合わせて、彼が証言(ただの発言?)だか擁護だかするシーンもあったりしてけっこう笑えた( ̄▽ ̄;) 実際この映画は派手に脚色されているようだ(笑)
ほかには・・・若きブラームスが初めてシューマンを訪ねてきて、子供達にもみくちゃにされるシーンもかなり笑えたり

今日ご紹介の“献呈”もしっかりセオリーどおり(?)取り上げられています♪
この“献呈”という曲は、ながらく原曲の歌曲としてではなく、あのリストの華麗なピアノ編曲版としてしか、知らなかった。
後半に向かっての盛り上げ方が、まるであの『愛の夢第3番』(リスト)をなぞるかのようで、いかにもリストらしい華やか~

クララは嫌がるかもしれないけど、いまだに大好き。なにしろこのピアノ編曲版は、あの歯が浮いちゃうような愛の告白(歌詞)がいっさいないのだから、“音”を加えることでそれを補ってもよいのではないかとさえ思うのだ。名編曲

原曲の歌曲のほうはといえば・・・
歌詞はヤケドしそうなくらいにアツアツ


実際のところ、初めて聴いたときはそのシンプルさに唖然としてしまったが、妙に納得もしてしまった



演奏は、バーバラ・ボニーとアシュケナージの伴奏。
バーバラ・ボニーは、歌手になる前はチェリストを目指していたらしい。
1994年のカルロス・クライバー指揮ウィーン国立歌劇場の『ばらの騎士』(R.シュトラウス)の伝説的なLIVEでの彼女は実に素晴らしかった。あれ以来彼女を知るようになったが、彼女の明るくチャーミングな歌声と、たしかなテクニック、そして広大なレパートリー・・・彼女ほどスタンダードという言葉があてはまる歌手もいないように思う。そつがなく、嫌味さのかけらもない。あのショートカットが似合うチャーミングなルックスとお姫様声

長く付き合える一枚だと思う。
リストのピアノ編曲版は、キーシンの(→こちら)がお気に入り


<CDデータ>
【演 奏】バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ヴラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
【曲 目】・『ミルテの花Op.25』より抜粋(R.シューマン)
・『女の愛と生涯Op.42』全曲(R.シューマン)
・『6つの歌曲Op.13』全曲(C.シューマン)
・『リーダークライスOp.39』より抜粋(R.シューマン)ほか
【録 音】1996年、ヘンリー・ウッド・ホール(ロンドン)
【レーベル】英DECCA
【品 番】POCL-1727
※このディスクはこちらで視聴可能です♪
ところで、彼女の新譜、フランツ・クサヴィエ・モーツァルト(モーツァルトの末息子)の歌曲集の評価はいかがなものか。興味津々
