オニグルミ(鬼胡桃 クルミ科 クルミ属 落葉高木 雌雄同株 花期5月)
葉は奇数羽状複葉で枝先に集まる。雄花は前年枝の葉腋についた側芽から緑色の穂状花序が出て下垂する。雄花の緑色の花被4が開くと雄蕊多数(10~20)が出て来る。
頂生した混芽が芽吹くと新梢が出て頂部に葉をつけ雌花序を直立させる。子房は小苞・花被・花托が合着した花被筒の中にあり、子房から花柱が出て朱紅色の2裂柱頭をつける。
実が成熟すると花被筒由来の偽果皮が茶褐色を帯び落果する。偽果皮の内側に子房由来の核がある。核の中に胚珠由来の種子(子葉-可食部分)が入っている。
胡桃割作業には難渋するが子葉を炒って食すと美味である。近年、東御市(長野県とうみ市)で核が非常に薄く容易に割れる品種が開発され栽培されている。
学名Juglans mandshurica var. sachalinensis
属名Juglans Jovis glans 神ジュピターの果実を意味する。
種小名mandshurica var. sachalinensis
満州胡桃のvar.変種 サハリン(樺太)胡桃
クルミの果実は核果か堅果か定説が分かれているようで、ドングリやクリと対比して考えてみます。
核果:子房由来の外果皮、中果皮の内側に内果皮が硬化した核があり、核の中に胚珠が成長した種子がある。
堅果:総苞が変形した殻斗やイガに包まれて子房由来の果実が成熟する。ドングリやクリの固い鬼皮は子房が木質化して果皮になったもので、果皮の内側に胚珠由来の種子(子葉)がある(渋皮が種皮を包む)。
さてクルミについてですが、クルミの雌花を観察すると、花弁はなく、子房部分が楕円球状に膨らみ、その先から朱紅色をした柱頭が二又の角状になって出ています。図鑑によると楕円球状の膨らみは小苞、花被、花床(花托)が合着して筒状になった花被筒/花托筒とある。この花被筒の中に子房がある。
受精すると花被筒は果実を包む偽果皮となる。子房は硬い核になり、子房の中の胚珠は種子(子葉―可食部分)になる。
①ドングリは殻斗と呼ばれる総苞、クリはイガと呼ばれる総苞に保護され・包まれて子房(胚珠を含む)が成熟し、堅果に分類されている。
②オニグルミは花被筒の中で子房(胚珠を含む)が成熟する。花被筒は偽果皮、子房(胚珠を含む)は核(中に種子を含む)に成熟している。
③ドングリ、クリの果皮(鬼皮)、オニグルミの硬い鬼面状の核はいずれも子房壁が変形したものです。
三者いずれも子房壁が硬化・木質化して鬼皮あるいは核を形成し、その内側に胚珠由来の種子(子葉-可食部分)がある。
相違点は子房を包み保護するものが、総苞であるか、花被筒であるかという点である。
さて、クルミの実は花被筒の中で成熟した堅果、花被筒(偽果皮)の中で成熟した核果 いずれか定説を待ちたい。
どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも 吹きとばせ すっぱいカリンも ふきとばせ・・・・(宮沢賢治 風の又三郎)
児童の頃、水浴びしてまだ青いクルミの実を石で割り穿った。
労多くして 仁少なし 鬼胡桃












トップ 目次 画像・文 塩城忠