こんにちはわちゃっとの杉山です。
先日開催した、わちゃっとVol.12「研究者を海へと駆り立てるクジラの謎」の様子をお伝えします
今回話題提供者としてお呼びしたのは、東京海洋大学鯨類学研究室の柴田千恵理さん。
クジラの研究を題材に、1時間半の対話を楽しみました。
まず初めに、参加者全員で自己紹介。クジラに関わる経験談も紹介していただきました。
国立科学博物館の大哺乳類展でクジラの骨格標本を見たという話や、沖縄の海でダイビング中にクジラと触れ合ったという話、東京・昭島市で見つかったクジラ化石に関する展示制作に関わっているという話など、自己紹介だけでも気になるお話が盛り沢山。
クジラと人にはいろいろな関わり方があることを感じます。
自己紹介の後はいよいよクジラ研究の話へ。
柴田さんご自身は、日本近海にやってくるザトウクジラの血縁関係をDNAから調べています。
クジラが身体で海面を叩く際に剥がれる表皮の一部を網ですくうなどして、研究用のDNA試料を採取しているそうです。
DNAだけでなく、ザトウクジラが深く潜水する前に海面上に出す尾びれの模様も、同じ個体が泳ぎ回る範囲を知る手がかりにしているとのこと。シャッターチャンスはほんの数秒間だけなんだとか
クジラが海面近くに現れる機会を追いかけたり遠くから尾びれを見分けたりと、クジラ研究には結構ワイルドなスキルが求められるんですね。
調査航海はなかなかハードで、期間中は昼に集めたデータを夜のうちに整理して翌日の調査計画を立てる、という繰り返しなんだそうです。
島に行っても、遊ぶ暇はなさそう
クジラに関する他の研究の例として、クジラの行動の意味や北太平洋全体での季節回遊、クジラの成長についての話もしてもらいました。
北太平洋のザトウクジラは、夏は北極近くの海で群れて漁をしながら暮らし、冬は沖縄や小笠原などの温かい海域で個々に繁殖や子育てをしながら暮らします。
ザトウクジラの子どもは大人になるまで親と一緒に暮らすわけではなく、生まれて1年ほどで親元を離れるそうです。
自立の早さにびっくり。
ほか、耳垢や歯による年齢の推定や胃の内容物の調査など、いろいろな見方でクジラの生き様は調べられているとのことでした。
柴田さんの在籍する鯨類学研究室では、八丈島の町とも協力して研究を行っています。
北太平洋を泳ぎ回るザトウクジラが近年、八丈島近くにも現れるようになり、ホエールウォッチングを産業化できるほど定着しているのかどうか、町ぐるみで注目しているそうです。
町では定期的に説明会も行い、クジラの調査を題材にした対話の場を作っているとのこと。
この研究プロジェクトではクラウドファンディングによる調査費用の調達も行われ、私も個人的に支援しました。
(東京海洋大学鯨類学研究室のクラウドファンディングのリターン)
いろいろな面で社会との関わりが深く、人に愛されているクジラ。
柴田さんたち研究者も、クジラへの愛情ゆえにハードな場面もある研究を楽しんでいるんだそうです。
いろいろな面からクジラのことを理解して、よいお付き合いをしていきたいですね
お越しくださった皆さん、ありがとうございました
次回もお楽しみに