●イナズマ・稲妻(いなずま)●雷(かみなり)(いかずち)
★イナズマ・稲妻(いなずま)の意味・語源・由来を解説
【意味】
稲妻とは、空中電気の放電によってひらめく火花。
稲光(いなびかり)。稲魂(いなたま)。稲交接(いなつるび)。いなづま。
【稲妻の語源・由来】
稲妻は、「稲の夫(つま)」の意味から生まれた語。
古代、稲の結実時期に雷が多いことから、雷光が稲を実らせるという信仰があった。
そのため、稲妻は「稲光」「稲魂」「稲交接」とも呼ばれ、頭に「稲」が付けられる。
稲妻の「つま」は、古くは夫婦や恋人が互いに相手を呼ぶ言葉で、男女関係なく「妻」「夫」ともに「つま」といった。
雷光が稲を実らせるという信仰から、元来は「稲の夫」の意味で、現代では「つま」という語に「妻」が用いられるため、「稲妻」になったと考えられる。
「稲妻」と「雷」の違いは、語源的に考えれば「稲妻」が「光」で、「雷」が「音」である。
語源を考慮しなかったとしても、「雷」は雲と雲との間、または雲と地面の間に起こる放電現象の全てを意味し、「稲妻」はその放電によって起こる光のみをさす。
★雷(いかずち)の意味・語源・由来を解説
【意味】 いかずちとは、かみなり。なるかみ。いかづち。
【いかずちの語源・由来】
いかずちの「いか」は、「たけだけしい」「荒々しい」「立派」などを意味する形容詞「厳し(いかし)」の語幹で、「ず(づ)」は助詞の「つ」。
いかずちの「ち」は、「みずち(水霊)」や「おろち(大蛇)」の「ち」と同じ、霊的な力を持つものを表す言葉で、「厳(いか)つ霊(ち)」が語源である。
本来、いかずちは鬼や蛇、恐ろしい神などを表す言葉であったが、自然現象の中でも特に恐ろしく、神と関わりが深いと考えられていた「雷」を意味するようになった。
★雷(かみなり)
https://ja.wikipedia.org/wiki/雷
電位差が発生した雲または大地などの間に発生する光と音を伴う大規模な放電現象。
な、ここでは「気象現象あるいは神話としての雷」を中心に述べる。
雷の被害とその対策・回避方法については「落雷」を参照のこと。
★落雷(らくらい)
https://ja.wikipedia.org/wiki/落雷
帯電した積乱雲などと、主に地上物の間に発生する放電で、自然現象又は自然災害である雷の代表的な形態である。
★稲妻 (曖昧さ回避)
https://ja.wikipedia.org › wiki › 稲妻_(曖昧さ回避)
稲妻(いなずま)は雷の発光現象(雷光)、ひいて雷の放電現象一般を表し、また以下のような意味でも用いられる。
・1952年に大映が製作した日本映画。監督は成瀬巳喜男。
・江戸時代に活躍した力士である、第7代横綱の稲妻雷五郎。
・漫画「ドカベン」の不知火守が投げる変化球。
・稲妻(稲妻のようにショッキングな紫のハナショウブ)
・イナズマ
・小泉賢悟が競走馬の名前に使用する冠名。イナズマアマリリスなど。
・尾田栄一郎による漫画作品『ONE PIECE』の登場人物。
・電(駆逐艦)
旧日本海軍が運用した駆逐艦。船体にはイナヅマの字を右から左へ表記されていた。
・電 (吹雪型駆逐艦)
・雷型駆逐艦・電(いなづま)
・語源と表記
現在の国語辞典では仮名表記は「いなずま」で統一されている。
コンピューターの日本語入力システムでも「いなずま」は変換できても「いなづま」はほとんどの場合漢字変換は不可能である。
