8月は勝手に特集月間として『オータサン in セッション・ワーク』と題し、スタジオ・ミュージシャン或いはゲストとして他人名義の作品に登場したオータサンの仕事をまとめて、週刊ペースでご紹介している。
正確な制作年度は不明だが、カタログナンバーから恐らく1967~68頃の作品と推測。ハワイのHula Recordsからリリース、プロデュースはDon McDiarmid, Jr.。タイトルにある「カマアイナ」という言葉は直訳すると「土地の人」で、ハワイ出身やハワイに住んでいる人の意味。 本盤はハワイのローカルソング集である。
本盤の主役であるBill Kaiwa (vocal)はHula RecordsはじめLehua、Sounds of Hawaiiなどハワイの諸レーベルから多くの音盤をリリースし60年代から70年代にかけて活躍した男性歌手。その後も地元ハワイで息の長い活動を続け2008年に最後のアルバムとなるトラディショナル・ハワイ音楽集をリリースした後、2011年に78歳で亡くなっている。デビュー以前の若き日にはカウアイ島のパニオロ(カウボーイ)だったという。本盤でも全曲ハワイ語でハワイ音楽を唄っている。
ジャケット写真でそのBill Kaiwaがポーズをとるのはハワイ島プナコーストにあるHerbert Shipmanという大富豪の邸宅で、なんと今日では『Shipman House』として地図にも記載(『Shipman Beach』という砂浜も!)されており、B&Bとして宿泊も可能という。撮影時はまだ存命であった所有者であるHerbert Shipman氏の私邸で、特別な許可を得てジャケット撮影が実現した、とライナーノーツに記載がある。調べてみると先祖が宣教師として布教の為来島し、子孫がハワイ王家に嫁ぎ大富豪となったそうで、このあたりの広大な敷地が今でも一族による私有地であるらしい。
伴奏を務めるグループ "The Maile Serenaders"は、スチールギター入りの典型的なハワイアンバンド編成で、メンバーを見れば明らかなようにパーマネントなバックバンドではなく、本盤のレコーディングの為にレコード会社によって集められた腕利きミュージシャン達だ。
James Kaopuiki - Bass
Pua Almeida - Electric Guitar
Eddie Pang - Steel Guitar
Herbert Ohta - Ukulele
Iwalani Kahalewai - Voice
ボーカル/スチールギターとして大量の音盤を出していて日本でも知名度の高いPua Almeidaが、ここではエレキギターを担当。B5.の冒頭部分で聴かせるギターはまるでジョー・パスかと思うようなジャズギターで、多才ぶりを発揮。
またウクレレはオータサン(ここではハーバート・オオタ名義)が担当という豪華メンバー。というのもHula Recordsはオータサンがこの時期専属だったSurfside Recordの親会社で、プロデューサーも同じDon McDiarmid, Jr.だった。全編耳を凝らして聴いたが、ウクレレ演奏としては残念ながらバックでポコポコとした音のコード弾きに徹しており、オータサンらしいソロ演奏などは聴かれない。
A1 Hawai‘i Aloha
A2 Uluhua Wale Au
A3 Moani Ke ‘Ala
A4 Ua Kea O Hana
A5 Wehiwehi ‘Oe
A6 ‘Imi Au Ia ‘Oe
B1 Ahi Wela
B2 Waipi‘o
B3 Pulupe (Beautiful Lanihuli)
B4 Koni Au
B5 Mai Po‘ina ‘Oe Ia‘u
B6 Sweet Le Mamo
A2 Uluhua Wale Au
A3 Moani Ke ‘Ala
A4 Ua Kea O Hana
A5 Wehiwehi ‘Oe
A6 ‘Imi Au Ia ‘Oe
B1 Ahi Wela
B2 Waipi‘o
B3 Pulupe (Beautiful Lanihuli)
B4 Koni Au
B5 Mai Po‘ina ‘Oe Ia‘u
B6 Sweet Le Mamo
B1, "Ahi Wela"は後年イズ(Israel Kamakawiwo'ole)が"Twinkle Twinkle Little Star(きらきら星)"の歌詞と合体させて歌い有名になったハワイ語詞部分の、原曲である。
アルバム・ジャケットにはまだオリジナルのシュリンクラップが残っており、"Sold only in Hawaii" (ハワイのみで販売)、"The perfect gift from Hawaii" (ハワイみやげに最適)等と謳ったステッカーが貼られている。
またレコードの内袋の印刷には70年代に入ってからの作品も含めたオータサンの諸作品(Surfside Records吹込み盤)が掲載されている事から、拙宅にあるのは恐らく70年代に入ってからのリイシュー盤だろう。
↑右側の方に拙稿でおなじみのオータサン諸作品がズラリと掲載されている。
↑左から二番目の一番下にはオータサンの師匠エディ・カマエのアルバムも見える。他にも有名なハワイ音楽アルバムの名作がずらり。