
香芝の市立図書館にあったので
借りてきました。
「棺一基」
大道寺将司全句集
太田出版
友が病む獄舎の冬の安けしを (1996)
蒲団干し日向の匂ひ運びけり (1997)
五月雨を分けてやりたしむつごろう (1997)諫早湾干拓の記事を読んで
死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ (1998)
種ひとつ抱きて落つる熟柿(じゅくし)かな (1999)
散らされて踏みしだかれし紅葉かな (1999)
金魚玉死囚に多し同じ貌 (2000) 金魚玉・・金魚鉢。拘禁病による死刑囚たちの「無表情」
蜘蛛一日(ひとひ)出口探して見つけ得ず (2000)
薄氷(うすらひ)を踏めば轍の深かりき(2001)
一身に木の芽の声を聞きをりぬ (2002)
近寄るとみせて退く蜻蛉かな (2002)
吹き降りにひた濡れてゐる破れ蓮(やれはちす) (2002)
子午線を真二つにして鳥渡る (2003)
シリウスや虚空の玄(くろ)の窮まりぬ (2004)
逝く年の墜ちゆく橋を越えゆかむ (2005)
被爆地を袈裟懸(けさがけ)にして雁渡る (2006)
棺一基四顧(しこ)茫々と霞みけり (2007)
垂るる紐捩れ止まざる春一番 (2008)2月1日、死刑執行あり
すめらぎを言寿ぐぼうふらばかりなり (2009)
半身の涸(から)びし蚯蚓(みみず)進みけり (2009)
寝腐るる髪のそぞろに恋の猫 (2010)
しののめの病舎にこぼす咳ひとつ (2010)
数知らぬ人飲み込みし春の海 (2011)
水底の屍照らすや夏の月 (2011)
日盛りの地に突き刺さる放射線 (2011)
瘦せ犬の霧の果てより現はれぬ (2011)
新玉の年や原発捨てきらず (2012)
無主物を凍てし山河に撒き散らす (2012)
若きらの踏み出すさきの枯野かな (2012)
数百ある句の中から抜粋してみました。
ほんとうは、全部読んでほしい。
大道寺さんは死刑判決が確定している死刑囚です。
わたしにも、人を殺すのはよくないとわかっています。
きっとわたしの家族や友人や大切な知人が殺されたら
にくくてにくくて仕方ないでしょう。
でも今は「勝手なこと言ってる」と言われてもいいます。
死刑には反対です。
残酷です。
国家が一人の人間の首をくくるのが、
また、その日にいたるまでの一瞬一瞬、一秒一秒がです。
罪を償わせたいなら、その人を生かしてほしい。人の中で。
被害を受けた人が、加害者を憎むのは当然でしょう。
許そうとも、顔をあわせようともいえません。
でも、加害者を痛めつけるのではなく、当事者でも、周りの人でも、お互いしんどい思いをしながらでも
言葉で、時間をかけて、話し合ってほしい。
人は変われるし、根気よくそれを見届けるまでついて支えることが大事だと
罪を犯した人を殺すことではなにも防げないし、なにも生まれないと
世界が気付き始めているからこそ
この20年間で、死刑廃止国は死刑存置国の倍以上になってきているのだろうと思うのです。
子どもたちにどんな未来を残したいかを考えたとき
わたしは「世の中には立ち直る価値も生きる価値もない人間がいる」とメッセージが送られる社会より
「人は変われる。生きていれば希望があって、世界はあなたが思ってるより優しい」という未来を手渡したい。
きれいごとかもしれないけど、
でもそのきれいごとが、世界のすう勢になっているのも事実です。
森のおひさま教室
東京拘置所は建て替えをしてから、中の受刑者たちは
面会時などにまったく外を歩くこともできなくなりました。
死刑判決を受けた人は、たったひとり独居房に座して。
運動も一人。入浴も一人。
彼は24時間監視カメラ付きで30年以上を暮らしています。
孤絶されているだけでなく
毎朝、毎朝、看守の足音を全身耳にして聴き
生死をわかつ時間を過ごしているのです。
ノイローゼ状態になって精神を病む人びとも多いと聞きます。
それでも彼は、自分のこれまで見聞きしてきた体験や記憶を総動員して
虫や鳥の命、自然界の季節の移り変わりを
たった今みてきたかのように感じ取り、詠んでいます。
まるで大道寺さんが大自然の中で立っているような
また、いろんな生き物たちとふれあっているような。
胸を突かれます。
きっといつも、これが最期の句かもしれないとおもいながら
想像の翼を羽ばたかせて、世界中を旅しているのでしょう。
今夜は長くなりました。
読んでくださってありがとうございました。
何年も前に大道寺さんと知り合い、支援し、句集の上梓を勧めた辺見庸さんの跋文から。
「・・・男は気圏のはるか外に浮かんでいるようであった。
もう三十数年間も青い気圏の外をひとりでゆっくりとまわっているのだ。
この世のすさみに染まることもなく、死んだ宇宙飛行士のように地球の外をまわらされているのだった。
忘れられた、ひたすら忘れられるためにのみある、ひとつの白い花として。」
てんとむし今日繋がるるいのちかな (2008)
借りてきました。
「棺一基」
大道寺将司全句集
太田出版
友が病む獄舎の冬の安けしを (1996)
蒲団干し日向の匂ひ運びけり (1997)
五月雨を分けてやりたしむつごろう (1997)諫早湾干拓の記事を読んで
