ヨーロッパのサッカー市場のみならず、サッカー全般において今や市場はスポンサーなくしては動かない。
折りしも先程WEBを見ていたらヨーロッパチャンピオンズリーグの勝者とアジアの勝者が戦う可能性がある、と。スポンサー次第で…このスポンサー次第と言うのが問題だ。
今回は、EURO2004の決勝トーナメントに残ったチームにユニフォームなどを提供するスポーツメーカーに照準を当てて例に取り、スポーツメーカーの事業戦略についての考察をしてみたい。
先ず今回のEURO2004の決勝トーナメントに残った各国のサプライヤーを一覧化する。
決勝
ポルトガル Nike
ギリシャ Adidas
準決勝
オランダ Nike
チェコ Puma
準々決勝
フランス Adidas
イングランド Umbro
デンマーク Hummel
スウェーデン Ambro
決勝を含めるとメディアへの露出度が一番高いのはやはり2大スポーツメーカーと言われて久しいNikeとAdidasである。Pumaとしてはチェコの躍進と共に嘗ての栄光を取り戻すべく同国に期待していた筈であるが(同社を使用するItalyがあっと言う間にコケてしまったため。またブルガリアでは申し訳ないが期待はできない…)残念ながらサッカーとは強いチームが勝つとは限らない。Pumaにしてみると千載一遇のチャンスを逃した。。PumaにとってはItalyは決勝まで進むものとして計算していた筈である。少なくとも準々決勝以降、一つ以上その上に進むことは計算していた筈である。チェコの躍進で元は取れているとは思うが。。。
逆にAdidasとしてはヨーロッパの中ではプライオリティーカントリーの一つであろうフランスがコケてしまい、またその次に重要視されているスペインに至っては決勝トーナメントにすら行けなかったため、ギリシャの躍進はメディアの露出度を含めて相当大きな予想に反した効果が得られたのではないかと思う。
また、準決勝のポルトガル対オランダなどはNike同士の戦いであったのだが、試合内容もとても素晴らしく、語り継がれても良いシーンには必ずNikeのユニフォームがそこにある。今回お気付きの方も多いと思うが、ロシアにせよ、クロアチアにせよ、Nikeのユニフォームは各国の色調は勿論踏襲するにせよ、デザインは同じであった。背番号のフォントやロゴ。また胸の番号は丸囲みの表記でどの国であろうとも統一されている。これは当然同社の戦略的なものである。ユーザーからすると、胸に丸囲みの番号はNikeであると、その場では気付かずともスポーツメーカーが最も期待する〝店舗〟での購買の際にそのイメージがリマインドされ易いからである。
一般論としてスポーツ観戦には応援している自分たちを選手の活躍に投影したいがためにユニフォームを着て応援することが多いと思う。斯く言う自分もそうである。最近でこそないが、いわゆるユニフォームコレクターで今も東京の自宅には4-50枚のユニフォームがあると思う。
*ミラノには日本代表の最新版(選手が着るものと全く同
じ非売品と去年モデル)と95年当時のNike製のイタリア
代表ユニ、それと93年モデルのACミランのユニだけを持
ってきた。
イタリアの国民は然程ユニフォームを着てスタジアムに行くと言う事にこだわりはない模様で、逆にタオルマフラーは必需品と言うお国柄なのだが(とは言ってもユニフォームを着ていく人は多い)、ヨーロッパの他の国は結構ユニフォーム販売はスポーツメーカーにとってはドル箱である。既に各スポーツメーカーは算盤を弾いている筈である。
*レアルマドリーはベッカムの移籍金を昨年度のアジア
ツアーでのユニフォーム販売だけでペイしてしまった
くらいである。チーム側とサプライヤー側の取り分に
関してはその配分比率を知りたいものである。。。
各国代表のサッカー協会にしてみれば、このスポーツメーカーとの関係と言うのはとても重要なものである。例えば日本代表に関しては、98年のワールドカップを例に取ると本戦はAdidasだったが、その前年の予選はアシックス、その前の年はPumaと毎年ユニフォームが変わっていた。これは日本サッカー協会の戦略である。メーカーからすると是が非でもメディア露出を考えて本戦で、となるが、当時の日本はまだ一度もワールドカップに出たことはなく、仮に出られなかった場合、予選での使用で終わってしまうからである。この賭けに勝ったAdidasはその後継続して日本代表のオフィシャルサプライヤーとして君臨しており、2002年のワールドカップの際には80万着のユニフォームが販売されたと聞く。80万着と言えば、1着12000円の売上に対して、1着当たりの製造コスト(直接費、間接費をFull costingでアロケーションしたとして)を9000円と過程して、売上から引いた純利益は大体3000円くらいになるのではないだろうか?(この当たりきちんとした結果を知りたいものである)つまり、
800,000着 x 3,000円 = 2,400,000,000円になる。
24億円である!(勿論計算は推論である)利益率25%の商品なんてちょっとした金の成る木である。これも全てメディアの露出を計算し、且つ賭けに勝ったAdidasの戦略勝ちと言えよう。
メディアの露出度の計算をベースに、マーケティング効果を確かめる術をこの留学中に学びたいと思っているのであるが、どうもうちの大学院はその辺りの方法論を知っている教授がいなさそうで少々困っている。。。どなたかお知恵を拝借したい。。
IBMはテニスの4大大会でスポンサーをしていますが(恐らく)テレビで見る限り「IBM」の名前はとても小さくしか載っておらず、IBM自体このスポンサー活動で何を伝えたいんだろう、どうしたいんだろうという疑問で一杯でした。
メディアの露出度の計算をベースに・・・
というのは僕も余り聞いたことがないですね。今度大学の教授にでもそのような研究をしている人がいるのか聞いてみます。
IBMは4大大会のみならず他の大会でもスポンサーしていると思います。ウィンブルドンの前哨戦のドイツ大会はメルセデスカップですけど、IBMも冠大会しているのでは?こう言うものは効果を短期的なスパンでは計れないので、大企業としては政治的な駆け引きも含めて長期的にスポンサーするのが通例です。
次のBlogはそう言う側面にフォーカスして書きたいと思います。