古代には雷光が稲を実らせると考えられたことから「稲」の「つま」(配偶者)の意味で名付けられた。旧仮名遣いでは語源から「いなづま」と仮名表記されるが、意味の喪失と発音との統一から現代仮名遣いに関する内閣告示では「いなずま」と書くのが本則とされ「いなづま」も許容されるとされた。
また「電」の字は本来雷光を意味し、同じく「いなずま」と読まれることもある。
★雷 (曖昧さ回避)
・(かみなり)自然現象の一種。別称、稲妻(いなずま)・いかづち。→ 雷
・(かみなり)日本の名字の1つ。
・(かみなり)ポケモンカードゲームのタイプの1つ。
・(いかづち)関西鉄道に在籍した蒸気機関車・形式14の愛称。→ 国鉄2100形蒸気機関車 を参照。
・(いかづち)旧日本海軍が保有した駆逐艦の艦名。→ 雷 (雷型駆逐艦)(初代)、雷 (吹雪型駆逐艦)(2代目)を参照。
(いかづち)海上自衛隊が保有する護衛艦の艦名。→ いかづち (護衛艦・初代)、いかづち (護衛艦・2代)
(いかづち)海上自衛隊が保有する護衛艦の艦名。→ いかづち (護衛艦・初代)、いかづち (護衛艦・2代)
(いかづち)日本相撲協会の年寄名跡のひとつ。→ 雷 (相撲)を参照。
カミナリ(カタカナ表記)
自動車用エアロパーツブランドの一つ。→カミナリエアロダイナミクス(英語)
★「いなずま」語源
https://00m.in/lSj2z
稲妻は『稲の夫(つま)』という意味で,電光が稲に当たると稲が妊娠して子を孕む。
つまり電光は稲の夫であると考えられていました。
気象学的には,雷が多いとき,降水量や日照が多い,気温が高いなど,
稲の生育に都合がよく,昔の人は,雷が多いと豊作になることを経験的に知っていたようです。
また,雷の空中放電により,空中の窒素が分解され、それを雨が地中に溶かし込むと、その土地は栄養分豊かな土地になるので,豊作に大きく寄与するともいわれています。
(雷の放電によって,N2はO2と化合して,各種の窒素化合物(NOやNO2など)となり,これが雨水によって硝酸(HNO3)となる=>硝酸は植物の成長に欠かせない)
なぜ『稲夫』が『稲妻』になったかについてですが,昔の人は雷は稲を妊娠させる力があると考え,当初は『稲夫(いなつま)』と呼んでいましたが,江戸時代に『稲妻』と誤用され,今日ではそのまま『稲妻』が使われているようです。
★稲妻-Yahoo!百科事典
一般には電光と同じ意味に用いられているが、雷雲が遠いために電光の形が見えず、雲に反射して明滅する明かりをとくにさすという説もある。[執筆者:三崎方郎]
★稲妻 雷五郎(いなづま らいごろう)
(1802年 - 1877年3月29日)は、常陸国河内郡阿波崎村(現・茨城県稲敷市)出身の元大相撲力士。本名は根本 才助(ねもと さいすけ)。
★横綱一覧(よこづないちらん)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A8%AA%E7%B6%B1%E4%B8%80%E8%A6%A7
★琴稲妻 佳弘(こといなずま よしひろ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%B4%E7%A8%B2%E5%A6%BB%E4%BD%B3%E5%BC%98
(1962年(昭和37年)4月26日-)は、群馬県利根郡みなかみ町(旧利根郡新治村)出身(沼田市出身という説もある)の元大相撲力士。佐渡ヶ嶽部屋に所属していた。現在は年寄・粂川。本名は田村 昌浩(たむら よしひろ)。最高位は東小結(1995年(平成7年)11月場所)。現役時代の体格は181cm、137kg。得意手は右四つ、突き、押し、寄り、上手投げ、肩透かし。地味ながら、巧さの光る相撲で長く活躍した。通称は「ピヨ」。
