本物の手錠はつや消しの黒色で
ずっしりと重い
通常、単体で使われることなく
腰縄のついたベストのようなものと
併用される
複数名の連行の際には
この腰縄を用いて一列に
文字通り数珠つなぎにされる
これらが身柄から奪うのは
身体的な自由というより
精神的なそれだ
ひとりの人間としての価値が奪われた
ような気になる
自分が獣同然に扱われることを
受け入れざるを得なくさせられる
あの漆黒の手錠には
市民として、人間としての
重要なものを奪い取る力がある
いや、それを既に失っていることを
気づかせる力と言ったほうが
正しいかもしれない