Waiting for Tuesday

こちらは宇都宮敦の短歌ブログです。

くちびるとかスリーセブンとか まばたきとかピアスとか

2005-07-07 22:26:00 | 連作
(長い間、名刺代わりに活用させていただいた
第二回の歌葉新人賞候補作の30首が
とうとうリンクからはずれてしまったので
こちらに載せておきます。)


くちびるとかスリーセブンとか まばたきとかピアスとか
                           宇都宮敦

夜が明けた やたらと喉が渇いてた 君が寝言で「ねむい」と言った

 太平洋ひとりぼっちと大西洋ひとりぼっちがおちあう岬

くすぐったがりから気持ちよさがりにかえる 朝日にもえる窓わく

 水玉のひとつひとつがよく見るとドクロマークだ あなたが好きだ

くちびるは動詞であると主張してくちびっている君が大好き

 なにゆえに君をなぐさめてるんだろう ふられたのは僕 ふったのは君

じゃれあったベッドを筏みたいだと例えて 例えっぱなしの僕ら

 月をみる君の背中によりかかりビルにうつった月をみている

カーテンが光をはらんでゆれていて僕は何かを思い出しそう

 あすからは誰の歩幅も気にせずにグングンいくさ それだけのこと

「うん? ううん 悲しくなんかないけれど少し疲れた 眠ってもいい?」

 はばたきやしらたきなんかにならないで そのまばたきはまばたきのまま

 骨だけの傘がぶざまに転がってバカは思った まだ骨はある

死んだように眠った人と眠るように死んだ人とは違うのだった

 新しいカレシが車を磨いたら必ず雨が降るんだってさ

手の甲で君のほっぺに触れてみた 君のまぶたが「ふしぎ」と言った

 まいにちの電話のノイズにまぎれてた氷河のきしみを聞いていたんだ

こんなにも想像力を欠く夜もおかまいなしに星は流れる

 こんなにもかすかで弱々しくたって光は光と気づいてしまった

777 そろえつづけるスロットゲーム それでも君はストローを噛む

 傷跡を眺めてひるむ思いならいっそ朝日のままで沈んで

「痛くない痛みはきっと人生を前借りしてきた利息分なの」

 ハゲがハゲヅラをかぶっているようなやらしいたましい やさしいきもち

モニターがほっぺを青く染めたって 泣きたくないなら泣かなくていい

 でたらめな愛なのだからでたらめでなおかつ笑える苻割りで歌う

流星は流れる 歌姫は歌う 渡り鳥さえ渡る 僕らは

 ももいろの嵐のなか生まれた君を地下の店まで迎えに行った

だいじょうぶ 急ぐ旅ではないのだし 急いでないし 旅でもないし

 奇数個のピアスを輝かせて今夜 君はひとつのワンダーになる

スパコイナイノーチ ワンアン グッドナイト 知ってるおやすみ全部をあげる