WITH白蛇

憂生’s/白蛇 セカンドハウス

チサトの恋 ・・・8

2015年09月27日 | チサトの恋

エアーズロックのおおきなポスターを広げてる。

傍によって、編集長のうしろからのポスターを眺めた。

「夕日・・のエアーズロック・・にみえるだろう?」

うん?

「ところが、これは、朝日なんだな。
にび色をしてるから、夕日に錯覚する・・」

え?
あたしはまじまじとそのポスターを覗き込む。

「こんなシャッターチャンスはまずない。慎吾のすごいところはここだな。
奴の前では、奇跡がおきる」
あるいは、カメラマンの資質というものはこういうものかもしれない。
チャンスを掴み取る運だけでなく、チャンスを起こす。
何度寝ぼけ眼で朝日に浮かぶエアーズロックに挑んだことだろう。

「だけど、ポスターにはそんな説明一言もはいらない。
あるいは、夕日とまちがわれてしまうかもしれない」
その公算のほうがおおきいだろう。
「慎吾にとって、どう、眺められるか、どう受け取られるかなんて、どうでもいいことで、どこまで、自分が被写体にこだわっていくかしかでない」
「それが、写真がすべてを語る」
「お?いいことをいうな。極めたものだけが、天才と呼ばれる」
すでに天才の範疇に入った男はそれでも、まだ、なにかを極めようとしている。

いつまでも、エアーズロックを眺めていても仕方が無い。

午後から、ビストロのランチを撮影しにいくことになっていたから、

事前に、ランチをたべておこうと思った。

ビストロの店内のムードもつかんでおきたかったし、

やはり、客層をみておくのが、一番良い。

さりげない配慮があると、客層がかわる。

窓際の鉢植えにオリーブの実がなっているイタリアンレストランは

中年層の女性の嗜好をくすぐるのだろうか?

落ち着いたタイプの客層が多いようにみえた。

店のつくりによっても、物静かに食事をとるムードと

会話が食事に華をそえる団欒のムードがあったりする。

物静か過ぎれば、光の差し込ませ方で明るい和やかなムードを強調させることもできる。

まあ、どっちにしろ、下見がてらにいってこなきゃならない。

時計をちらりと見上げる。

11時過ぎ・・。

今から、いけば、丁度よいか。

「次・・いってきます」

編集長に声をかけたら、

「あそこはな、エスプレッソが巧い」

「・・・・・・」

料理は・・どうなんだろうと?不安になりもするが、

編集長も下見にいったことは間違いない。

「こっちから、取材させてもらう以上はな・・」

にかっと笑ったけど

編集長は「押しがない」と思ったら、載せない人だから、

大丈夫なのは、間違いが無い。

ビストロで、たどりついて、みれば、

店先からなかなかのつくり。

もったないかと想うくらいの庭をつくり、

テラス風にしあげている。

テラスに面した窓は大きく開放感がある。

すこし街路より奥まっているから、通り行く人たちとは、

世界の区切りがつけられていて、

アメリカハナミズキがテラスの脇に枝をのばして、妙に優しい。

ビストロの世界の門番のようでもある。



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