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◆「はんかく祭」ユーストリーム配信と、飯田哲也さんの講演要約。

2011-05-11 | 本日のNEWS
「はんかく祭」の内容を、ユーストリームで配信中です。

★2011年4月30日(土)
「はんかく祭~チェルノブイリから25年
 ・ハンカクサイこと卒業祭!」


今中哲二さん(京都大学原子炉実験所)ご講演
「チェルノブイリ原発事故。その時何が起こったか」
(今中さんのお話は04:40ごろ~。その前の私の司会は、
 まどろっこしいので飛ばしてください。笑)

ゲスト:吉田理映子さん・谷田部裕子さんのお話と手記朗読
「1999年9月30日のこと」

飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所)ご講演
「自然エネルギーと省エネ政策で、原発を卒業できるか?」

今中哲二さん、飯田哲也さんへQ&A+みんなでトーク
「これまでのこと、振り返ろう。これからのこと、考えよう」
(司会:はらみづほ(はんかく祭実行委員))

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●「はんかく祭」にいらしてくださった白鳥さんという方が、
飯田哲也さんの講演の要約を送ってくださいました。感謝…!

映像もいいですが、文字で読めると
また別の回路で理解しやすいので、
下記にアップさせていただきます。

飯田さんの講演資料と合わせて、お読みください。

《飯田氏のあゆみ》

●私は、京都大学の大学、大学院で、原子核の研究室にいたが、
大学の頃は原子力についてある意味熱心に取り組んではいなかった。
その後も、原子力以外のことも、と考えて神戸製鋼に入社した。

東芝や三菱などの巨大企業は、原子力のメインの部分の製造に関わるが、
神戸製鋼は放射線の遮蔽材などの周辺のものの開発に携わる。
私もそのおかげで、日本でどのようにモノが作られるかを
肌で理解できたことはよかった。

●その後、出向で電力中央研究所に入った。
ここは、表向きは中立の立場であるが、
電力会社の寄付により成り立っているところで、
ここで日本の原子力を構成するウラ側を見せつけられて、
「これはアカンわ」と思い知らされた。

『現代思想』に、このウラ舞台のことを書いたが、
そこは、まずは「原子力を推進するということに関しては
絶対に疑ってはいけない」という世界である。

いわば、戦時中の天皇制のようなもので、
言葉の統制まで強烈にかかるのである。

例えば、「放射性廃棄物の貯蔵」は、
「再処理までの柔軟な管理」と言い換えなければならない。
このようなことがものすごく多い。

●この頃に、高木仁三郎氏らにもお会いして、
スウェーデンに行こうという思いが強くなった。

スウェーデンは、
その前年に「原子力発電所をやめる」
という政策決定を政府が行い、

原子力に依存しているにも関わらず、
それをやめていこうという考えや、
democracyやgenderなどで目立っている存在だったので、
それを見ておきたいと思ったのだ。

ところが、実際に行ってみると
あまりにも日本と違う新しい現実を目の当たりにし、
目からウロコが何十枚も落ちる気分だった。

この時期は、冷戦の終結に伴い、
その後の日本でも「市民フォーラム2001」などが立ち上がり、
反原発という対立構造から、
政策提言などをしていくような対話へと
方向が転換していくような頃で、
スウェーデンでは「環境エネルギー革命」
と呼ばれるようなことが起きていた。

それまでは研究者の冗談でしかなかったような
環境税がスタートして、電力に市場原理が導入される
「電力自由化」へと進んでいった。

ここで、電力の独占から市場化へと大きく変化した。

アメリカでは、それが
こきたないエネルギーの発生の一因となってしまったので、
一概に良かったかどうかは国にもよるが、
ドイツではEFL(自然エネルギー買取法)が議員立法により成立し、
風力発電が爆発的に普及する契機になった。

「政策による普及」を目指してそれが実現し、
カリフォルニアを抜いて世界最大の風力発電量となった。

ドイツは、そのような現実を踏まえて、
1997年の京都議定書締結に臨んだのであった。

一方、日本政府は依然として、
20基の原子力発電所を新設する
というプランしか持ち合わせていなかった。


《福島第一原子力発電所の事故対応》

●ところで、3・11の地震後、
東京電力は地震前の需要に基づいて、
「供給が不足する」という判断を慌てて出して、
突然計画停電を行うという大混乱を引き起こした。

出産直前の病院や、緊急で電力が必要なところ、
交通信号も含めて「面」での一斉停電を行った。

地震による需要の落ち込みや、その他の事情により、
本来なら全くする必要がないものだった。

さらに、経済産業省も、法律に基づいて
大口需要の大企業に電力の使用状況を調べさせて、
そこに電力供給をある一定の程度制限するという命令を
迅速に下すことができたにも関わらず、
それを行わなかったという点で、同様に責任が重大である。

