every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

産地直送OTOを輸送 *追記あり

2010-03-16 | 音楽NEWS
昨日、奥田民生「ひとりカンタビレ」をWEBで観た。

詳細をナタリーで見た時から行きたい!と思っていたのだけれど、チケット発売日・開催日を忘れていた怠惰なオレ。

どのみちチケットは瞬殺だったらしいから、買えなかっただろうけど。
そしたら、当日になってツアー初日のDUO MUSIC EXCHANGEの模様がWEBで観れるという嬉しいニュースが。
Dommuneも観たかったけど、それを袖にして「ひとりカンタビレ」を観たのだ。




客前でレコーディングするという「ひとりカンタビレ」の試みを耳にしてまず想起したのは、大瀧詠一がかつて行ったヘッドフォン・コンサート。*1



奥田民生が総ての楽器を客前で演奏し、1曲レコーディングしていくというから、
ミックス・ダウンをお客さんに体験させるという趣旨(第二部)の大瀧詠一のモノとはちょっと意味合いが違うけど。

仕事から戻って慌てて観ると(DommuneとちがってiPhoneでは観られなかった)、既にベーシック・トラックは録り終えていた。

既に曲の骨格は出来ているぽく、作曲作業、アレンジ作業は既に終えているようだった。「料理番組みたく事前に用意したものがございますので(笑)」と言っていたし(キーボード・ソロの被せでは「億劫になってきた」とそれを使っていた)、DUO MUSIC EXCHANGEだけで総てを作ったわけではもちろんなくて、客前で本番テイクを録るといった方が正確だろう。

企画が企画だからなのか、それとも元々そうなのか奥田民生は悩むことなく飄々とレコーディングを進めているように見えた。
前述のとおり、メロディやアレンジは完成していたのでそこに至るまでは色々と悩みもがきながら作っていたのだろうけれど、演奏自体は明白なミスタッチがないかぎり、採用としていたように見えた。

バンドによる一発録音ならともかくひとりでの多重録音である。
ベースとドラムの絡みのグルーヴやギターのちょっとした響きなど、あえて追求しないといった風情だった。

今朝の「めざましTV」のインタビューで「本当は手直ししたい部分もあるんですけど、それをやると5時間くらい掛かっちゃうんで」と言っていたし、そこは割り切っているのだろう。

また、同インタビューで「ひとりカンタビレ」の動機を語っていた。
要するにレコーディングが億劫だから、客前でやろうということらしい。
ロッキンオン兵庫氏がBlogで書いていた憶測は当たっていたわけだ。*2

配信された動画はカット割りはもちろんマルチ・アングルで録られていた。
複数カメラが入っているということはDVD発売するんだろな。

作る過程を共有することで思い入れも生れてコピーではなくパッケージを買うようになるだろうし、CDが売れない時代にあってこの試みは(戦略として)上手すぎる!

まぁ、まつきあゆむや七尾旅人らがこのような試みはUstreamを用いてやっているのだけれど、奥田民生というキャリア20年以上(かつ未だ最前線)のミュージシャンがやるということに意味がある。

Ustreamを用いて作曲の過程自体を共有するというのも面白そうだなぁ(未見だがポリシックスがアルバム初回特典のDVDでやっていた)。

いまは音楽産業が変わり行っている真っ最中だ。
録音されたモノ(CDでもデジタル・ファイルでも)を売って儲けるというシステムが壊れかけている最中で、作る過程を商品化したこの試みは大変興味深く意義深いものだったと思う。

ライヴを主としない録音アーティストでも、レコーディング作業自体をショー化してお金を稼げるんだ。そのひとつの成功例(といっていいと思う)を示したというのはデカい。

蛇足:これがKi/oon Sony所属のアーティストだったというのも、日本の音楽産業に於いて意味を持つのかも・・・。

*1
詳細は以下のリンク先を参照ください。
http://blogs.yahoo.co.jp/tsus_h/55958754.html

*2
兵庫慎司の「ロック走馬灯」| OT、「ひとりカンタビーレ」の動機を参照。

追記

ナタリーのレポ読んだら、観始める前のリズムセクションから試行錯誤してたみたい。

さくさくっと進んでいたイメージなのは、奥田民生自ら「任せとけ!」というギターの録りだったことと、飄々とした本人の性格の所為だろーな。

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