★雷
1.浮世柄比翼稲妻(うきよがらひよくのいなずま)
歌舞伎(かぶき)脚本。時代世話物。9幕。4世鶴屋南北作。「うきよづか~」とも読む。通称「鞘当(さやあて)」「稲妻草紙」「稲妻表紙」。1823年(文政6)3月江戸・市村座で、7世市川団十郎、3世尾上(おのえ)菊五郎、5世岩井半四郎、5世瀬川菊之丞(きくのじょう)らにより初演。山東京伝(さんとうきょうでん)作の読本(よみほん)『昔話(むかしばなし)稲妻表紙』から不破伴左衛門(ふわばんざえもん)、名古屋山三(なごやさんざ)の物語に、白井権八(しらいごんぱち)と三浦屋小紫(こむらさき)、幡随院(ばんずいいん)長兵衛を絡ませて脚色。複雑な構成だが、なかでも、傾城葛城(けいせいかつらぎ)をめぐって争う伴左衛門と山三が吉原仲の町で刀の鞘を当てたことから切り合いになる「鞘当」と、お尋ね者の権八が江戸へきて長兵衛と出会う「鈴ヶ森(すずがもり)」は、ともに古くからの趣向を現在の形に完成させたもので、いずれも演出が洗練され、歌舞伎の代表的名場面になっている。
また「鞘当」の前幕の「山三浪宅」は、痣娘(あざむすめ)お国の山三に寄せる悲恋を描いた場面で、むさ苦しい浪宅へ葛城の豪華な道中姿(お国と同じ俳優が早替りで演じる)を見せるという南北らしい奇抜な描写がおもしろく、ほかに伴左衛門と葛城が兄妹で畜生道に陥る話や、権八と小紫が敵(かたき)同士と知らずに契る話なども織り込まれている。 [松井俊諭]
2.稲妻雷五郎(いなずまらいごろう)
(1798―1877) 7代横綱。常陸(ひたち)国(茨城県)稲敷(いなしき)郡阿波崎(あばさき)村(現稲敷(いなしき)市)出身。佐渡ヶ嶽(さどがたけ)部屋所属。 ...
3.昔話稲妻表紙
江戸時代後期の読本。山東京伝作。5巻5冊。文化3 (1806) 年刊。近松門左衛門の『傾城反魂香 (けいせいはんごんこう) 』の世界を借り,奸臣不破伴左衛門と忠臣名護屋山三との対決を描いたお家騒動物。演劇的構成と情趣に富み,京伝の読本中の成功作。
4.電光(でんこう)
雷の電気によって,雷雲の内部,あるいは雲と地面との間で生じる火花放電。いずれの放電も規模がきわめて大きく,放電直前の電位差は 108~109V,中和される電荷は 20~30C(クーロン),放電路の長さは数kmから十数kmに及ぶ。電光という語は,狭義にはこの放電現象に伴う発光を意味し,稲妻または稲光ともいう。放電は 10分の1秒ほどの短時間に発生するため,それに伴う電光も一つとみられるがそうではない。高速回転カメラを用いた電光観測の結果,空気という絶縁体を通して行なわれる高圧放電の機構がかなりはっきりしてきた。それによると落雷に伴う電光はいくつかの雷撃からなる。すなわち,雷撃は雲から大地に向かって下降する前駆と呼ばれる光の比較的弱い放電と,これが地面に届いた瞬間,同じ経路を通って大地から雲に向かって上昇する非常に明るく速度の大きい放電(帰還雷撃)とからなる。多重雷撃の場合,第1雷撃の前駆は,第2雷撃以後のそれとは非常に異なっており,持続時間が 10倍くらい長く,光は 20m進むたびに約 50マイクロ秒の停止時間をおき,また前の経路を通ってさらに 20m進むという具合に下降することから,階段型前駆と呼ばれる。第2雷撃以後の前駆は,第1雷撃のとき確立された放電路に沿って長さ約 40mの発光部が下降するというかたちで行なわれるため,矢型前駆と呼ばれる。
5.アマ【亜麻】 flax
[学名:Linum usitatissimum L.]
