ウクレレとSwing(スヰング)音盤

Loco Island (1984) / 二名敦子 


8月は勝手に特集月間として『オータサン in セッション・ワーク』と題し、スタジオ・ミュージシャン或いはゲストとして他人名義の作品に登場したオータサンの仕事をまとめて、週刊ペースでご紹介してきた。今週がその最終回。

今回は昭和のシティポップ名盤に数えられる『LOCO ISLAND(1984)』(レーベルはビクター)である。のち2013年にタワーレコード限定でCD化され再発。 

本盤以前の二名敦子は歌謡ポップス、ジャズ/ボサノヴァなどの路線で売り出し図るもブレイクせず、本作で従来路線から心機一転してリゾート/シティポップス路線に変更した結果、本盤が代表作となった。編曲は全曲を佐藤博が担当し、キーボードで演奏にも参加。ハワイのマウイ島にジョージ・ベンソンが当時所有していたというマウイ・ラハイナ・スタジオ(のちMaui Recording、現在は閉業)で吹込みを敢行。

このためハワイのサーフロック/AOR人脈カラパナからD.J.プラット(g)、ゲイロード・ホロマリア(key)、セシリオ&カポノからヘンリー・カポノ(g)らハワイのサーフロック/AORトップミュージシャンが参加しており、曲によってはまんまカラパナ、あるいはヘンリー&カポノ風サウンドに仕上がっている。

一方で日本からは曲によってカシオペアのベーシスト櫻井哲夫(B1)、またシンディ・ローパーの曲にそっくりなB3では鳥山雄司(g)、伊藤広規(山下達郎のベーシスト)、佐藤博(key)、村上"ポンタ"秀一(ds) といった日本のトップミュージシャン勢が参加。

こうした若手メンバーに混じって、我らがオータサン(Ukulele)の参加が目を引く。ハワイ勢ミュージシャンの間ではもちろんレジェンド扱いであったろうが、当時はまだウクレレ再ブームの兆しすらなく、一部の好事家を除き日本国内でオータサンの知名度は決して高くなかったであろう事を鑑みれば、日本勢にとってはウクレレをもって日焼けした日系のおじさんがニコニコしてスタジオにやってきたぞ(この人誰だろう)、程度の認識であったかもしれない。確かにウクレレとしてオータサンに加えてJan Lunaと二名もクレジットされており、曲調から推測するとB6あたりのバックで弾いているのかもしれないが、音の上では何度聴いても一体どこに入っているのか判別できなかった。

Arranged by 佐藤博
Guitar: Henry Kapono、D.J.Pratt
Bass: Jay Morina、櫻井哲夫(B1)
Keyboards: Gayload Holomalia、佐藤博
Drums: Alvin Fejarang
Ukulele: Herbert Ohta、Jan Luna
Sax: Jake H. Concepcion
Strings: Joe Strings
Guitar: 鳥山雄司(B3)
Bass: 伊藤広規(B3)
Drums: 村上"ポンタ"秀一(B3)

楽曲提供も豪華で高中正義作曲の(A1)、安部恭弘(クリスタルキング、大橋純子、竹内まりや、稲垣潤一等への作曲提供)作曲の(A4)、佐藤博作曲の(A5)など。ジャケットのデザインは浅葉克己(著名アートディレクター)、エクゼクティヴ・プロデューサーはフジ・パシフィックの朝妻一郎。

A1: カラパナ・ブラック・サンド・ビーチ(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 高中正義)→サッポロのスポーツドリンクのイメージソング
A2: エリア・コード808(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 堀口和男)
A3: ラハイナ・ミッド・サマー・クルージン(作詞 / 三浦徳子、作曲 / ヘンリー・カポノ)
A4: ブギー・ボード(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 安部恭弘)
A5: ブルー・キュラソー(作詞 / 二名敦子、作曲 / 佐藤博)

B1: スピン・ドリフター(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 桜井哲夫)
B2: ちょっと泣きたいWednesday(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 村田和人)
B3: 渚のフェイム(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 小杉保夫、演奏 / ポンタ村上秀一、伊藤広規、鳥山雄司、佐藤博)→マックスファクター84年夏のキャンペーンソング
B4: ハワイアン・シャワー(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 谷口雅洋)
B5: コナ・サンセット(作詞 / 三浦徳子、作曲 / 小笠原寛)
B6: ホノルル・シティ・ライツ(作詞 / 作曲 Keola Beamer、日本語詞 / 三浦徳子) →ビーマーズのカバー、原曲は映画「ビッグ・ウエンズデー」エンディングテーマ

歌詞カードに加えて、ハワイに取材したポスターマガジン風のブックレット封入。


9月からは通常運転で隔週更新ペースに戻り、まだまだある!オータサンの自己名義アルバムをご紹介してゆく予定。
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