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憲法9条 戦争と平和

自分が生きている間に、戦争や紛争をなくしたい。理想郷ということではなくて・・・

教育基本法

2005-01-14 | 資料
教育基本法
昭和二十二年三月三十一日
法律第二十五号

朕は、枢密顧問の諮詢を経て、帝国議会の協賛を経た教育基本法を裁可し、ここにこれを公布せしめる。

教育基本法
われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。
われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。
ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。

第一条(教育の目的) 教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。


第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。


第三条(教育の機会均等) すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであつて、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によつて、教育上差別されない。

国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によつて修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。


第四条(義務教育) 国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。

国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。


第五条(男女共学) 男女は、互に敬重し、協力し合わなければならないものであつて、教育上男女の共学は、認められなければならない。


第六条(学校教育) 法律に定める学校は、公の性質をもつものであつて、国又は地方公共団体の外、法律に定める法人のみが、これを設置することができる。

法律に定める学校の教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。


第七条(社会教育) 家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励されなければならない。

国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によつて教育の目的の実現に努めなければならない。


第八条(政治教育) 良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。

法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。


第九条(宗教教育) 宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。

国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。


第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。

教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。


第十一条(補則) この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。


附則
この法律は、公布の日から、これを施行する。

教育基本法改正案原案の要旨

2005-01-13 | 資料
 第1条(教育の目的)教育は、人格の完成を目指し、心身共に健康な国民の育成を目的とする。

 第2条(教育の目標)教育は以下を目標として行われる。▽真理の探究、豊かな情操と道徳心のかん養、健全な身体の育成▽一人一人の能力の伸長、創造性、自主性と自律性のかん養▽正義と責任、自他・男女の敬愛と協力、公共の精神を重視し、主体的に社会の形成に参画する態度のかん養▽勤労を重んじる▽生命を尊び、自然に親しみ、環境を保全し、良き習慣を身につける▽伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度のかん養。

 第3条(教育の機会均等)国民は、能力に応じた教育を受ける機会を与えられ、人種、信条、性別等によって差別されない。

 第4条(生涯学習社会への寄与)教育は、学問の自由を尊重し、生涯学習社会の実現を期す。

 第5条(家庭・学校・地域の連携協力)教育は、家庭、学校、地域等の連携協力のもとに行われる。

 第6条(家庭教育)家庭は子育てに第一義的な責任を有するものであり、親は子の健全な育成に努める。国・地方公共団体は家庭教育の支援に努める。

 第7条(幼児教育)幼児教育の重要性にかんがみ、国・地方公共団体はその振興に努める。

 第八条(学校教育)学校は、国・地方公共団体及び法律に定める法人が設置できる。規律を守り、真摯(しんし)に学習する態度を重視する。

 第9条(義務教育)国民は子に、別に法律に定める期間、教育を受けさせる義務を負う。国公立の義務教育諸学校の授業料は無償とする。

 第10条(大学教育)大学は高等教育・学術研究の中心として、教養の修得、専門の学芸の教授研究、専門的職業に必要な学識と能力を培うよう努める。

 第11条(私立学校教育の振興)私立学校は、建学の精神に基づいて教育を行い、国・地方公共団体はその振興に努める。

 第12条(教員)教員は、自己の崇高な使命を自覚し、研究と修養に励む。教員の身分は尊重され、待遇の適正と養成・研修の充実が図られる。

 第13条(社会教育)国・地方公共団体は、学習機会の提供等により振興に努める。

 第14条(政治教育)政治に関する知識など良識ある公民としての教養は、教育上尊重される。学校は、党派的政治教育、政治的活動をしてはならない。

 第15条(宗教教育)宗教に関する寛容の態度と一般的な教養ならびに宗教の社会生活における地位は、教育上尊重される。国公立の学校は、特定の宗教のための宗教教育、宗教的活動をしてはならない。

 第16条(教育行政)国は、教育の機会均等と水準の維持向上のための施策の策定と、実施の責務を有する。地方公共団体は、適当な機関を組織し、区域内の教育に関する施策の策定と実施の責務を有する。