死者たちに如何にして詫ぶ赤とんぼ (1998)
種ひとつ抱きて落つる熟柿(じゅくし)かな (1999)
散らされて踏みしだかれし紅葉かな (1999)
金魚玉死囚に多し同じ貌 (2000) 金魚玉・・金魚鉢。拘禁病による死刑囚たちの「無表情」
蜘蛛一日(ひとひ)出口探して見つけ得ず (2000)
薄氷(うすらひ)を踏めば轍の深かりき(2001)
一身に木の芽の声を聞きをりぬ (2002)
近寄るとみせて退く蜻蛉かな (2002)
吹き降りにひた濡れてゐる破れ蓮(やれはちす) (2002)
子午線を真二つにして鳥渡る (2003)
シリウスや虚空の玄(くろ)の窮まりぬ (2004)
逝く年の墜ちゆく橋を越えゆかむ (2005)
被爆地を袈裟懸(けさがけ)にして雁渡る (2006)
棺一基四顧(しこ)茫々と霞みけり (2007)
垂るる紐捩れ止まざる春一番 (2008)2月1日、死刑執行あり
すめらぎを言寿ぐぼうふらばかりなり (2009)
半身の涸(から)びし蚯蚓(みみず)進みけり (2009)
寝腐るる髪のそぞろに恋の猫 (2010)
しののめの病舎にこぼす咳ひとつ (2010)
数知らぬ人飲み込みし春の海 (2011)
水底の屍照らすや夏の月 (2011)
日盛りの地に突き刺さる放射線 (2011)
瘦せ犬の霧の果てより現はれぬ (2011)
新玉の年や原発捨てきらず (2012)
無主物を凍てし山河に撒き散らす (2012)
若きらの踏み出すさきの枯野かな (2012)
数百ある句の中から抜粋してみました。
ほんとうは、全部読んでほしい。
大道寺さんは死刑判決が確定している死刑囚です。
わたしにも、人を殺すのはよくないとわかっています。
きっとわたしの家族や友人や大切な知人が殺されたら
にくくてにくくて仕方ないでしょう。
でも今は「勝手なこと言ってる」と言われてもいいます。
死刑には反対です。
残酷です。
国家が一人の人間の首をくくるのが、
また、その日にいたるまでの一瞬一瞬、一秒一秒がです。
罪を償わせたいなら、その人を生かしてほしい。人の中で。
被害を受けた人が、加害者を憎むのは当然でしょう。
許そうとも、顔をあわせようともいえません。
でも、加害者を痛めつけるのではなく、当事者でも、周りの人でも、お互いしんどい思いをしながらでも
言葉で、時間をかけて、話し合ってほしい。
人は変われるし、根気よくそれを見届けるまでついて支えることが大事だと
罪を犯した人を殺すことではなにも防げないし、なにも生まれないと
世界が気付き始めているからこそ
この20年間で、死刑廃止国は死刑存置国の倍以上になってきているのだろうと思うのです。
子どもたちにどんな未来を残したいかを考えたとき
わたしは「世の中には立ち直る価値も生きる価値もない人間がいる」とメッセージが送られる社会より
「人は変われる。生きていれば希望があって、世界はあなたが思ってるより優しい」という未来を手渡したい。
きれいごとかもしれないけど、
でもそのきれいごとが、世界のすう勢になっているのも事実です。
森のおひさま教室
東京拘置所は建て替えをしてから、中の受刑者たちは
面会時などにまったく外を歩くこともできなくなりました。
死刑判決を受けた人は、たったひとり独居房に座して。
運動も一人。入浴も一人。
彼は24時間監視カメラ付きで30年以上を暮らしています。
孤絶されているだけでなく
毎朝、毎朝、看守の足音を全身耳にして聴き
生死をわかつ時間を過ごしているのです。
ノイローゼ状態になって精神を病む人びとも多いと聞きます。
それでも彼は、自分のこれまで見聞きしてきた体験や記憶を総動員して
虫や鳥の命、自然界の季節の移り変わりを
たった今みてきたかのように感じ取り、詠んでいます。
まるで大道寺さんが大自然の中で立っているような
また、いろんな生き物たちとふれあっているような。
胸を突かれます。
きっといつも、これが最期の句かもしれないとおもいながら
想像の翼を羽ばたかせて、世界中を旅しているのでしょう。
今夜は長くなりました。
読んでくださってありがとうございました。
何年も前に大道寺さんと知り合い、支援し、句集の上梓を勧めた辺見庸さんの跋文から。
「・・・男は気圏のはるか外に浮かんでいるようであった。
もう三十数年間も青い気圏の外をひとりでゆっくりとまわっているのだ。
この世のすさみに染まることもなく、死んだ宇宙飛行士のように地球の外をまわらされているのだった。
忘れられた、ひたすら忘れられるためにのみある、ひとつの白い花として。」
てんとむし今日繋がるるいのちかな (2008)
この国の人びとの弱さが。「国家」の非道を許し続けている。怪しげな「仕組み」の殺人は許さない。
「死刑」は、この国の人びとが怯懦を抜け出さない限り存続し続ける。
おくびょうなこと。おじおそれること
という意味なんですね!いつもありがとうございます。
生活保護受給者にも
「贅沢だ」「もっと引き下げるべきだ」の声が襲いかかるこの国ですから
懲らしめたい、報復したいと言う感情から脱することが難しいのかな。
その感情の裏には
自分もまた大切にされていないという思いがあると感じます。
なかなか廃止への道のりは遠いでしょうが・・・
めげずにいきましょう~。