吉倉オルガン工房物語

お山のパイプオルガン職人の物語

久々のストリートオルガン

2010年04月18日 | オルガン
福井に行ったのは、自動演奏楽器のコレクタ-様宅を訪ねるためでした。

その方の所有する手回しオルガンで十数年前に僕が修復したものがあって、
その駆動ベルトが切れたということで見に行ったのでした。
十数年も経てば消耗部品は交換時期を迎えても不思議ではありませんし、ここ
らでオーバーホールも必要かなと思っていたのですが、実際に拝見してその必
要はナシ、ベルトだけを張り替えれば良いという結論に達しました。
全く良い仕事しやがって、昔のオレ。

時間と交通費のムダかと落胆したのですが、代わりの仕事を頂きました。
ありがたいことです。
オランダ製、現代作家のストリ-トオルガンの総点検と、フランス製アン
ティークのフリーリード式手回しオルガンのふいごと空気アクションの革の張
り替えをさせていただくことになり、持ち帰りました。

ストリートオルガン

拡大

ヘンク・フェーニンゲン(~ニンゲンとよくいうけれど実際の発音はニンヘン
に近い)氏のオルガンです。

フラッシュバックの如き記憶の奔流に目眩がする思いでした。
かつて僕は自動演奏オルガンに傾倒して随分と研究したものです。
オランダはユトレヒトにあるオルゴール博物館に通い詰めて、ついには館長から
館内、書庫、修復工房出入り自由のお墨付きを貰ったのでした。
90年頃かな。当時すでにパイプオルガン職人として3年あまりの経験があったの
で、言葉(英語だけど)の足りない分を手で補っていろいろと学んだものでした。

その後は、特殊な技能ノウハウを身に付けたが為に、自分の欲、他者の思惑に
翻弄されてボロボロになったのでした。
まあ、何を失おうと自分の身に付けたこと学んだことは残るものです。
たとえ心の一部が凍結してもね。

ファサード(前面の装飾パネル)と人形、ドラムを外してオルガン本体のみを
持ち帰りました。
久しぶりにストリートオルガンにしっかり向き合うことにしましょう。
あふれ出るだろう様々な思いを受け止めながらね。

もうひとつのフランスのオルガンの事はまたいずれ。

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