every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

Monkeyパンチ

2010-05-22 | HIP HOP
軽いジャブだと思っていたら膝を付いてしまったような。
MONKEY SEQUENCE.19の打ち出すビートは派手ではないが確実に攻撃力が高い。



現時点でMONKEY SEQUENCE.19の名を知る人の殆どがそうであるように、僕も『マニフェスト』収録の「ライカライカ」のプロデュースではじめて知った。

誰もが認める傑作『マニフェスト』にあって僕のiTuneでの再生回数が際立って少ない曲が3曲あるんだけれど、その内一曲が「ライカライカ」だった。

「ライカライカ」はオーセンティックなサンプリング中心のトラックが多い中で、唯一なシンセサイザーの音色を中心とした打ち込みトラックだ。

ライムスター曰く「変体枠」のこの曲は「だから私は酒を呑む」や「ベッドゾーン」など過去曲でもあった変則的なビートにフリーキーなフロウが乗る曲だが、近年発達が著しい日本語ラップのフロウの中で"教科書的"と行ってもいい古典的なふたりのMCは正直(他の収録曲のラップの煌きがまぶしいだけに)輝いてはいなかった。


同アルバム収録「付和Ride On」でも顕著だが、ライムスターはテクノに対してセンスがない。
ヒップホップに対しては日本随一のセンスを誇るから、レゲエ、ダンス・クラシックス(から直接つながるようなハウス)へのセンスは並々ならぬモノがあるが、Goodmenから続くセルジオ・メンデスのバトゥカーダを何の工夫もなく、まんま使いしている様を聴かせられるとそう思わざるを得ない。



閑話休題。
MONKEY SEQUENCE.19は確かにFlying Lotusの流れを汲む、シーケンスのグリッドを無視した揺れたビートも繰り出す。
しかし、『Substantial 12 Monkeys』を聴くとそれだけではないということがよく分かる。
件の「ライカライカ」ではライムスターのフロウに引っ張られ、フリーキーな印象が強くなってしまったが(その理由は前述の通り)、むしろJ Dillaに捧げられたという「the love 4 U」のようなトラックの方が彼の志向するところではなかろうか。

Flying LotusもかつてはポストJ Dillaと言われた。

それはJ Dillaのフォロワーという意味ではなく、急逝後に現れたヒップホップ・ビートの開拓者という意味でもその呼び名は使われていたと思う。

そういった意味でMONKEY SEQUENCE.19もそうだ。

単に揺らいだビートだとか、音の鳴りとか表層的な部分だけではなく、発想・見据えている境地という意味でJ Dillaと同じ所に立っているのではないだろうか。

正直、詰めの甘さを感じる楽曲もある。

声ネタやスクラッチなど曲のフックとなる要素、あるいは展開の妙など"顔"となる部分が欲しい曲が何曲かある。
それらはまるでMCを迎えることを前提としたデモ(但しクオリティが高い)に感じてしまう。

そういった意味もこめて原石のようなアルバムだと思う。1500円という値段設定もそういった意味を踏まえているのではないだろうか。

これは発表された時期と時差のない内に、つまりいま聴くべきアルバムなのだ。


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