東京電力の福島原発事故はその後、必死の作業がつづけられていて、1日も早い安定化が試みられています。しかし作業は遅々として進まず、今だにいつ解決できるかのメドもたっていません。
懸命の修復作業を見守りながら、今後の放射能汚染や電力不足などを心配している人はたくさんいます。それに関する情報はTVでたくさん報道されています。しかしTV画面にあらわれる技術者の説明は一般市民には大変わかりづらいです。どのくらい安全あるいは危険なのか・・・一般人が一番知りたい点が一向にはっきりしません。
残念ながら日本人より欧米人の科学者のほうが、素人にも分かり易く説明する能力に優れているようです。米国の MIT の物理学者である Dr Josef Oehmen は、MIT-NSE というサイトでこの原発事故に関する記事を毎日発表しています。非常に専門的な記述もありますが、一般人が知りたい情報もたくさん示されていますので、その中のいくつかを紹介したいと思います。
使用済み核燃料プール について: 2011/03/16付けの記事

使用済み核燃料 (SNF: Spent Nuclear Fuel) とは、原子炉で燃料として使用された後の燃料のことです。この燃料は、固形ペレットを燃料ロッドに納めた形状という点では、新しい燃料と見かけは同じです。SNF にはプルトニウムなどの放射性核分裂物質やアクチノイドが含まれているのが、唯一の違いです。そのため、遮蔽が必要になります。SNFは、停止した原子炉内の燃料ロッドと同様に崩壊熱を出します。それは、燃料内に堆積している核分裂物質やアクチノイドからの減衰放射能の大半が熱エネルギーに変わるからです。そのため、SNF も冷却する必要があります。ただし、発生する熱はわずかなので、原子炉を停止したばかり (12 時間以内) の燃料の場合ほど冷却の必要はありません。まとめると、SNF は、1)崩壊熱の低下とともに燃料を冷却できるようにするためと、2)放出される放射線を遮蔽するために、ある一定期間そのまま貯蔵されます。
そのため SNF は、水で満たされたプール、または空気を用いて燃料ロッドを冷却する大型キャスク(容器)に貯蔵されます。プールは原子炉の近くにある場合があります (BWR Mark-1型格納容器の場合は格納容器の上部階にあります)。このプールは非常に大きく、深さは12 メートル (構造によってはそれ以上) もあります。プールは、厚いコンクリート構造で、プール表面にはステンレス製の板が張られています。
SNF集合体はプール底部にあるラックに置かれます。したがって水面から SNF 集合体の最上部までほぼ 10 メートルの深さになります。中性子の連鎖反応発生を防止するために SNF 集合体は、ホウ素を含有するプレートで仕切られている場合があります。しかし、燃料に含まれるウラニウムは原子炉内で使い果たされてしまっているので、連鎖反応を維持するパワーは残っていません。したがって、中性子の連鎖反応が起きるおそれはさらに低くなります。貯蔵プール内には SNF を冷却するのに十分な水量があります。また、熱は、プールにある熱交換器によって取り除かれます。よってプールは、ほぼ一定の平均温度に保たれます。プールの水深のおかげで、SNF から放出される放射線は、プール周辺で作業員が作業しても安全なレベルにまで遮蔽されます。
貯蔵プールに漏洩が生じるか、または熱交換器が故障した場合、プールの水温は上昇します。そのような事態が続いた場合は、プールの水が沸騰し始めるおそれがあります。沸騰し続けると、プール水位が SNF 頂部より低下し、燃料ロッドが露出してしまいます。こうなると問題が生じることがあります。すなわち、空気による SNFからの熱の除去が十分に行われないために、ロッドが加熱し始めます。ロッドが相当に高温になると、ジルコニウム製の被覆管が蒸気や空気で酸化されて水素を発生し、それが発火することがあります。
このような事象により被覆管が損傷する可能性がありますが、その結果ヨウ素、セシウム、ストロンチウムといった放射性核分裂物質を放出することになります。注意していただきたいのですが、このような事象(冷却設備の故障、プール水の沸騰、露出した燃料ロッド棒の過熱、ジルコニウムの酸化反応) がそれぞれ相応の期間継続しない限り、深刻な事態をまねく可能性は非常に低いということです。
もしそのような事象が起きた場合に最も危険なのは、SNF プールを取り囲む頑丈な格納構造 (原子炉を収納しているような格納容器) がないことです。SNF プールそのものは非常に頑丈な構造ですが、各プール上部の屋根はそれほど強固でないので、損傷した可能性があります。つまり、プール上部が解放状態になっていることを意味します。その場合でも、燃料が水につかっている限り環境に対する直接の危険はありませんが、もし火災が起きたりすると、核分裂物質が拡散する可能性があります。ただし、水位が燃料より高ければ、大規模な拡散事象の恐れは低くなります。
