every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

Dedicate to J Dilla

2010-02-10 | HIP HOP
先日の「00年代シングルベスト」の続きを……と思い、この10年間でリリースされたアルバムを振り返っていたのだが10枚選ぶのが難しい。

別にシングルもポンポンと選べたわけではないのだけれど、アルバムに関してはどうもしっくりこない。

自分の好みとこの10年間で発揮した影響という観点で選んだのだけれど、アルバムでそれをやろうとすると主観と客観の折り合いが悪くなるのだ。

Radiohead『Kid A』、Amy Winehouse 『Back to Black』、……。
どれもしっくりこない。

何度もリストを書き直す。
だが書き直す度に真っ先にあげるアルバムがある。

それがJ Dilla『Donuts』だ。

ポスト・Jディラというのがひとつのジャンルに成るほどまでに彼の鳴らしたビートはフレッシュだった。

My Top 20 J Dilla Beats


地を有機的に這うベース、風を切るような切れ味鮮やかなスネア、浮遊感にあふれ心地よいネタ使いの上モノ。

CommonのプロデュースやQuestlove、D'angeloらとのThe Soulquerians、Madlibとの煙たいコラボとヒップホップの深化を突き進んでいた矢先に届けられたのが『Donuts』だ。

『Donuts』を再生して鳴り出すサウンドはハイファイを嗜好しながらもヒップホップ特有の埃ぽさを失わず、フューチャリスティックでありながらもヴィンテージ感あふれたそれまでのサウンドは違う。

60年代後半~70年代前半のソウル、それもドーナッツ盤=シングルでリリースされるような勝負曲をザクッとループしたものだ。

そのループのされ方はオーソドックなものではなく、ドキっとするほど大胆であったりする。

「Outro」から始まり「Intro」で始まる構成もあいまって、時の流れが曲がってしまうようなある種のサイケデリックさすらある。

「Anti American Grafiti」で引用された"too much to do"という台詞を聴くたびに、彼の頭にはまだまだ無数のビートがなっていたであろう彼の無念さに切なくなる。


4回目の命日に。



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