わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

相続登記で必要になる書類

2022-02-15 00:00:00 | 司法書士
相続登記(相続による不動産の名義変更)に必要な、一般的な書類は次のとおりです。
※事案によりこれ以外にも必要な場合があります。

用語:被相続人→亡くなった人


①被相続人の戸籍
→死亡時の最後の戸籍だけではなく、出生から死亡までのすべての戸籍が必要です。
通常、死亡時の戸籍からさかのぼって出生時の戸籍まで取得することから「さかのぼり戸籍」などということもあります。

被相続人の死亡時の戸籍は、亡くなった際の本籍地の役所で取れます。
本籍地がわからない場合は、被相続人の住民票を本籍地付きで取得すると分かります。
戸籍を取得する際に係の人に「相続登記で使います。出生時までお願いします」というと、案内してくれると思います。
なお、本籍地を変えている(転籍している)場合は、各役所に申請する必要があります。
遠方の場合(近くでも)、直接行くのは難しい場合は、郵送での対応も可能です。

「●●市(本籍地のある役所) 戸籍 郵送」などと検索すると郵送方法が調べられます。

②相続人全員の戸籍
③不動産を相続する人の住民票
④遺産分割協議書(法定相続ではない場合)
⑤相続人全員の印鑑証明書(遺産分割をする場合)

そのほか、
⑥対象不動産の登記簿謄本
⑦対象不動産の固定資産評価証明書

⑥⑦は登記申請書を作成する際にも使用します。

相続登記の手続きとしては、上記必要書類を集めたら
1.遺産分割協議書を作成
2.遺産分割協議書に相続人全員が署名押印(実印)
3.登記申請書を作成
4.必要書類とともに登記所に申請
となります。

成年後見の申し立てに必要な書類②

2022-02-14 00:00:00 | 司法書士
成年後見の申し立てに必要な書類は大きく分けると次の4つでした。

①本人に関しての事情・財産等の概要がわかる書類
②本人についての公的な書類
③本人の財産についての裏付けとなる書類
④後見人候補者がいる場合はその人に関する公的な書類

今回は②からです。

②本人についての公的な書類

1.戸籍謄本
2.住民票

これらは本人の戸籍や住民票がある市区町村役場で取得できます。
戸籍謄本のことを全部事項証明書と呼ぶこともありますが、同じです。
なお、謄本と似たような言葉で抄本があります。
抄本とは、謄本の一部分の証明書という意味です。
抄本のことを一部事項証明書ということもあります。
戸籍謄本(全部事項証明書)を取得するようにしてください。

3.登記されていないことの証明書

この書類は法務局で取得できます。
あまり聞きなれない書類ですが、すでに後見などの登記がされていないことを証明書です。
すでに後見などの登記がされているのに、重ねて手続きをしないようにするためです。
証明申請書の中に証明事項をチェックする部分がありますが、
「成年被後見人,被保佐人,被補助人,任意後見契約の本人とする記録がない」にチェックをしてください。

なお、この証明書は本人以外の親族も取得できますが、取得時に親族の証明として
戸籍謄本等の提出を求められますので、しっかり必要書類をチェックしてから
法務局の窓口へ行くようにしてください。

4.手帳など
障害者手帳などがあればそのコピーを添付します。

③本人の財産の裏付けとなる資料
1.収入についての資料
・源泉徴収票や確定申告書のコピーなど
・年金の通知書など
2.支出についての資料
・施設費や家賃がわかるもの
・健康保険料・介護保険料がわかるもの
・固定資産税の納付書
・医療費の領収書 など
3.通帳等
4.有価証券に関する資料
5.不動産の謄本
6.保険の証書7.負債の関するもの
など

そのほか申し立てには手数料として収入印紙を貼り、
郵便切手を納付する必要があります。
金額は、類型によって異なりますでの、詳細は裁判所のホームページなどを
確認するようにしてください。


なお、必要書類や申請書などのひな型は比較的頻繁に変更されています。
必ず申し立て前に家庭裁判所のホームページを確認するようにしてください。

成年後見の申し立てに必要な書類

2022-02-13 00:00:00 | 司法書士
成年後見制度を利用する際は、家庭裁判所へ申し立てる必要があります。
申し立ての際は、申立書のほかにいろいろな書類が必要になります。
成年後見制度では、後見・保佐・補助の3つの類型がありますが、
ここでは申立件数の多い後見について取り上げたいとおもいます。
(とは言っても保佐・補助も共通する書類も多いです。)