 第17条(教育振興基本計画)政府は、教育の振興に関する基本的計画を定める。

 第18条(補則)この法律に掲げる諸事項を実施するため、適当な法令が制定される。

憲法改正プロジェクトチーム「論点整理」

2004-11-30 | 資料
 総論

一 新憲法制定に当たっての基本的考え方

 本プロジェクトチームの審議・検討を通じて浮かび上がった新憲法制定に当たっての基本的な考え方は、おおよそ次のとおりである。この中には、われわれの議論の共通基盤である、先の総選挙における政権公約の内容も含まれている。

《新憲法が目指すべき国家像に関して》
○  新憲法が目指すべき国家像とは、国民誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される「品格ある国家」である。新憲法では、基本的に国というものはどういうものであるかをしっかり書き、国と国民の関係をはっきりさせるべきである。そうすることによって、国民の中に自然と「愛国心」が芽生えてくるものと考える。
○  諸外国の憲法の規定例を参考にして、わが国が目指すべき社会がどういうものであるか(例えば「公正で活力ある経済活動が行われる社会」など)、その大綱について憲法に明示すべきである。

《21世紀にふさわしい憲法のあり方に関して》
○  新憲法は、21世紀の新しい日本にふさわしいものであるとともに、科学技術の進歩、少子高齢化の進展等新たに直面することとなった課題に的確に対応するものでなければならない。同時に、人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える「器」であることを踏まえ、家族や共同体が、「公共」の基本をなすものとして、新憲法において重要な位置を占めなければならない。

《わが国の憲法として守るべき価値に関して》
○  新憲法は、国民主権・平和主義・基本的人権の尊重という三原則など現憲法の良いところ、すなわち人類普遍の価値を発展させつつ、現憲法の制定時、連合国最高司令官総司令部の占領下において置き去りにされた歴史、伝統、文化に根ざしたわが国固有の価値(すなわち「国柄」)や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識に基づいたものでなければならない。同時に、日本国、日本人のアイデンティティを憲法の中に見いだすことができるものでなければならない。

二 主要分野における重要方針

 一に掲げた基本的な考え方をもとに、安全保障など主要分野においてはさらに突っ込んだ討議がなされた。それらの討議全体を通じて、われわれが共有すると思われる新憲法草案の起草に当たっての重要方針は、おおよそ次のとおりである。

《安全保障の分野に関して》
○  新憲法には、国際情勢の冷徹な分析に基づき、わが国の独立と安全をどのように確保するかという明確なビジョンがなければならない。同時に、新憲法は、わが国が、自由と民主主義という価値を同じくする諸国家と協働して、国際平和に積極的能動的に貢献する国家であることを内外に宣言するようなものでなければならない。
 さらに、このような国際平和への貢献を行う際には、他者の生命・尊厳を尊重し、公正な社会の形成に貢献するという「公共」の基本的考え方を国際関係にも広げ、憲法においてどこまで規定すべきかを議論する必要があると考える。

《基本的人権の分野に関して》
○  新しい時代に対応する新しい権利をしっかりと書き込むべきである。同時に、権利・自由と表裏一体をなす義務・責任や国の責務についても、共生社会の実現に向けての公と私の役割分担という観点から、新憲法にしっかりと位置づけるべきである。

《統治機構の分野に関して》
○  新憲法には、迅速かつ的確な政策決定及び合理的かつ機動的な政策執行を可能とする統治システムが組み込まれたものでなければならない。また、憲法裁判所制度など憲法の実効性を担保する制度や道州制など国のかたちをなす大きな要素についてこの際明確に位置づけるべきである。

