tsurugiのブログ

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落月 -自殺のアルゴリズム-

2019-09-14 22:32:00 | 日記
自殺する者に取り憑いている狂気と
火に飛び入り自らの命を絶つ虫たちの
それとは全くもって同じものに違いない

虫たちは自殺者であり
自殺者たちは夜のコンビニ前の
害虫灯に集まる蛾や昆虫だ

虫たちが狂気の如く闇夜の
炎や灯に体当たりをするのは
走光性というプログラムによるものらしい

本来かれらにとって日がくれた後
唯一存在する光は
月がもたらすそれだけだった

走光性は光に向かうためのプログラム
ではなく、月明かりを頼りに水平飛行
行うための機能だと言う

これだけ世界に月とは別の
人工による光源が闇夜を照らしている
にも関わらず
走光性をもつ生物の殆どは
想定された環境下でその機能の恩恵に
与っていることだろう

しかし一方で
垂直方向に無限に離れた場所に
あるはずの光源が
突如目の前にあらわれるという
想定外の事態に遭遇してしまう
不運なものたちも一部存在する

それがあの飛んで火に入る
虫たちの姿だ

天高くから落ちてしまった月は
今度は虫たちを無条件に吸い込む
ブラックホールへと化す

得てしてプログラムというもの
想定外の入力に出くわすと
本来の任務が遂行不能になるだけでなく
システム全体に対して致命的な
ダメージを与えるような暴走を引き起こす
ことがある(これをふつうバグと呼ぶ)

生存のために不可欠なアルゴリズムは
月の落下という異常事態を前に
死を招くデスアルゴリズムに変貌する

虫たちは愚かさではなく
アルゴリズムの"正常な"暴走
により狂気を現す

ヒトにプログラムされた
アルゴリズムもこれと何ひとつ
かわらない

生存のために組み込まれたアルゴリズム
はある環境下で死のアルゴリズムとなりうる

ただヒトにとっての落月は
光源の位置や走光性とは
別のものであるというだけだ

その内容はここではかかないが
それよりも重要なことは

自殺という狂気が
道徳や理性的判断といった
意識上の問題により起こるものではなく

(意識下の身体機能的、本能的な
いわば意識というソフトに対しての)
身体というハード上の問題(バグ)
によって生じているという事実である

それゆえ、ハード本体に故障がある
コンピュータシステムの問題を
ソフトウェアによって
解決することが不可能
なのと同じように

人間の自殺を
感情的、意味的な操作で
扱おうとすることは
極めて無意味なこと

自殺という狂気は
意識レベルの問題によるものでは
なく、身体機能的障害によるものである

ゆえにその対策も身体レベルで
行われなければならない

、、、

人間は意識というサブシステム
過信しすぎたために
メインシステムである身体の問題を
無理矢理、意味的に扱おうとする
という愚を犯しているだけにすぎない

足を骨折した者はどれだけ
精神的努力をしても走り出す
ことはできない

不運にも落月に直面した人物もまた
どんな意味的な支えを得ても
死の誘惑に抗うことは出来ない

それは本能・DNAレベルの
アルゴリズムの正常な働き
によって起こされる異常・バグプログラム
なのだから

落月-moon drop-

それは死への最後の極地だった
あの場所では全ての入力が
死という出力に変換される

、、、

人間にとっての
落月の内容が解明されれば
ヒトの自殺は防ぐことが出来る

人をあの死を招く病・錯覚現象から
救い出すことできる

ヒトは何を想定
それに合わせたアルゴリズムを
身体に組み込み

いかなる異常事態がシステム全体を
破壊するまでのバグ(=自殺)を
引き起こさせるのか

、、、