たくさんの書類を準備しなければなりませんが、カテゴリーを分けると
次の3~4つになります。

なお、以下「本人」という場合は、後見人をつけてもらいたい人=認知症等の人を指しています。

①本人に関しての事情・財産等の概要がわかる書類
②本人についての公的な書類
③本人の財産についての裏付けとなる書類
④後見人候補者がいる場合はその人に関する公的な書類

それぞれ見てみます。

①本人に関しての事情・財産等の概要がわかる書類
1.申立書
家庭裁判所のホームページにひな形があります。
なお、申立書(それ以外の添付書類を含む)の作成を専門家にお願いしたい場合
それができるのは弁護士か司法書士です。それ以外の方は作成することはできません。

2.申立事情説明書
3.診断書
診断書のひな形が用意されています。
これを主治医等に見せて記載してもらうことにより作成してもらいます。
医師であればよく、主治医や精神科医など特定の診療科の医師でなくても構わないとされています。

4.親族関係図
5.親族の意見書
親族とは本人の推定相続人とされています。
本人が親であれば、本人の配偶者と子です。
内容としては、後見手続に同意するか?などと言った内容です。
取得が困難な親族がいる場合は、その親族分の提出がなくとも申立ては可能です。

6.財産目録
7.収支予定表
6.7は、ひな形がありますので、そこに別に添付する裏付け書類と整合するように記載します。

8.本人情報シート
ひな形がありますので、本人の状態をよく知る親族やケアマネの方に記載してもらう書類です。
医師に診断書を作成してもらう際の資料等にします。
また、申し立ての際も添付資料のひとつになります。

9.候補者の事情説明書
候補者に作成してもらいます。

この①の書類は、自分で記載したり、医師やケアマネにお願いをしたりしなければ
ならない書類なので、一番大変かもしれません。

書類は家庭裁判所のホームページに掲載されています。
それをダウンロードして作成してください。
なお、書類の内容などは比較的頻繁に変わりますので、最新のものをご利用ください。

その他の書類は次回にご案内します。

意外!?遺言の必要性の高い人→自宅購入者

2022-02-12 00:00:00 | 司法書士
遺言とは自分が亡くなった後、財産をどのように分配してほしいかなどを書面に残しておく手続きです。
まれに「遺書(いしょ)」と混同される方もいますが、遺言(ゆいごん・いごん)は、法律で要件が
定められている書類です。
法律の要件に沿って遺言を残すことで、基本的に亡くなった後の財産をそのとおりに分配・承継することができます。

一方、遺言が無い場合は、相続人に承継され、相続人のうちの特定の人に承継させたいような場合は、
相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。

この相続人とは次の通りです。
例えば、父・母・子の家族で、父が亡くなった場合、相続人は母と子です。
また、夫・妻のみで子がいない家庭で、夫が亡くなった場合、夫の両親が健在であれば、相続人は妻と夫の両親です。
ちなみに、夫の両親が他界しており、夫に兄弟がいれば、相続人は妻と夫の兄弟です。

父・母・子の家族:父死亡→母・子
夫・妻の家庭:夫死亡→妻・夫の両親/妻・夫の兄弟

次に遺産分割協議を行う場合、その協議の参加者は原則として判断能力のある成人である必要があります。
成人である必要があるので、未成年は相続人であっても未成年だけで遺産分割協議に参加することはできません。
この場合、相続関係によりますが、多くは家庭裁判所の手続きによる特別代理人を選任する必要があります。
なお、成人であっても判断能力が不足している方、例えば認知症が進んでしまっている方などは、成年後見制度などを利用する必要があります。

以上を踏まえて次のような事例を考えてみます。

家族構成:父(30歳)・母(28歳)・子(3歳)
今般、父名義でマイホームを購入しました。
しかし、その1年後、父は不慮の事故で他界しました。
父の財産はわずかな現預金とマイホームです。
そこで父名義となっているマイホームを母名義にしたいと思っている。


さて、希望どおり母名義に変更することはできるでしょうか。
まずは遺言が無い場合を考えます。

父が亡くなり、相続人は母と子です。
相続人のうち特定の相続人に財産を承継させる場合は、遺産分割協議が必要となります。
今回の事例では、特定の相続人である母名義にしたいので、遺産分割協議が必要ですが
子は未成年です。
そのため、特別代理人を選任しなければなりません。
特別代理人は親族でもなることができます。
これは家庭裁判所の手続きですが、手間と時間はかかりますが選任されないということはありません。
問題は選任後です。

特別代理人は子のために選任されます。
子は、法定相続分を持っているので、特別代理人はその法定相続分を確保できるように活動します。
これは親族であっても同様です。

具体的には、基本的にマイホームの持分2分の1が子の名義になるような遺産分割協議内容でなければハンコは押せません。
親族であれば事情を察して母名義になるような遺産分割協議内容でも認めてしまうかもしれませんが、
特別代理人の職務は家庭裁判所が監督しています。
そのため、子の持分がゼロになるような遺産分割協議内容では家庭裁判所が認めてくれない可能性が極めて高いです。

