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東葛総合法律事務所友の会

千葉県松戸市で"法律"をキーワードに集う市民の会

「ショージとタカオ」松戸上映会 2011.2.12まであと26日

2011-01-18 13:18:38 | 日記


「ショージとタカオ」松戸上映会の準備は着々と進行中です。

■ 1月15日(土)、東京・新宿での布川事件・新春の集い では井手洋子監督のあいさつにあわせ松戸上映会の宣伝を東葛総合法律事務所のTさんがおこない、その場で十数枚のチケットを買っていただきました。

 当日の様子は「ショージ」こと桜井昌司さんのブログ「獄外記」に写真入りで載っています。

■ 1月20日(木)発行の「朝日れすか」に上映会の紹介記事を掲載していただくことになりました。

■ 1月24日(月)午後2時~ 千葉県庁記者クラブでの記者会見には
  「タカオ」こと杉山卓男さんの出席が決まりました。
 記者発表は、東葛総合法律事務所宗みなえ弁護士がおこないます。

■ 1月27日(木)午後7時~ 松戸駅西口の東葛総合法律事務所にて、「ショージとタカオ」上映会成功に向けての布川事件学習会をおこないます。
 「ショージとタカオ」のお二人、桜井昌司さん・杉山卓男さんが出席。
 解説は、布川事件弁護団の福富美穂子弁護士がおこないます。

■ 1月30日ごろ、東葛地域の一部に、映画のチラシを新聞折り込みします。
  ※画像は、配布予定のチラシです。

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2011年2月12日(土)13時
「ショージとタカオ」上映会inまつど

松戸市民劇場にておまちしています。
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東葛総合法律事務所友の会









その日「タカオ」が観た映画は~布川事件、1967年8月28日

2011-01-16 19:54:04 | 日記
布川事件は1967年(昭和42年)8月に起きました。

被害者の遺体が発見されたのが8月30日。死亡推定時刻は8月28日の夜。
「ショージとタカオ」の桜井昌司と杉山卓男さんが逮捕されたのは事件発生から1ヶ月以上も経過した10月でした。

 杉山卓男さんは別件逮捕されたとき「1週間くらいで帰ってくるから」と仲間に話しましたが、その1週間が、なんと、29年になってしまったのです。


 四宮鉄男(しのみや・てつお)さんという映画制作者のサイト
愚鉄パラダイス」に、布川事件の起きた8月28日、「タカオ」こと杉山卓男さんは映画を見ていたという記述があります。
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 ところで、アリバイのことに話を戻そう。
 粗編集の記録映画の中で、当時のアリバイを辿るシーンがある。
 その日は、桜井さんも杉山さんも、たまたま東京に来ていて、桜井さんのお兄さんの下宿を訪ねるつもりだったらしい。別々の行動なのだが、偶然の一致なのだろうかたしか、西部新宿線の野方だか、新井だか、どこかだった。

 杉山さんは、そこで、今はもうなくなっているが、当時はあった映画館で映画を見ている。煙草を吸いたくなったが映画館では売ってなくて、もぎりのおばさんに断って煙草を買いに外に出ている。
 そして、煙草を手に入れてまた映画館に戻っている。
 その時、杉山さんは、これが東京でなくて、田舎だったら、アリバイは成立しているのに、と悔しそうに語っていたのが印象的だった。
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この「粗編集の記録映画」というのは「ショージとタカオ」で、「悔しそうに語っていた」のはこの映画の1シーン、ということでしょう。
2月12日の上映会で、みなさんにぜひこのシーンを見つけてほしいのですが、ところで、布川事件のサイトにある「最高裁決定(昭和49年)」に、杉山卓男さんが事件当日に行った映画館と、観た映画についての記述がありました。

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(2) 被告人杉山の供述

 28日は(中略)自分は午後5時ころ近くの銭湯へ行ったあと、午後6時ころまでパチンコ屋で遊び、一旦帰って洗濯をしたあと、西武新宿線新井薬師の薬師東映で『クレージーの黄金作戦』と北島三郎出演のやくざもの1本のほかもう1本を見た。青春をつっぱしれとかいうラグビーものだったと思う。途中午後8時か8時半ごろタバコを買いに館外へ出たが、雨が降っていた。映画か終って賢司の部屋に10時半か11時ごろ帰ったが、そのころ昌司が酔って帰ってきた。
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「新井薬師の薬師東映」とあります。
現在はマンションになっているようです。