懸命の修復作業を見守りながら、今後の放射能汚染や電力不足などを心配している人はたくさんいます。それに関する情報はTVでたくさん報道されています。しかしTV画面にあらわれる技術者の説明は一般市民には大変わかりづらいです。どのくらい安全あるいは危険なのか・・・一般人が一番知りたい点が一向にはっきりしません。
残念ながら日本人より欧米人の科学者のほうが、素人にも分かり易く説明する能力に優れているようです。米国の MIT の物理学者である Dr Josef Oehmen は、MIT-NSE というサイトでこの原発事故に関する記事を毎日発表しています。非常に専門的な記述もありますが、一般人が知りたい情報もたくさん示されていますので、その中のいくつかを紹介したいと思います。
使用済み核燃料プール について: 2011/03/16付けの記事

使用済み核燃料 (SNF: Spent Nuclear Fuel) とは、原子炉で燃料として使用された後の燃料のことです。この燃料は、固形ペレットを燃料ロッドに納めた形状という点では、新しい燃料と見かけは同じです。SNF にはプルトニウムなどの放射性核分裂物質やアクチノイドが含まれているのが、唯一の違いです。そのため、遮蔽が必要になります。SNFは、停止した原子炉内の燃料ロッドと同様に崩壊熱を出します。それは、燃料内に堆積している核分裂物質やアクチノイドからの減衰放射能の大半が熱エネルギーに変わるからです。そのため、SNF も冷却する必要があります。ただし、発生する熱はわずかなので、原子炉を停止したばかり (12 時間以内) の燃料の場合ほど冷却の必要はありません。まとめると、SNF は、1)崩壊熱の低下とともに燃料を冷却できるようにするためと、2)放出される放射線を遮蔽するために、ある一定期間そのまま貯蔵されます。
そのため SNF は、水で満たされたプール、または空気を用いて燃料ロッドを冷却する大型キャスク(容器)に貯蔵されます。プールは原子炉の近くにある場合があります (BWR Mark-1型格納容器の場合は格納容器の上部階にあります)。このプールは非常に大きく、深さは12 メートル (構造によってはそれ以上) もあります。プールは、厚いコンクリート構造で、プール表面にはステンレス製の板が張られています。
SNF集合体はプール底部にあるラックに置かれます。したがって水面から SNF 集合体の最上部までほぼ 10 メートルの深さになります。中性子の連鎖反応発生を防止するために SNF 集合体は、ホウ素を含有するプレートで仕切られている場合があります。しかし、燃料に含まれるウラニウムは原子炉内で使い果たされてしまっているので、連鎖反応を維持するパワーは残っていません。したがって、中性子の連鎖反応が起きるおそれはさらに低くなります。貯蔵プール内には SNF を冷却するのに十分な水量があります。また、熱は、プールにある熱交換器によって取り除かれます。よってプールは、ほぼ一定の平均温度に保たれます。プールの水深のおかげで、SNF から放出される放射線は、プール周辺で作業員が作業しても安全なレベルにまで遮蔽されます。
貯蔵プールに漏洩が生じるか、または熱交換器が故障した場合、プールの水温は上昇します。そのような事態が続いた場合は、プールの水が沸騰し始めるおそれがあります。沸騰し続けると、プール水位が SNF 頂部より低下し、燃料ロッドが露出してしまいます。こうなると問題が生じることがあります。すなわち、空気による SNFからの熱の除去が十分に行われないために、ロッドが加熱し始めます。ロッドが相当に高温になると、ジルコニウム製の被覆管が蒸気や空気で酸化されて水素を発生し、それが発火することがあります。
このような事象により被覆管が損傷する可能性がありますが、その結果ヨウ素、セシウム、ストロンチウムといった放射性核分裂物質を放出することになります。注意していただきたいのですが、このような事象(冷却設備の故障、プール水の沸騰、露出した燃料ロッド棒の過熱、ジルコニウムの酸化反応) がそれぞれ相応の期間継続しない限り、深刻な事態をまねく可能性は非常に低いということです。
もしそのような事象が起きた場合に最も危険なのは、SNF プールを取り囲む頑丈な格納構造 (原子炉を収納しているような格納容器) がないことです。SNF プールそのものは非常に頑丈な構造ですが、各プール上部の屋根はそれほど強固でないので、損傷した可能性があります。つまり、プール上部が解放状態になっていることを意味します。その場合でも、燃料が水につかっている限り環境に対する直接の危険はありませんが、もし火災が起きたりすると、核分裂物質が拡散する可能性があります。ただし、水位が燃料より高ければ、大規模な拡散事象の恐れは低くなります。