every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

月に囚われた男

2010-06-04 | 映画
『月に囚われた男』観た。
いい映画だった。




500万ドルの低予算を逆手に取り、最小限のセット、キャスティング。
それら総てが物語り上の必然を持っている。
はやくダンカン・ジョーンズの次回作が観たい。



アイザック・アシモフやロバート・ハインラインの短編のような深みのあるSFだ。
オーセンティックなといってもよいかもしれない(細かい科学公証)。

物語の種明かしは早々に訪れる。
だから「えっ!?、びっくり!!」というようなタイプの映画ではない。
鑑賞後に何かを残すタイプの映画だ。

とはいえまっさらな状態で観た方がよいにきまっているので、以下はネタバレOKな方のためだけに、文字色を変えて、記述します。


*ネタバレ注意*
まず、主演のサム・ロックウェルが良い。
同じサムという人間を何通りも演じ分けている。

最初に出てくるヒッピーくずれ風のロックンローラー、物語の大部分で活躍する寡黙で模型作りが趣味のサム、精悍で逞しいサム。

同じ人間が同じ環境に居たとしても、日常の暮らし方だけでこうも違う人間のようになっていくというのが興味深い。

自分の変わりなんていくらでもいる。
確かにそうなのかもしれない。

だが、同じ環境、同じ才能、同じ栄養を取っていても、ひとりひとり違うオリジナルで違う感情、違う感動、違う行動を取るんである。

助演のケヴィン・スペイシーもいい。
『2001年宇宙の旅』の名キャラクター"HAL"を彷彿させるガーティの愛嬌はどうだ。
工業用ロボット然としたデザインながら、モニターのピースまーくで喜怒哀楽を表し、時にはサムの方をポンポンと叩く。
そして真の意味で"サムを助ける"という使命に忠実だ。

それにしてもルナ産業は何故サムに真実を伝えることを許すようなプログラムをガーティに与えたのだろう。
ガーティはロボットなのでルールに忠実だが、「外出許可は出ておりませんが、チェックするだけでしたら良いです。」など融通が利くところもあり、どこか人間らしい。

作中では描かれていないが、ガーティもまたクローン技術を応用して作られているのではないだろうか。ICチップの替わりに脳を用いる的な。

ルナー産業はエネルギー資源のヘリウム3の掘削だけでなく、クローン産業も行なっていたのではないだろうか。
月面基地はその実証実験の場でもあったのではなかろうか。
健康状態は、心理状態はどう変化していくのか? だからサムが起きてからの記憶は総て記録されている。

そうでなければ、コストが見合わない(ガーティを何台か置いて年に何回かメンテナンスに訪れればそれで済む)。


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