三 今後の議論の方向性

 憲法を論ずるに当たり、まず、国家とは何であるかについて、わが党の考え方を明らかにし、国民各層の理解を深めていく必要があると思われる。
 次に、憲法の意義を明らかにすべきである。すなわち、これまでは、ともすれば、憲法とは「国家権力を制限するために国民が突きつけた規範である」ということのみを強調する論調が目立っていたように思われるが、今後、憲法改正を進めるに当たっては、憲法とは、そのような権力制限規範にとどまるものではなく、「国民の利益ひいては国益を守り、増進させるために公私の役割分担を定め、国家と国民とが協力し合いながら共生社会をつくることを定めたルール」としての側面も持つものであることをアピールしていくことが重要である。
 さらに、このような憲法の法的な側面ばかりではなく、憲法という国の基本法が国民の行為規範として機能し、国民の精神(ものの考え方)に与える影響についても考慮に入れながら、議論を続けていく必要があると考える。


II 各論

一 前文

1 共通認識
 現行憲法の前文については、これを全面的に書き換えるものとすることで、異論はなかった。

2 前文に盛り込むべき内容
 前文に盛り込むべき内容に関する意見は、次のとおりである。
○  現行憲法の基本原則である「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」は、今後ともこれを堅持していくべきである。ただし、「基本的人権の尊重」については行き過ぎた利己主義的風潮を戒める必要がある。また、「平和主義」についても、現行憲法9条の見直しを反映させ「一国平和主義」の誤りを正すとともに、国を挙げて国際平和を推し進める姿勢を強調するなど修正が必要である。
○  国民誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される「品格ある国家」を目指すことを盛り込むべきである。
○  わが国の歴史、伝統、文化等を踏まえた「国柄」を盛り込むべきである。
○  環境権や循環型社会の理念(持続可能な社会づくりの観点)などを盛り込むべきである。
○  社会を構成する重要な単位である家族に関する文言を盛り込むべきである。
○  利己主義を排し、「社会連帯、共助」の観点を盛り込むべきである。
○  国を守り、発展させ、次世代に受け継ぐ、という意味での「継続性」の観点を盛り込むべきである。

3 前文の文章表現
 前文の文章表現に関する意見は、次のとおりである。
○  翻訳調の現行の前文の表現を改め、前文の文章は、平易で分かりやすいものとし、模範的な日本語の表現を用いるべきである。
○  一つの文章が冗長にならないようにすべきである。

4 今後の議論の方向性
 前文に盛り込むべき内容は、憲法の各条章の内容と深く関わるものであり、今後の議論の流れによっては大きく異なることも予想され、現時点でその内容を固める必要はないものと考える。一方、文章表現については、わが国の憲法である以上わが国の言葉で書かれるべきことは当然であるとしても、文体や語彙の選択は、盛り込むべき内容のいかんによって左右されるものであり、ある程度内容が固まってから議論の対象とすべきである。
 したがって、前文の議論は、各条文の議論が進んでから再び行うこととした。

二 天皇

1 共通認識
 象徴天皇制については、今後ともこれを維持すべきものであることについては、異論がなかった。

2 改正意見
 天皇の国事行為その他の公的行為に関する改正意見は、次のとおりである。
○  天皇の国事行為について定める第7条の規定のうち第4号の「国会議員の総選挙を公示すること」は誤りであり、これは「衆議院議員の総選挙及び参議院議員の通常選挙の公示をすること」とすべきである。
○  天皇の祭祀等の行為を「公的行為」と位置づける明文の規定を置くべきである。

3 今後の議論の方向性
 連綿と続く長い歴史を有するわが国において、天皇はわが国の文化・伝統と密接不可分な存在となっているが、現憲法の規定は、そうした点を見過ごし、結果的にわが国の「国柄」を十分に規定していないのではないか、また、天皇の地位の本来的な根拠はそのような「国柄」にあることを明文規定をもって確認すべきかどうか、天皇を元首として明記すべきかなど、様々な観点から、現憲法を見直す必要があると思われる。
 なお、女帝問題については、皇室典範の改正という観点から今後検討すべき論点であるとの意見が多数を占めた。