アマ科の一年草で,高さ 1m以上になる。西アジア原産といわれる。日本では繊維植物としておもに北海道や北陸地方で栽培されている。茎は円柱状で細長く,上部で分枝し,葉は披針形または線形で長さ2~3cmあり,互生する。夏の頃,枝先に直径 1.5cmほどの白または青い5弁花をつける。成熟した種子をしぼって得る油はアマニ (亜麻仁) 油で,おもにペンキ,油絵具,印刷インキなどの製造に用いられる。また茎から良質の繊維をとり,リンネルと呼ばれる高級な繊維がつくられ,ハンカチーフ,洋服地,シャツ,テーブルクロスなどをつくる。
6.雨乞い(あまごい)
日照りが続き,農作物の生育が危ぶまれるとき,神仏に降雨を共同祈願する行事。その方法も数十種類が現存するが,大別すると,次のようになる。 (1) お籠り 一定期間,村人が神社に参籠し,谷川の流れの上に棚を掛け神を祀って祈願する。 (2) 雨乞踊 鉦を打ち太鼓を鳴らし,踊りを奉納する。 (3) もらい水 雨乞いに効果があると信じられている神社から水種をもらい,村人が数人でリレー式に村へ運び帰って,それをまく。この時途中で休むとその地に雨が降るといわれ,不休で運び帰るものとされている。 (4) 神を怒らす 汚物を投じて水神を怒らせ大いに暴れてもらう方法。 (5) 千駄焚き 雨乞いの効果がないとき,最後の手段として村人全体が行う方法で,山頂で大火を焚き,神が火を消すために雨を降らせることを願う行事。雨乞踊を伴うことが多い。そのほか,外国でも日本に類似した方法をいくつか見出すことができる。また,沖縄の波照間島では雨をもたらす来訪神「フサマラー」の存在も伝えられている。
7.江戸の科学技術は世界水準!ものづくり日本の原点を見直そう
http://s-park.wao.ne.jp/archives/1426
国立科学博物館科学技術史グループ長 鈴木一義
... 天体運行・日食・月の盈(み)ち欠けの理由を聞かれ、雨・雪・あられ・彗星(すいせい)・雷鳴・稲妻などの「自然現象万般の説明は民衆の心を大いに惹(ひ)きつける」からである。 ...
8.インド・ヨーロッパ諸族神話
インド・ヨーロッパ諸族は、人間の社会が、(1)王を含む司祭たち、(2)戦士、(3)これら2種の支配者に服属して食糧と富の生産に従事する庶民、の3階級で構成されると考え、この構成に対応する3種の原理あるいは力の協同が、宇宙の運行のためにも不可欠と信じていた。その根強い観念によって、インド・ヨーロッパ諸族の神話は支えられ、また組み立てられている。このことを発見したのは、フランスの比較神話学者デュメジルGeorges Dumzil(1898―1986)で、インド・ヨーロッパ諸族神話の基本を形成しているこの三分的世界観を「三機能体系」とも「三部イデオロギー」とも名づけ、その3種の身分の役割に対応する自然の摂理をそれぞれ「第一機能」「第二機能」「第三機能」とよんだ。
さらに、この「三機能体系」に従って神界も、(1)魔術を使って宇宙に王として君臨する第一機能の神々、(2)風、雨、雷、稲妻など自然現象をおこしながら悪魔的現象と戦う第二機能の神々、(3)地上の豊穣(ほうじょう)と生殖およびその条件でもある平和、健康、美などをつかさどる第三機能の神々、の3種から成り立っていると考えた。もっとも主要な第一機能神は、二柱(ふたはしら)の最高神で、一つは神秘的かつ魔術師的な神、もう一つは司法者的、祭司的な神とされ、前者はインドのバルナ、古代ローマのユピテルなどに、後者はインドのミトラ、ゲルマンのチュールらによく表されている。古代ローマのマルス、ギリシアのヘラクレスなどは、第二機能を代表する怪力の英雄的戦神で、第三機能のなかでもっともおもだった存在は美男の双子神であり、その性格はインドのアシュビン、ゲルマンのニョルドとフレイなどに継承されている。
また、この双子的豊穣神を頭領とする第三機能神の数はきわめて多く、彼らはもともとは天上界の上位2機能の神々とは別個の神族を構成していたとみられていた。あるとき両神族の間で抗争が起こるが、それぞれが自己のつかさどる機能の威力を十分に相手方に思い知らせあうと、最後に和解が成立した。その結果、第三機能の主神たちにも上位機能の主神たちと比肩する地位が神々の間で認められることになって両神族が合体し、宇宙秩序の維持のために3種の機能神が協力しあうという体制ができあがったと信じられた。この構造は、アサ神族とバニル神族の戦闘を物語ったゲルマン神話にとくによく保存されている。またインド・ヨーロッパ諸族は、以上の3種の機能神のほかに、3種の機能のすべてに関与する神威広大な大女神も崇(あが)めている。この多機能的大女神の性格は、河水の神格化された存在としてインドのサラスバティーと、イランのアナーヒター両女神にもっともよく伝えられている。[吉田敦彦]
