大連 Dalian 1987年 (3) から続く
それにしても生活臭の漂っている沿線です。こうして停留所で電車を待つ人たちの自然な姿が何とも言えません。中国の人に怒られそうですが、この時代の方がみんな幸せだったのでは、なんて思わないこともありません。
人の表情がとにかく素朴です。今、テレビやネットで見る中国よりも、いい顔をした人が多い、と言ったら、これも怒られるでしょうか。
大連は日本の東北地方の真ん中ぐらいの緯度ですが、冬はかなり寒い土地です。夏は日本の東北よりやや涼しく爽やかです。夏の大連は、中国でトップクラスの気候の良い街かもしれません。
夕方、普段着、というよりシャツ1枚のラフな服装で道端に固まっている男達は、トランプ遊びに興じています。車もあまり通らないので、車道に平気ではみ出しています。こういった光景は大連に限らず、当時の中国で良く目にしました。
当時の中国は、泥棒がいないと言われていました。実際は嘘ですが、確かに人が多く、こういう所では常に近所の目があります。家族の絆も強く、地域のコミュニティーもこうして堅牢だったので、監視カメラなど全くなくても、今より治安が良かったのでしょう。
この2年後に、私は初めてアメリカへ行ったのですが、対照的に大都市でも人が歩いている所は限られていて、中心部にある沢山のビルの多くが立体駐車場になっていたのが印象的でした。
街で人民服こそ普通には見られなかったものの、中国らしい服装の人が主流ではありました。けれども徐々に西洋化は進んでおり、それが中国を訪れるたびに強まっているのも感じました。そういった西洋化の先端を行くのは、中国もやはり若い女性からです。
対照的に、男女を問わず、お年寄りの姿にこそ、昔ながらの中国らしさが溢れ出ています。これまたいい顔をした人が多かったです。大連は特にそう感じました。
もちろん、こういう懐古趣味的センチメンタルな、昔は良かった、的な記述には批判もあるでしょう。短期の滞在で表面しか見えていないのも否定しません。それでも、インターネットでいくらでも最新情報が入る今、最近のニュースを見る限り、あまり中国に行きたいとは思いません。ですが、この写真当時の中国が今もあるなら、明日にでも飛んでいきたいです。
(Dalian, China. August, 1987)