●では、今後の計画停電はどうか。

実を言うと、今夏の東京は、
もう既に完全に乗り切ることができる。

現在、都内は超節電モードなので、
どう見積もっても夏の需要は5500万kw以下である。
東電の供給量は既にこの値を超えている。

さらに東北電力に供給しようか、
という話にまでなっている。
もう余裕が出てきているんですね(図3)。

柏崎刈羽原発が一部運転を停止しているが、
再開するどころか、もっと止めても大丈夫だ。

ところが政府内には、
電力不足を補うために火力発電所を
環境アセスメントを停止してでも増設するべきだ
と言う連中さえいる。

火力発電の増設自体がもう不要なのに、
火事場泥棒もはなはだしい。

今夏乗り切れるということは、来夏も大丈夫である。
つまり、向こう10年は大丈夫だと考えていい。
だから、これからゆっくりと腰をすえてエネルギーシフト、
エネルギーの転換という長期的なエネルギー戦略を
考えていくことができるのだ。


《今後の原子力のあり方》

●今後の原子力のあり方については、
まずは安全基準をしっかりと作ることから
始めなければならない。

石橋氏、小出氏ら、
緊張感のある研究者の力が必要になる。

その上で、原発の建設については、
「増設する」などという選択肢自体、すでに全くあり得ない。

中堅の自民党の議員でさえ、もう原発は勘弁して欲しい、
と言い出している。あの自民党でさえですよ。

●では、現在ある原発はどうするべきなのか。

本来なら現在の原発はすべて一回停止すべきだ。
その上で、まずなすべきことは、二つあります。

①安全基準の確立
②原子力損害賠償の確立


その後に、再開できる原子力発電所を再開するかどうか、
という方向で議論すべきである(図4)。

そこで、現存の原発をいつ止めるかという問題については、
原発の平均寿命は、せいぜい22年である(図5)。

昨日の討論(朝まで生テレビ)で、
原子力安全委員会の人間が「原発は100年動かせる」
などと言っていたが、とんでもない話である。

これを、22年でなく40年使ったとしても、
順次廃炉になっていく。

ましてや、震災によって福島、女川、東通など、
いくつもの原発が既に停止した状態になっているのだから、
原発による電力供給自体、既にかなり落ちている。

それを含めて考えると、今後の原子力による電力供給量は、
グラフのように下降していく(図6)。

さらに、10年後の2020年で原発を全廃にする
というグラフも併記してあるが、もちろん今年全廃するならば、
グラフはまっすぐ下に書けばよい(笑)。

●一方で、化石燃料の価格はどんどん高騰している。
現在は、フクシマの事故を踏まえてさらに上昇している。

さらに、化石燃料の価格帯は常に変動する性質を持つので、
安定することはない。
そういう意味でも化石燃料による発電は見通しがない。

そこで、分散型自然エネルギーである。

●ヨーロッパでは、
近代での「四大革命」という考え方が主流である。

すなわち、農業革命、産業革命、IT革命、
そして自然エネルギー革命である。

世界の総発電量のうち、
1億9300万kwの風力発電を筆頭に、
太陽光、バイオマスの「自然エネルギー御三家」
すべてを合わせると、3億8000万kw。

これが、ついに世界の原子力の総発電量を突破した(図8)。

さらに、現在はすでに「マネー」が原子力を忌避している。
割に合わないとして投資を拒否しているのである。

フィンランドのオルキルオト原発3号機の悲劇は、
建設費の見積もりが3500億円だったのが、
現在既に1兆円を超えているということ(図11)。
ジーメンスも建設から手を引き、完成のめどが立たない。

そこで、毎年「完成まであと45ヶ月」というスケジュールが
変更されることがなく続いている(図12)。

また、日本での原子力発電所による現在の発電単価は、
政府の資源エネルギー庁が「公式」に発表している
5.9円/kwhを、はるかに超えている。

電力会社の申請書には、正直に記載されており、
頑張っても10~20円/kwhである(図13)。

さらに、様々なコストがそれに上乗せされる。
核廃棄物の処理、さらには事故のコストを考えると、
いったいいくらかかるというのか。

もし仮に事故のときの保証を全額行うとしたら、
フランスでの試算では、コストは3倍に跳ね上がったという。

●それでは、他の発電のコストはどうなのか。
一般的に、小規模生産・大量普及型の技術というのは、
どんどん安くなるという性質があり、
太陽光発電はもっともそれが顕著である(図14)。