『吉田敦彦編著『比較神話学の現在――デュメジルとその影響』(1975・朝日出版社) ▽ジョルジュ・デュメジル著、松村一夫訳『ゲルマン人の神々』(1980・日本ブリタニカ)』
9.雷 - 雷と諸民族の意味づけ
.雷鳴、稲光、落雷などの諸現象は、地震、日食、月食、流星、虹(にじ)などの特異な自然現象とともに、世界各地の諸民族の間でさまざまな意味づけが行われている。これらの諸現象は、人間の力の及ぶ範囲をはるかに超えて生起するものであり、その出現を予測することはむずかしく、人間の日常的知識の枠組みのなかには、かならずしも収まりきれないものであった。とくに落雷や地震は、それ自体で人命を奪うことさえある圧倒的な力そのものであり、その点でとくに人間が関心を向けるものであった。これらの諸現象に対してなんらかの背景を与えることによって、各民族はこれらの現象を知識の枠組みに組み込もうと努力し、それを説明可能なものとすることによって、自然に対する恐れを取り除こうとしてきたのである。
雷に対する各民族の意味づけには、さまざまな形態があり、各民族のもつ世界観・宇宙論のなかで雷が占める位置の相違によって、雷に関する信仰は民族ごとに異なった様相を示している。マレー半島のネグリト系の民族の間では、雷は神の不機嫌や怒りの表れとされている。神は、人間のある種の行為、たとえば人を殺すこと、近親相姦(そうかん)を犯すこと、動物をからかうこと、鏡のなかの自分の顔を見て笑うこと、神に捧(ささ)げるべき血を吸ったヒルを焼くこと、などに対して怒りを表すとされており、この怒りが雷という形で天から地上に届くのである。この神の怒りを鎮めるためには、神に血を捧げることが必要とされ、雷がとくに激しい場合には、落雷の危険を避けるために、神に対し雷がやむように祈りと血を捧げる。これを行わなければ、落雷によって木が倒され、その結果、洪水がおこり、人々は押し流されてしまうと信じられている。
以上と同様な信仰はボルネオ島のプナン人やガジュ人の間にもみられるが、より一般化した形で雷を天上の神と結び付ける信仰は世界各地にみられる。
たとえば、ギリシア神話の最高神であるゼウスも雷神の性格を備えており、その武器は雷霆(らいてい)と稲光であった。ギリシア神話と同じくインド・ヨーロッパ語族系であるインド神話のなかのインドラ神や北欧神話のなかのトール神も雷神であり、やはり雷霆を武器としていた。また、古代中国の最高神であった上帝も、その神性の表れは雷であった。メキシコのインディオ諸族も雷神あるいは稲妻の神といった存在を信仰していた。
特定の石や樹木をそれぞれ雷石、雷木として、聖なるものとみなす習慣も諸民族の間にみられる。
また、雷を鳥と結び付けて考える信仰も広くみられる。
北米先住民のトリンギト人の間では、雷は雷鳥の羽ばたきによっておこるとされている。
雷鳥の背中には大きな湖があり、そのため、雷鳥の羽ばたきにより、雷に伴って多量の雨が降ると信じられている。同じく北米先住民のマンダン人やヒダツァ人も、雷は雷鳥の羽ばたきによっておこるとしており、ミウォク人は大カケスの一種をこの雷鳥としている。また、シベリアのオロチ人の間では、シャーマンの守護霊が雷鳥である。
シャーマンは脱魂状態に入り、守護霊の雷鳥がシャーマンに化身して天空へ飛行するとされ、悪霊に奪われた病人の霊魂を霊界においてシャーマンが取り戻すことによって、病気が治癒すると信じられている。
以上のように、雷というものに対し、世界各地の諸民族はさまざまな意味づけを行っており、その形態は民族ごとに異なっている。
しかし、その根底には、雷という人間の力を超えた現象に対し、なんらかの形での説明を試みるという共通性がみられる。[栗田博之]
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