に意識的な放任

に意識的な放任

だ杖る時期

2017-07-25 12:21:39 | 日記


車に乗り込む朔良に手を貸し、彩は社員にお願いしますと頭を下げた。
彼らは、社長の息子でもある見目良い朔良と近づきになれたのが面映ゆいらしく、やたらと饒舌だった。

「もう出していいかな、朔良君。こんなことならもっときれいに掃除しておくんだった。」

「……お願いします……。」

会話を聞いてしまった彩は、強張った笑顔で車を見送った。
今は彼等と話をしたくなかった。朔良には悪いと思ったが、自分の事しか考えられなかった。
やはり、朔良の父親の会社に安易に世話になるべきではなかったのかもしれ健營瘦身計劃ないと、今更思う。気付けば、あの事故から三年の月日が過ぎていた。
週三日のリハビリは少しずつ効果を上げ、朔良は流れる足を引きずりながらではあったが、杖の助けを借りて何とか自力で歩行していた。
彩が傍に居る事で落ち着きを得て、朔良の親も喜んでいた。

しかし、以前のように普通に歩けるようになるには、痛めた足にもう少し体重をかけて歩く訓練をしなければならない。痛みに弱い朔良に、それはかなり困難だった。
一度変な歩行癖がついてしまった朔良には、矯正に時間がかかるだろうと医師が告げた。

「これからも根気よく時間をかけて、練習するしかないね。朔良君、時間があるなら、プールでの歩營養師推薦行練習をやってみないか?身体への負担が軽減されるから、歩きやすいと思うんだ。抵抗がないから杖を使う必要がないからね。近くにトレーナーの居る温水施設があるから紹介状を書くよ。」

朔良はちらりと彩の顔を見た。
彩は数日前に耳にした会話を引きずっている。
元々、朔良の足が少し良くなれば大学に行きたいと思っていたのが、話をきっかけにして強くなっていた。

「先生。時間をかけてとおっしゃいますけど、どのくらいの期間が必要ですか?」

「……というと?」

「出来れば期限を切ってもらえば、俺も予定が立てやすいので助かるんです。」

「おにいちゃん……?それって……」

朔良は、彩が自分の手を離そうと考えているとは思ってもみなかった。
だが彩は、あっさりと本心を口にした。

「そろそろリハビリにも目途がついたかなと思ってさ。朔良にも以前に話したと思うんだけど、俺は教師になりたいんだ。」

「……うん。聞いたことある……夢だよね。」

「元々、一年間は朔良のリハビリに付き合うつもりで、傍に居る事を考えていたんだ。怪我が酷かったんで結局三年もかかってしまったけど、できれば俺はこれからでも大学に行きたいと思っている。少しはお金も貯まったし、独学でずっと勉強だけは続けて来てたんだ。」

諦めていなかったと知り、見開いた朔良の瞳が驚愕に潤んだ。
朔良はこのままずっと、彩が自分の傍に居るものとばかり思っていた。

「もう……お終いってこと?ぼくのお守りは飽きたってこと?……知ってたよ。会社で何かあったんでしょう?この最近、おにいちゃんはずっと話しかけても上の空だった……もうパパに話をしたの?」

「朔良……その話は後だ。あの、先生。ちょっといいですか?ずっと朔良の付き添いをして様子をずっと見てきました。今はまが頼りだけど、朔良は一人でももう十分にやっていけるんじゃないかと、俺は思っています。もうすぐ免許も取れますし、一人で通えると思います。」

医師は困ったように朔良の顔と彩を見比べた。
彩がいなければリハビリが進まないことを、医師は十分に知っている。
身内の誰でもなく、彩の腕にべったりと依存してやっとここまで回復してきた。
朔良が彩に褒めてもらいたくて、固まってしまった筋肉をほぐす辛いマッサージも、歯を喰營養師推薦いしばって耐えているのもわかっている。
反面、彩が事故の責任を感じ、これまでどれだけ献身的に朔良に尽くして来たかも、担当医は十分知っていた。

「そうだね。小さな子供もいつか独り立ちする。そろそろ次のステップを考えかもしれないね。この一年間、朔良君はとてもよく頑張って来たと僕は思うよ。リハビリセンターから転院してきたときには、もう朔良君は自分の足で歩くのを諦めて、一生車椅子に乗る気なのかと危惧した位だ。彩君が傍に居ないときは、まるで癇癪持ちの王子様のようだったしね。」

医師は朔良に立ち上がるように勧めた。