太陽光は年間で、10%/年もの割合でコストが下がり、
風力も3%/年の割合で安くなっている。

アメリカでは、昨年ついに太陽光発電のコストが
原子力発電のコストを下回った。

自然エネルギーは、これから間違いなく安くなるし、
火力・原子力は高くなる(図15)。

なお、日本には地熱発電もあるし、「節電発電」もある。
電力消費を落とすことは、発電と同様の効果がある。
結局のところ、節電は発電と同じことなのです。



《自然エネルギーの市場》


●では、どういった国で
自然エネルギーが増加していっているのか。

以下の二つの条件がある国だと言える。

①自然エネルギーを普及させるという、
 国の意思が明確である。

②自然エネルギーを普及させるための、
 国の政策がしっかりしている。

これに合致しているのが、ドイツとスペインである。
さらに、中国がここ5年で急伸し、
現在は何と世界最大の風力発電量を誇る国になっている(図17)。

日本はこのどちらか一方が欠けている
と思われるかもしれないが、
残念ながら両方とも欠けている。

実は、2003年まで、
太陽光発電の市場は日本が世界一だった。

それが、ドイツが一気に市場を拡大し、
今では比較するのもバカらしいくらいに、
差が開いている(図18)。

●日本では現在、23兆円もの燃料費を
化石燃料の輸入によりまかなっている。
これはGDPの5%にもなる巨額である(図35)。

一方で、ドイツではすでに自然エネルギーにより
かなりの雇用をまかなっているだけでなく、
経済的なものも含めた大きな効果を生み出しており(図19)、
世界の自然エネルギーへの投資額は、
すでに20兆円を突破した。

2002年から10倍である。
今後10年でさらに10倍に膨れ上がると予測されており、
21世紀前半に、世界に自然エネルギーの
巨大市場が出現する見込みなのである(図20)。

さらに、自然エネルギー関連の企業
(メーカー、販売など)の成長は著しく、
中でも中国、インドなどの新興国の伸張は際立っている。

今や、中国、スペイン、アメリカなどの
多くの自然エネルギー企業の株価は、
京セラなどの日本の大企業を軽く追い越している(図21)。

ところが、日本だけが
世界で勝負できる自然エネルギー企業を持っていない。
日本だけが、ランキングに0社。

日本は、20世紀の戦争の焼け跡から、
自動車と石油で這い上がってきた。
これらが戦後の復興を牽引したのである。

現在のインド、中国の自然エネルギー企業は、
まさに日本のそれと同じなのである。

太陽電池メーカーも、
日本は中国にどんどん抜かされていっている。

●そもそも、火力燃料や原子力燃料の利用は、
海外にお金が逃げる仕組みである。

燃料費を払うことにより、お金が逃げる。
つまり、富が流失する。

ところが、自然エネルギーは国内に富が残る。
エネルギー単価における、
「1円」の意味合いが全然違う(図22、23)。

だから、自然エネルギーの「全量買取制度」を実施して、
たとえ自然エネルギーのコストを
消費者の電力料金に添加したとしても、
火力や原子力の燃料を買わないで済むので、
必ずしも料金はそれ程上がらないのである。

さらには、
先ほど言及したように製造コストがどんどん下がり、
それによってどんどん普及していけば、
むしろ料金がどんどん安くなる仕組みになる。

現在の多少の負担が、
将来への大きな通しとなることを考えて欲しい(図24)。

「準国産」の原子力ではなくて、
「純国産」の自然エネルギーを、
次世代にしっかり残すことができるのである。


《エネルギーシフトに向けて》

●今や、ヨーロッパでは
我々のようなシンクタンクだけではなく政府までもが、
エネルギーを100%自然エネルギーによって
置き換えることができる、
という計画を立てている(図25、26)。

日本でも、2050年までに総発電量の2割を
太陽光で補うのは、わけがない。

●漫画家の弘兼憲史などは、
ビックコミック○○○の作品の中で、
原子力発電所一基分の発電量を太陽光発電でする場合に
山手線の内側全部と同じ面積の土地に
ソーラパネルを敷き詰めないとダメだ、などと言っているが、

そもそも山手線の内側に
パネルを敷き詰める必要などあるはずもなく、
イメージで意識を操作しようとする
こういった新手の「脅し」じみたものが横行しているので、
流されて早合点しないよう、冷静に事実を見る必要がある。

●実際、自然エネルギーは、豊富すぎるほどであり、
もし仮に太陽光だけで日本の総発電量をまかなうとしても、
日本の面積の5%を利用できれば良いのである(図27、28)。