三 安全保障

1 共通認識
 次の点については、大多数の同意が得られた。
○  自衛のための戦力の保持を明記すること。

2 安全保障に関し盛り込むべき内容
 安全保障について盛り込むべき内容は、次のとおりである。
○  個別的・集団的自衛権の行使に関する規定を盛り込むべきである。
○  内閣総理大臣の最高指揮権及びシビリアン・コントロ-ルの原則に関する規定を盛り込むべきである。
○  非常事態全般(有事、治安的緊急事態(テロ、大規模暴動など)、自然災害)に関する規定を盛り込むべきである。
○  「人間の安全保障」(積極的な「平和的生存権」)の概念など、国際平和の構築に関する基本的事項を盛り込むべきである。
○  国際協力(国際貢献)に関する規定を盛り込むべきである。
○  集団的安全保障、地域的安全保障に関する規定を盛り込むべきである。
○  食糧安全保障、エネルギー安全保障などに関する規定を盛り込むべきである。

3 今後の議論の方向性
 21世紀において、わが国は、国力に見合った防衛力を保有し、平和への貢献を行う国家となるべきである。こうした観点から、今後は、個別的及び集団的自衛権の行使のルール、集団的安全保障・地域的安全保障における軍事的制裁措置への参加のルール並びに国際的平和維持協力活動への参加のルールはいかにあるべきかを議論しながら、憲法においてどこまで規定すべきかを考える必要がある。
 なお、非常事態については、国民の生命、身体及び財産を危機から救うことが国家の責務であること、その責務を果たすために非常時においてこそ国家権力の円滑な行使が必要であるということを前提に、憲法に明文の規定を設ける方向で議論する必要があると考える。

四 国民の権利及び義務

1 共通認識
 時代の変化に対応して新たな権利・新たな義務を規定するとともに、国民の健全な常識感覚から乖離した規定を見直すべきであるということについて、異論はなかった。

2 新しい権利
 いわゆる「新しい権利」に関する意見は、次のとおりである。
○  「環境権」とともに「環境保全義務」に関する規定を設けるべきである。
○  IT社会の進展に対応した「情報開示請求権」や「プライバシー権」に関する規定を設けるべきである。
○  科学技術の進歩に対応した「生命倫理に関する規定」を設けるべきである。
○  知的財産権の保護に関する規定を設けるべきである。
○  現憲法は被告人(加害者)の人権に偏しており、犯罪被害者の権利に関する規定を設けるべきである。

3 公共の責務(義務)
 公共の責務(義務)に関する意見は、次のとおりである。
○  社会連帯・共助の観点からの「公共的な責務」に関する規定を設けるべきである。
○  家族を扶助する義務を設けるべきである。また、国家の責務として家族を保護する規定を設けるべきである。
○  国の防衛及び非常事態における国民の協力義務の規定を設けるべきである。

4 見直すべき規定
 上記の2・3とも一部重複するが、現憲法の運用の実態に照らし、権利に関する規定を見直すべきとする意見は、次のとおりである。
○  政教分離規定(現憲法20条3項)を、わが国の歴史と伝統を踏まえたものにすべきである。
○  「公共の福祉」(現憲法12条、13条、22条、29条)を「公共の利益」あるいは「公益」とすべきである。
○  婚姻・家族における両性平等の規定(現憲法24条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである。
○  社会権規定(現憲法25条)において、社会連帯、共助の観点から社会保障制度を支える義務・責務のような規定を置くべきである。

5 今後の議論の方向性
 この分野における本プロジェクトチーム内の議論の根底にある考え方は、近代憲法が立脚する「個人主義」が戦後のわが国においては正確に理解されず、「利己主義」に変質させられた結果、家族や共同体の破壊につながってしまったのではないか、ということへの懸念である。権利が義務を伴い、自由が責任を伴うことは自明の理であり、われわれとしては、家族・共同体における責務を明確にする方向で、新憲法における規定ぶりを考えていくべきではないか。同時に、科学技術の進歩、少子化・高齢化の進展等の新たな状況に対応した、「新しい人権」についても、積極的に取り込んでいく必要があろう。
  なお、美しい国づくりの観点から、景観を含めた環境保全と私権との調整についても今後の検討課題とする必要があると思われる。また、地方参政権(現憲法93条2項)について明確な規定を置くべきとの意見を踏まえ、今後さらに検討を続ける必要がある。

