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「浦島説話」を読み解く

「浦島説話」の時代を生きた古代人の人間観を歴史学、考古学、民俗学、国文学、思想哲学、深層心理学といった諸観点から考える。

「五行、数字、方位」

2009-11-16 23:19:52 | 易(陰陽)・五行、讖緯(しんい)思想
「神秘的な数字に対する迷信は中国伝統文化の特徴の一つであり、数字と五行・方位の関係について書かれた古文献は枚挙に暇がない。ここではただ、風水に比較的大きな影響を与えた三種を挙げておく。
鄭玄はこういう。
―― 天地の気には五種類ある。五行の次序は、一に水をいう。天数である。二に火をいう。地数である。三に木をいう。天数である。四に金をいう。地数である。五に土をいう。天数である。つまり数字を五行と組み合わせ、さらに天や地とも関係づけ、奇数を天の数とし、偶数を地の数とするのである。
揚雄の『太玄経』によると、
―― 三・八は木である。四・九は金である。二・七は火である。一・六は水である。五・五は土である。
―― 一と六は宗を同じくし(范望『太玄経注』では、北方に居ることであると解釈している)、二と七は朋を同じくし(南方に居る)、三と八は友となり(東方に居る)、四と九は道を同じくし(西方に居る)、五と五は相守る(中央に居る)。
これは、数字と五行・方位とを組み合わせているのである。河図・洛書の五行や方位と数字との組み合わせはさらに複雑で興味深い」
(何 曉昕 (三浦國雄監訳)風水探源~中国風水の歴史と実際~ pp38~39 人文書院 1997年)
奇数と“天”
鄭玄は後漢の大儒とされ、門人は数千を数えたという。『易経』は儒教の経書の一つである。鄭玄は「周易」「尚書」「礼記」などを注解している。易の「繋辞上伝」に「天一地二。天三地四。天五地六。天七地八。天九地十。天数五。地数五」とあり、奇数は天を象徴し、偶数は地を象徴するものであった。
「浦島説話」を伝える始原の三書のうち「逸文」には奇数がちりばめられている。「三日三夜」「不得一魚」「五色亀」「一太宅之門」「三歳」「棄遺一時」「三百余歳」といった具合で、「三百」は干支周数六十で割ると「五」である。本論は、馬養は易の世界観を意識して奇数を配したと解している。彼は奇数を多用することで“異界=天”を象徴させたとみるのである。それは尊貴性の象徴表現ともいえると考える。

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