そもそも太陽光発電は、建物の屋根に載せるだけならば、
下の敷地は家屋やその他の建物として当然利用できるものであり、
未利用の工業用地などもいくらでも利用できる。

火力や原子力のように、
敷地を奪ったり場所を選んだりすることはない。

また、風力発電については、すでに日本の環境省が、
風力発電の国内におけるポテンシャルは19億kwで、
日本の総発電量の10倍はまかなえるという試算を提出している(図29)。

実際には、洋上の浮体式は難しいと思われるので、
そこまではいかないだろうが、いく必要もない。

●次に「節電発電」はどうであろうか。

節電は、「暗く・寒く・がまん」という考えがあり、
生活の質を下げるというイメージがあるかもしれないが、
それは誤解である。

●スウェーデンでは、
すでに暖房器具がなくても-20度の外気に対して、
20℃の室温を保つ住宅を作っている(図30)。

しくみは、とにかく太陽熱をかき集めフル活用し、
電化製品の排熱も極力利用する。
さらには人間の熱(一人100Wの熱を発している)
も計算に入れた設計になっており、
(どうしても寒い時は、友達を呼べばよい。笑)
断熱材や3重窓などで、内側の熱を逃がさない
構造にしてあり、その上で外気と内気の循環もスムーズ。
つまり、住宅の質が高い。

●このように、住宅のクオリティを上げることの方が、
貧相な住宅で暖房をガンガン焚いている生活よりも、
より文化的で高度ではないか。

北海道は、暖房と給湯で、エネルギー消費の8割を占める。
これは、先のことを考慮すれば、
エネルギー政策と住宅政策の貧困さが原因だといえる。

●さらに、エネルギーを消費する器具についても考えて欲しい。
電球を最新のものに替えるだけでも、電力を3/4もカットできる。
LEDならばさらにその半分にできる。

だから、発電の効率だけでなく、
それを「明るさ」などの「サービス」に
変換する器具に注目するべきである。

4000kwh/年の家庭ならば、すべての電化製品を
今の一番進んだ電化製品に替えるだけで、
電力消費を3/4カットできるのである。

そして、それらもまた大量普及型のコストダウンが見込まれる。

●では、これからどのようにして
戦略的にエネルギーシフトを行うか。

まず、あと10年で自然エネルギーを10%増、
「節電発電」で10%増(?)、
ということは、全く問題なくできる。

さらに、2050年には
両者で50%ずつをまかなう、というシナリオも成り立つ。

デンマークでは、火力・原子力が、
風力よりもずっと壊滅的に
環境に対して影響が大きいことが常識になっている。

「持続可能な発展」を目指すことが共通認識である。
そのためには、再生可能なエネルギーに
すべてのエネルギーを替えるしか方法がない、という点が、
まずはすべての発想の大前提として存在している。

その上で、
どのようにして再生可能エネルギーと共存するか
ということが課題になっている。

デンマークでは土地利用については
日本よりもずっと緻密にできていて、
風力発電を建設できる地域を、
話し合いを重ねながら厳密に規定している(図34)。

日本のようにどこに
でも建てられるようなずさんさがあると、
「ある日突然、近所に風力発電所」という、
「不幸な出会い」が起きてしまう。

●このように、デンマークでは
①予防的な土地利用計画
が確立している。そしてさらに、
②地域のオーナーシップ
が基本なので、オーナーである地域の農家などが
利益を得ることができる仕組みが確立している。さらに、
③便益は地域へ還元
しているので、
地域にとっては大切なエネルギー資源である(図34)。

だから、日本なら発電所が動き出したら、
その利益や収益はごっそり発電の会社に吸い取られていくので、
発電所ができれば、うざったいなあと嫌な気持ちになるだろうが、

デンマークならば逆に、
もし自分たちの風車がいきなり止まっていたら「どうしよう」と
かなり心配するでしょう(笑)。

●秋田県を例に取るならば、
現在の「あきたこまち」の売り上げが、約800億円。
これに対して、光熱費による流出は1000億円に上る。

ところが、風車を1000本立てたとしたときの売電収入は、
約800億円になる(図36)。

つまり、自然エネルギーは、地域起こしにも
重要な役割を果たすことができる。

その際に、
どのような運用基準を作るかを考えてゆけばいい。

●考えてみれば、携帯電話やインターネットは、
今から15年も前には、だれも使っていなかったでしょう。
そのときには「電車内で使わない」
などのルールだってなかったのです。

普及すると、ルールができる。

だから、自然エネルギーを運用することを前提に、
どのようなルールが必要かを話し合い、
一つ一つ確立してゆけばいいんです。

それをやりながら、みんなで今こそ、
エネルギーシフトを実行してゆきましょう。


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