五 国会及び内閣

1 共通認識
次の点については、大多数の同意が得られた。
○  政治主導の政策決定システムをより徹底させるとともに、そのプロセスを大胆に合理化し、時代の変化に即応してスピーディに政治判断を実行に移せるシステムとすべきである。
○  現在の二院制については、両院の権限や選挙制度が似かよったものとなっている現状をそのまま維持すべきではなく、何らかの改編が必要である。

2 改正意見
 国会及び内閣の分野で、憲法改正に関する意見は、次のとおりである。
○  議事の定足数(現憲法56条1項)は、削除すべきである。
○  総理大臣以下の国務大臣の国会への出席義務を緩和し、副大臣などの代理出席でよいとするなど憲法の規定を見直すべきである。
○  法律案の提案権は、国会議員(国務大臣たる国会議員を含む)に限定する方向で憲法の規定を見直すべきである。
○  閣議における内閣総理大臣のリーダーシップ、衆議院の解散権の行使主体及び行使要件、国会の予算修正権など、現憲法では必ずしも明確でない事項について明確な規定を置くべきである。

3 今後の議論の方向性
 議会制民主主義を採る以上、政策決定に当たり議会の多数の同意を得なければならないことは当然であるが、現在の政策決定システムの問題(運用も含めて)は、各省庁と内閣・政党との関係、一律の国務大臣の出席義務、会議の定足数など、最終的に議会の同意を得るに至るまでの間にあまりにも多くの時間を要するシステムになっているのではないかという点である。
 要は、どのような政策決定システムであれば国民の権利利益を適時適切に伸張・擁護することができるのかが重要なのであって、今後も、この観点から議論を続ける必要があろう。なお、首相公選制、国会議員の任期や会期制(現憲法52条、53条)、国務大臣全員を国会議員から選出すべきか、副大臣の憲法上の位置づけなどについても、今後検討する必要があると思われる。

六 司 法

1 共通認識
 次の点については、異論がなかった。
○  最高裁判所による違憲立法審査権の行使の現状には、極めて不満がある。
○  民主的統制を確保しつつも政治部門が行う政策決定・執行に対する第三者的な立場から憲法判断をする仕組み(憲法裁判所制度、あるいは最高裁判所の改組など)について、検討すべきである。
○  裁判官の身分保障のあり方について見直すべきである。
○  民事・刑事を問わず裁判の迅速化を図るべきである。

2 改正意見
 現憲法第6章(司法)に関する改正意見は、次のとおりである。
○  最高裁判所裁判官の国民審査の制度(現憲法79条)は廃止し、廃止後の適格性審査の制度についてはさらに検討を行うべきである。
○  最高裁判所裁判官の任期は10年とし、再任を行わないものとすべきである。
○  下級裁判所の裁判官の任期は、3年を下回ってはならず、10年を超えてはならないとすべきである(再任は妨げないものとする)。
○  一定の場合には裁判官の報酬(現憲法79条・80条)を減額することができる旨の明文規定を置くべきである。

3 今後の議論の方向性
 司法のあり方については、一部に、常識に反する裁判をしているとの国民の批判を招いていることを踏まえ、司法制度改革を推進しつつ、今後とも検討を進める必要がある。同時に、司法への国民参加という観点から憲法に何らかの規定を置くべきかどうかについても、今後の検討課題とすべきである。
 また、弁護士会に入会しなければ弁護士になれないという現行弁護士法のあり方についても議論となったが、引き続き検討することとしたい。なお、憲法裁判所、行政裁判所、軍事裁判所等については、外国におけるその権能・組織などを調査しながら、引き続き議論を継続することとしたい。

七 財 政

1 共通認識
 財政民主主義を、より実質の伴うものとする方向で見直すべきであるということについては、異論がなかった。

2 改正意見
 現憲法第7章(財政)に関する改正意見は、次のとおりである。
○  現憲法89条を書き直し、私学助成に関する明文規定を置くべきである。
○  決算に関する国会の権能に関する明文規定を置くべきである。