つまり、相続人に未成年者がいる場合、特別代理人を選任することで遺産分割協議をすることができますが、
その他の相続人が考えているとおりの協議内容にできるとは限らないので、その点は注意する必要があります。

では、次に遺言があった場合です。
父は30歳と若かったのですが、マイホームの購入を機に公正証書にて遺言を作成していました。
内容としては、不動産を妻に相続させるといったものです。

公正証書遺言の詳細は省略しますが、公証人によって作成された遺言です。
この公正証書遺言があると相続人は妻と子ですが、妻単独の名義へ変更ができます。
相続人のうちに未成年の子がいても妻の単独名義が実現できます。
(なお、遺留分の問題がありますがここでは省略します。)

このように、遺言は高齢の方が作成すると思われがちですが、
場合によっては、若い方でも作成しておいた方がいい場面もあります。
マイホームを購入される方は若い世代が多いかと思います。
子が幼い場合などは、いわば保険として遺言をされておかれてもいいかもしれません。

成年後見制度が敬遠される理由

2022-02-11 00:00:00 | 司法書士
成年後見制度とは、高齢者の方が認知症などにより判断能力が不十分となった際に
家庭裁判所によって成年後見人などを選任するものです。
成年後見人によって高齢者を法的な面で支援し、保護しています。
これによって、認知症の方を悪質商法などの消費者被害から守ることができます。

このように、成年後見制度は認知症の高齢者などを守るためための制度として
とてもいいものだと思えるのですが、一方で、敬遠される場合があることもあるようです。

その理由はいくつか考えられますが、まず、財産の活用がほぼ認められないことがあるかと思います。

成年後見制度の利用を検討している方の中には、資産を多く持っている方もいます。
不動産や預貯金などですが、後見制度が開始されると、それらの財産は本人のためにのみ使用することになります。
本人のためといっても、リスクがあるような利用はできません。
例えば、株やその他の投資などの資産運用はできません。
また、将来の相続税の対策などとして、不動産を売却するなどの資産の組み換えなども難しくなります。
つまり、本人の生活の維持と直接関係のない行為については、認められにくくなります。
すこし細かな例ですが、これまで、お孫さんなどに毎年お年玉をあげていたような方であっても、
それすらもこれまで通りごく当然に行うことは難しいと考えられます。
これらを行うためには、事前に家庭裁判所に確認を取ることが多いとおもいます。
このように、本人の保護、本人財産の保護の理由から、財産の利用が硬直的になる場面が多い点が敬遠の理由にあるかもしれません。

また、後見制度は、基本的に本人が亡くなるまでやめることができません。
仮に、申立ての動機が自宅の売却であっても、売却後も後見制度は続きます。
すると、仮に後見人が親族以外の専門家であった場合は、毎年一定の報酬が必要となります。
報酬は月額2~6万円程度とされ、年に一回家庭裁判所が決定します。
仮に月額2万円であってとしても年間24万円程度のコストになります。

そのほか、後見人は財産管理を行いますので、通帳や印鑑などはその後見人が預かることになります。
後見人が親族以外の専門家であった場合は、その専門家に渡す必要があります。
また、後見制度は家庭裁判所が監督しています。
そのため少なくとも年に1回、財産状況を報告する必要があります。
資産家の方などは、特に悪事をしていなくても、すべての財産をさらけ出すため、心理的な抵抗感が生じることもあり得ます。

このように、高齢者の保護というメリットの半面、制度上の制約からくるデメリットともいえるものもあります。

成年後見制度の利用を開始したあとに、このデメリットを回避していくのは難しいとおもいます。
一方で、利用前(高齢者の判断能力が十分にある段階≒認知症になっていない段階)の段階では、その他の制度を利用して
デメリットを回避することも可能です。

その代表が民事信託(いわゆる家族信託)の制度です。

民事信託の詳細はここでは省略しますが、高齢者の方が元気なうちにその財産を信頼がおける親族等(例えば長男)に預ける=信託することによって
今後は、長男が高齢者に代わってその財産を活用していくことになります。
活用方法は信託の際に締結する信託契約の中でさだめられることになり、その範囲内で活用することになります。
例えば、不動産を売却するという内容であれば、高齢者が認知症になった後も、後見制度を利用することなく長男が売却をすることができます。
当然、家庭裁判所の監督はありませんから、財産状況を報告するといったこともありません。