お好み夜話-Ver2

博多・天神 屋台で黄昏る

門司港から博多駅まで戻って来たのはまだ4時で、屋台が立ち並ぶには早過ぎるため、駅から一番近い日帰り温泉で汗を流すことにした。

駅から歩くこと6,7分、ビジネスホテルに併設されている「八百治の湯」で一風呂。

電車の中で爆睡して温泉に浸かり、これでサッパリリセットした。

歩きまわって汗を流したせいか、体重もまったく増えておらず59㎏をキープ、これなら屋台の2,3件ハシゴして・・・、いやそんなに時間の余裕はない、9時の飛行機にのるためにはせめて8時には空港に着いていないと。


というわけで、早速地下鉄に乗って中洲川端駅で下車。

しかしまだまだ陽は高く、屋台はまだ準備中。

仕方がないので川沿いをブラブラ天神の方へ歩いてゆく。

すると少しづつ、営業しているお店がありましたよ。

天ぷらとめしはちと重い、屋号に引かれるけどパス。


餃子とラーメンで〆るのはいささか早いので、これもパス。

だいたい屋台に明かりが灯るのは6時半か7時、路上で屋台を組み立てているところもあるが、くわえタバコで作業しているような屋台にははなから行かない。

くわえタバコの主がその店の大将か、雇われた「引き屋」さん(昼間屋台を止めてある駐車場から屋台設置場所まで屋台を運んでいるのが「引き屋」と呼ばれる職業)なのかは知らないが、感じは甚だよろしくないからそういう屋台もバスだ。


道みちバインダーを小脇に挟んだ二人連れのオジサンを見かける、ハハァ、この人達が9月から施行された市の条例の指導員なんだろうと見当をつける。

屋台を出すには三つ許可が必要で、
◯営業許可書 これ厚生労働省・消費者庁の許可。
◯道路占有許可書 こいつは福岡市の許可。
◯道路使用許可 これが福岡県警の許可。

移動屋台じゃなくて固定屋台だから、通行のじゃまにならないように歩道に設置しなけりゃならないんだよね。

だから決まった場所にコンセントがあって、冷蔵庫も常備、郵便だって届いちゃうんだから


なんちゅうウンチクをかあちゃんに講釈しながら歩いてゆくと、そろそろ天神の駅。

この辺りでどこかに入らないと時間がどんどん押してゆく、ふと立ち止まってみれば今まさに開店したと覚しき屋台のわきで、大将が前掛けをしめていた。

「やってます ? 」

と声をかけると、

「はい、どうぞいらっしゃい ! 」

とにこやかに返ってきた、決まり 暖簾をくぐって椅子に腰掛けエビスビールを注文。


串焼きを2,3本と餃子、こちらの餃子は小ぶりで食べやすくて、柚子胡椒もなかなかイケル。

ポツポツ話しをしていくと大将が、

「走られるんですか ? 」

と聞くので、なんで ? と答えると、オヤジの履いているランニングシューズに目が止まったんだとのこと。

大将も40歳を過ぎてから走っていて、まだ大会には出たことがないけれど、健康維持のために続けているそうな。

ひとしきりそんな話で盛り上がり、11月の「天草マラソン」のあとまた来るつもりだと言うと、日曜日は休みだとのこと

じゃあ1泊して、今回のように夜の便で帰れば大丈夫かと思ったが、雨が降ると休みだそうで、残念なことに一緒に行動するのが雨男の師匠なのだ

日曜日でも雨の日でもやっている屋台もあるようだが、選択肢は限りなく低いぜよ


オヤジは二十歳前から六本木で、幸運にも屋台のおでん屋の「おいちゃん」に良くしていただいた過去があるので、屋台にはまったく抵抗がないが、ボッタクられるんじゃないか ? 不衛生じゃないのか ? と心配される方も少なくないだろう。

確かに一部ではよろしくない営業をしている屋台もあるようだが、最近はほんとうに条例が厳しくなって、衛生面やルールが徹底されているそうだ。

なんにせよ全国の約4割と言われる屋台の数が福岡に集結しているわけだし、もう文化として定着しているハズなんだから、締め付けだけではなく観光資源としてうまく折り合っていければいいのにと願うばかりだ。


時間を気にしながら焼酎を飲み干し、〆の焼きラーメンを食べた。

5年前に来たときに食べた焼きラーメンより、ずっとこの「雲仙」の焼きラーメンのほうが旨かった。

「大将ご馳走さま ! 」

と、のれんをくぐり、屋台の灯を後にして駅へ向かった。

博多よサラバ、しばしのお別れ。


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