に意識的な放任

に意識的な放任

くを傷つにいく

2017-08-14 12:41:41 | 日記

フリッツの優しい空色の目に映る、自分の姿がゆがんで見えた。フリッツは正樹が話始めるのをじっと待っている。正樹は意を決して、打ち明けた。
それは田神の予想通り、独りよがりな悲しい想いだった。

「……ドイツには僕の知らないフリッツの暮らしがあるから……きっと、離れてい成立香港公司る間に、フリッツには新しい恋人ができるだろうと思ったんだ。周囲に祝福される健康な恋人が出来たら、遠くにいる僕はもういらないかなって……」
「正樹をいらない……?わたしが、そう言うと思っていたの?……信じられない……」

フリッツはショックを隠さなかった、大いに落胆し、正樹を見つめていた。

「フリッツ。呆れただろう?これが正樹の本心なんだよ。本当は誰よりもフリッツの事が大好きで忘れられないくせに、独りで目が溶けるほど泣いたくせに、本当のことは言わないんだ」
「田神さん。正樹はどうして欲しいものを欲しいと言わないのでしょう。わたしがどれだけ毎日正人民幣匯率樹に逢いたかったか、どれだけの想いをこめてメールを送ったか信じていなかったなんて……」

正樹はもじもじとどこか居心地悪そうにしている。

「そういえば、正樹。携帯電話の電源は?」
「え……と……そのままにしてる」
「わたしはたくさんのメールを送りました。でも、いつからか返事はありませんでした」
「ごめん……でも、僕にはドイツ語が分からなかったから……翻訳サイトに入れてみても、変な訳になることが多かったし……電話を掛けたかったけど、フリッツの向こうでの様子がわからなかったし、あのそれにね……お金がかかると思ったから……」

フリッツは悲しそうに視線を落とした。

「正樹に送った言葉が届いていなかったなんて……」
「あの……がっかりしないで、フリッツ。いくつか覚えた言葉はあるんだよ。ほら、ich m?chte dich sofort sehen今すぐ逢いたいって言葉……とてもうれしかった」
「そう……ではegal was kommt ich werde dich nie verlassen.は?」
「ごめんね……」
「何が起こっても、私は決してあなたを手放さない……と言いたかったのです」
「フリッツ……」
「そして、もう一つ。selbst die entfernung kann uns nicht trennen.」
「……フリッツの国の言葉が分からなかったから、諦めてしまったんだ。それに、体調が思わしくなくて……すべて悪い方にしか考えられなくなってしまった。届くメールさえ信じられなくなってしまって……いつかお別れしましょうってメールが届いたら、僕はもうどうしていいかわからなくなる……何もなくなってしまった僕には、もうフリッツだけしかいなかったから、終わりが来ないように電源を落としたんだ。そうすれば、別れのメールは見なくて済むって思ったんだよ……」
「正樹……」

フリッツは正樹の葛藤する内情を理解した。
うつむいた正樹の頬を、壊れ物を扱うようにそっと両手で包み込むと、フリッツは優しく触れるキスを落とした。

「可愛い正樹……どうして、あなたを責められるでしょう。傍に居なかったわたしが悪いのです。でも……言葉の壁がこれほど厚いとは思わなかった。毎日、正樹にメールを送っているのに、エラーばかりになってどれほど焦っていたか……田神さんがメールをくれなければ、わたしは極東の恋人に捨てられたと勘違いして、傷心の日々を過ごしているところでした」
「ごめんなさい……自分だけが傷ついているつもりで、知らない間にフリッツけていたんだね……」
「可愛い正樹。最後の言葉の意味を知りたいですか?」
「うん。教えて、フリッツ」
正樹の頬を、ぽろぽろと透明な雫が転がってゆく。
溢れた涙が、心に刺さった氷の棘を溶かし、今の正樹の心はとても安らかだった。
抱きしめた正樹の顔を覗き込んで、フリッツが笑いかけた。

「一緒に生きる決心はつきましたか?」
「うん……フリッツがいないと、僕は誰と一緒に居ても一人だから……」
「さあ。そろそろ行きましょうか」
「え?……どこかへ行くの?」
「二人で、正樹の生まれた家に行きます」
「何をしに?」
「挨拶に行きます。わたしはこれから正樹と共に生きるのですから」
「そんな……」

驚愕の余り、棒を飲んだようになった正樹の背中を田神が押した。

「ここまで来たら、フリッツの思う通りしてみたら?驚くかもしれないけれど、案外うまかもしれないし、一生に一度くらい、正樹が親にわがまま言ったって良いじゃないか」
「だって……フリッツが嫌な思いをするかもしれない。お父さんは二人でいるのを決して認めてくれないと思う。フリッツが傷つくってわかっている場所へは行かせられないよ」

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