WITH白蛇

憂生’s/白蛇 セカンドハウス

チサトの恋 ・・・3

2015年09月27日 | チサトの恋

「チサト・・」
リビングに行ったあいつが呼ぶ。
「なによ」
「こっち来て、のまないか?」
は?あんた、まだ・・・・。
キチンのワインラックをながめる。
大丈夫、減ってない。
と、いうことは、また、取材旅行のお土産のウィスキーかなんか?

リビングにいくと、奴はリュックから、ウィスキー瓶をひっぱりだしてきていた。
お?
バルモア?

グラスをとりにいくと、早速、ストレートでいただく。
旨い物に弱いのはいいことかもしれない。

こいつの悪ふざけも、しっかり、水にながしてしまえる。

奴がまた、リュックの中をあさる。

だしてきたのが、ジャーキー。
自分のつまみもってるなら、ひとんちのものをあさる前にそっちをさきにくえ、と思いつつ、奴が袋の口をあけるのをおとなしく待ってるんだから
あたしもつくづく、犬の性分だと想う。
おあずけにおとなしく服従する犬のごとく、まちうける。

ジャーキーを齧りながら・・・ん?

なんだ、このジャーキー・・。

奴はまだ、リュックの中をあさっている。

「あ、今食ってるのがワニ。こっちが、カンガルーだな・・」

ん・・・。

目の前におかれたジャーキーの袋には、確かにカンガルーの絵がかいてある。

口をあけた袋では、ワニがちょんぎれていた。

はあ・・・。

「あんた、変わったものに目がないんだよね。忘れてた」
蝙蝠の木乃伊のブローチとか、渡された事があったっけ・・。
「あ?ああ・・。じゃなきゃ、チサトのとこにきやしないよ」
さらりといいのけたので、しばらく、気がつかなかった。

え?
変わったものに目がないから、チサトのところにくる・・。

つまり、私はげてもので、
こいつは、物好きか・・・。

ま、いいか・・・。そこそこにおいしいし・・。


ちびちび、飲みながら、今日のトリミングの話をする。

「まあな。チサトのいいたいことはわかるけどな・・。
どこに視点をおくかってのは、結局は記事によるからなあ・・」
「ん・・・」
「写真がメインなのか、記事がメインなのかって、とこの
配分もあるし、テーマにもよる・・」
「ん・・んん・・ん」
「商業カメラマンってのは、そこら辺の按分がわかった上で、自己主張するしかない。だから、俺だったら逆にもっと、女の子がいいアングルに入るまで待つ」
「う・・ん」
「女の子の服の色とか、連れてる犬とか、全体の配分をかんがえて、
テーマにそぐわなきゃあきらめて、別の方法を考える」
「別の方法って?」
「アンチテーゼだけどさ、太陽の恵みってのが、テーマだったら、
サングラスかけてる奴をうつしこむとかさ・・」
「あ?あはは・・・すごい発想だね」
「もちろん、主張しすぎないようにな・・」
「うん。うん。わかる・・」

こいつのすごさは、こういうところかもしれない。
主張しない主張ってことだ。

「だけどさ・・俺、最近、かんがえてるんだよな」
「は?あんたでも、考えることあるんだ」
せいぜい、おかえしにとおもったが、硬い口調できりかえされた。
「ああ。だから、まじめにきけよ」

ーは・・はいー
なぜだか、こいつは、まじめになると迫力がます。
近寄りがたいというか、
はりつめた男っぷりがでてきて、
とうてい、馬鹿いってる男と同じ人間に見えない。



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