3 今後の議論の方向性
 上記の2のほか、会計年度を1年とすることを前提とした憲法・財政法の定める財政システムを検証し、健全な財政規律に関する明文規定を置くべきか否か、複数年度予算の可能性などについても、今後、検討する必要があろう。また、後年度負担を伴う財政支出については、次代への財政負担の責任を明確にするため、その発生原因、数額などに関する情報開示の必要性についても議論することとしたい。

八 地方自治

1 共通認識
 地方分権をより一層推進する必要があるという点については、異論がなかった。また、地方分権の基本的な考え方や理念を憲法に書き込む必要があることについても、大多数の同意が得られた。

2 改正意見
現憲法第8章(地方自治)に関する改正意見は、次のとおりである。
○  いわゆる「道州制」を含めた新しい地方自治のあり方について、(1)法律の範囲内での課税自主権の付与等自主財源の確保、(2)自己決定権と自己責任の原則、(3)補完性の原則など、その基本的事項を明示すべきである。その際には、住民による自発的な自治、必要最小限の行政サービスの保障などの観点に留意すべきである。

3 今後の議論の方向性
 近年の通信交通のスピード化に伴い、住民の生活圏は広域化する傾向にある。従来の都道府県は以前ならば十分「広域」自治体であったが、今では、大きな市で県に匹敵する区域を有するものも出てくるようになっている。一方で、農山漁村の中には過疎化で消滅の危機にある地域がいくつもあり、その地域に根ざす伝統や文化が絶えてしまうおそれが出てきている。こうした問題に対して、現憲法は何の解決策も用意していないのではないだろうか。
 こういった観点から、今後とも、「道州制」(その前提としての「市町村合併」や中央政府と道州政府による統治権限の適切な分配のあり方等)や、地方財政における受益と負担の関係の適正化などに関する議論を進めていく必要があると考える。また、住民投票の濫用防止規定についても更に検討を進めることとする。また、昭和26年以降「一の地方公共団体のみに適用される特別法」の制定はなく、現行95条は削除する方向で検討する。

九 改 正

 現憲法の改正要件については、概ね、次の2点について議論がなされた。

(1) 現憲法の改正要件は、比較憲法的に見てもかなり厳格であり、これが、時代の趨勢にあった憲法改正を妨げる一因になっていると思われる。したがって、例えば、憲法改正の発議の要件である「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」を「各議院の総議員の過半数」とし、あるいは各議院において総議員の3分の2以上の賛成が得られた場合には、国民投票を要しないものとする等の緩和策を講ずる(そのような憲法改正を行う)べきではないか。
(2) 憲法改正の国民投票について、現憲法は「特別の国民投票」と「国会の定める選挙の際行われる投票(国政選挙と同時に行うこと)」の2種を規定しているが、このような特別の選択肢を明示する必要はないのではないか。

 以上の諸点については、引き続き、議論を継続する必要があると考える。

十 最高法規及び補則


 現憲法第10章(最高法規)については、国民の憲法尊重擁護義務を含めることとしつつ、その各条文の内容に応じて、「前文」あるいは「国民の権利及び義務」にその趣旨を盛り込むものとし、章としては削除するべきであるとの意見があった。この点については、引き続き、議論を継続する必要があると考える。
  また、現憲法第11章(補則)は、すでにその役目を終えた経過措置に関する規定であり、これを削除することについて異論はなかった。

十一 その他

 以上のほか、次のような事項について、憲法に盛り込むべきであるとの意見があった。
(1)  領土、大陸棚など
 わが国の主権が及ぶ地理的範囲を明確に憲法で規定すべきだとする意見があった。
(2)  国旗及び国歌
 諸外国の憲法の規定例を参考にして、国旗及び国歌に関する規定を憲法に置くべきだとする意見があった。

