every word is just a cliche

聴いた音とか観た映画についての雑文です。
全部決まりきった常套句。

しんぼる

2009-10-06 | 映画


松本人志作品第二段は完成度という観点で言えば低いのだと思う。
それでも、この映画はスクリーンで見るべき価値を持っている作品であると思う。

松本人志監督の作品の完成度を下げているのは主演のTVタレント=松本人志だ。

細かいニュアンスを伝えきれないから自ら主演したそうだが(勿論、自ら主演することによってお金が引っ張りやすいというのもあっただろうけれど)、そこを乗り越えてでも役者を使うべきだった。それも板尾や宮迫など身内ではない役者を。

スクリーンでみるとどうしてもテレビの臭いがしてくる。

具体的に言えば主人公の男は騒ぎすぎだ。
あの騒ぎ方はバラエティのそれであって、リアルには感じられない。

主人公はそれほど頭のよい男に見えないが、松本が演じることによって男のキャラクターが浮かび上がってこない。
どこまでいっても"松本人志演じる"という前置きが消えないからだ。

加えて幾らでもサブカル分析的な深読みが出来そうな内容ではあるが、これもバラエティー・タレント"松本人志"の親しみやすさがそれを拒絶する。

むしろテレビタレントとしてはその圧倒的存在感は何よりも換え難いモノではあるが、このタレントを使いこなすには残念ながら監督は全然場数が足りない。


白い部屋での天使が浮かび上がってくるシーンなどのブッ飛び方は尋常でない。
69年のカルフォルニアでは『2001年宇宙の旅』をトリップしながら見るのが流行ったそうだが、『しんぼる』も同様な働きをするのではないだろうか。

そういうサブカル的嗜好に決して歩み寄らないのが松本人志の矜持なのだろうが、そういう楽しみ方が好きな人間としては物足りなく感じてしまう。
そして全盛期の彼をカリスマに押し上げ、明らかに力を失った今でも見捨てられないのもそういう人間なのだ。

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