結  語


 わが党のたゆまぬ努力により、憲法改正のための国民投票は、もはや絵空事ではなくなった。憲法改正の手続法が整備され、国民投票が実現されれば、わが国憲政史上初めてのことになる。すなわち、日本国民は初めて主権者として真に憲法を制定する行為を行うことになるのである。
 今回の新憲法草案の策定作業がこのような重大な意義を有することにかんがみ、本プロジェクトチームは、意図的に議論を方向づけたり、性急に結論をまとめるようなことをすることなく、毎回の会議において、参加者から文字どおり自由闊達な意見交換に意を用いた。その結果、憲法のあらゆる分野にわたってまさに多種多様な意見が提出された。
 その多様な意見の中で、発言者が異口同音に強調していたのは、「一国の基本法である憲法が正反対の意味に解釈されることがあってはならない。新憲法は、その解釈に疑義を生じさせるようなものであってはならない。」ということであった。今後の作業を行う上で、肝に銘ずべきこととして、あえてここに明記させていただく次第である。
 本プロジェクトチームの会議で出された一つ一つの貴重な意見については、丹念にこれを書き留めるとともに自民党インターネット・ホームページにより国民に公開したが、このことを通じて、わが党が先の総選挙における政権公約を着々と実行に移している姿を、国民各層に伝えることができたものと考える。
 今後は、この「論点整理」を基礎として、参院通常選挙後、党の地方組織を含めた全党的な議論を深めるとともに、憲法改正に関するわが党の取組についてなお一層の国民の理解を求め、新憲法草案が大多数の国民の共感を得ることができるものとなるよう、引き続き努力を傾注してまいりたい。

改憲草案大綱の素案要旨/自民党憲法調査会

2004-11-26 | 資料
 【はじめに】国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本的原理は今後も維持。

 【第一章】天皇を象徴とする自由で民主的な国▽戦争放棄思想堅持、積極的に国際平和実現に寄与▽国旗は日の丸、国歌は君が代。

 【第二章】天皇は日本国の元首▽皇位は男女問わず継承。

 【第三章】(基本的権利・自由)名誉権、プライバシー権及び肖像権を保障▽知る権利を保有。

 (国民の責務)国民に国家の独立と安全を守る責務。国家緊急事態には国および地方自治体などの実施する措置に協力▽徴兵制は認めず。

 (社会目的としての権利・責務)教育はわが国の歴史、伝統、文化を尊重、郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を涵養(かんよう)▽良好な環境の下に生活する権利、保護する責務▽生殖医学、遺伝子技術の乱用から保護。

 【第四章】(平和主義)国際平和への寄与▽侵略戦争の放棄▽自衛、国際貢献のために武力行使を行う場合でも、武力行使は究極、最終の手段。必要かつ最小限の範囲を自覚▽武力行使は事前の国会承認必要▽非核3原則を明示。

 【第五章】(国会)国会は唯一の立法機関。司法、憲法両裁判所を統制▽両院制は維持▽国政調査権の充実▽国会の行政監視活動を補佐する議員オンブズマン設置▽衆院の優越条項強化。

 (首相、行政)首相のリーダーシップ明確化。

 (国会と内閣)首相は衆院議員の中から衆院の議決で指名▽閣僚はすべて衆院議員。そうでない場合は衆院の承認か次期衆院選立候補の宣言が必要。

 (司法裁判所)専門裁判所設置を明文化▽裁判員制度を認める▽憲法判断は憲法裁判所に移送。

 (憲法裁判所)法令の憲法適合性を決定する1審の裁判所。

 【第六章】(財政)1年を超えた期間を一会計年度として予算編成できる。

 【第七章】(地方自治)地方自治体は道州および市町村、自治区(仮称)。

 【第八章】(国家緊急事態、自衛軍)首相は(1)防衛緊急事態(2)治安緊急事態(3)災害緊急事態-の発生を認めた場合、布告▽国家緊急事態が布告された場合、基本的な権利・自由は制限できる▽国会緊急事態において国会の措置を待つ暇がないとき首相は法律で定める事項に関し政令を制定できる。その措置は国会の事後承認を得なければならない▽個別的、集団的自衛権行使のための必要最小限の戦力として自衛軍設置▽自衛軍の任務は、防衛、治安、災害の緊急事態での秩序維持、国際貢献のための活動(武力行使を含む)。

 【第九章】(改正)各議院の総員の過半数の賛成で改正案可決、国民投票の過半数で承認か総議員の3分の2以上で改正案可決。