ウィキペディアに「1967年の映画」が載っています。

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■1967年 配給収入ランキング

1. 黒部の太陽
2. 007は二度死ぬ
3. グラン・プリ
4. プロフェッショナル
5. 日本のいちばん長い日
6. クレージー黄金作戦
7. 風と共に去りぬ
8. 夕陽のガンマン
9. おしゃれ泥棒
10. クレージーの怪盗ジバコ

(参照:キネマ旬報DB/ Walkerplus.com)

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杉山卓男さんが観た、3本の映画のうち1本がありました。
当時はクレージーキャッツの映画が出せば大当たり、という頃だったのですね。

では、残る2本の映画は、何だったのでしょう。

上映会のあと、トークショーでこの話題に触れられないものかと、
管理者はちょっと期待しているのですが。


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2011年2月12日(土)13時
「ショージとタカオ」上映会inまつど
松戸市民劇場にておまちしています。
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東葛総合法律事務所友の会

取調べ可視化を訴える「ショージとタカオ」VS.可視化反対論者~その2

2011-01-14 21:43:33 | 日記
 今から3年前、産経新聞【正論】に、取調べ可視化に反対する記事が掲載されました。
 筆者の土本武司氏(当時、白鴎大学法科大学院院長、現在筑波大学名誉教授)は検察官出身の刑事法学者で、ウィキペディアには「マスコミに直接コメントすることの少ない検察にかわってスポークスマン的役割を果たしている。産経新聞「正論」など保守系論壇での寄稿が目立つ。また、死刑制度の維持や厳罰化などについても積極的に発言している」と紹介されています。

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【正論】白鴎大学法科大学院院長・土本武司 取り調べの可視化に疑問 ? MSN産経ニュース 2007.10.19 03:40

■録音・録画は自白を困難にする
≪犯罪を最もよく知る者≫

現行憲法下で全面改正された唯一の基本法規である刑事訴訟法はその制定(昭和23年)より約60年を経た。同法の目的は(1)真相の解明(2)刑罰法令の適用実現-にある(同法1条)。

流れは当然(1)が達成されて(2)が可能となる。(1)は実体的真実主義ともいうが、しばしば「疑わしきは罰せず」の原理と相まって「10人の真犯人を 逃すとも1人の無辜(むこ)を罰するな かれ」という消極的実体的真実主義が強調され、「刑事裁判官は検察官が合理的な疑いを容れない程度の立証をしたかど うかを判定し、それができない以上は無罪にすべきだ」と、裁判官には真実探求義務がないかのような議論すらなされている。

しかし、刑事裁判では、少なくとも理想としては「誤って無辜を1人たりとも処罰してはならない」とともに、「真犯人は1人も取り逃がしてはならない」という積極的実体的真実主義を是としなければならないのである。

その意味の真実を浮き彫りにする捜査上の最良策は「被疑者の取り調べ」(同法198条)である。「犯罪を最もよく知る者は犯人である」との自明の理に立脚して、捜査官は被疑者の取り調べに情熱を注ぐ。故意、目的犯の目的、共謀その他など犯罪の主観的要件において、犯人の供述が最良証拠である場合はなおさら である。その取り調べの結果は、取調官自らか立会官が供述調書の形で記録化している。それは逐語的でない半面、冗長な供述を整理して記載してあるため供述 内容を把握しやすい。

≪取調官と親和する心理≫
近時、取り調べの可視化の要請から、この取り調べ内容を 全部一律に録音・ 録画すべきであるとの主張が聞かれる。そして、取調官が被疑者を厳しく追及するという思い込みのもとで、検察や警察は“厳しい取り調べ”の実態が表面化するのを恐れて、録音・録画記録制度の導入に反対しているとみられている。

たしかに最近発生した鹿児島県志布志市の選挙買収事件や 富山県氷 見市の強姦等事件はいずれも冤罪(えんざい)で、自白獲得に向けた取り調べ方法に問題があった。取り調べ状況を可視化すれば、このような人権侵害的な取り 調べは行われていなかったであろう。しかし、このような例外的な事例を引き合いに出して論議すべきではない。

この問題はまず、欧米諸国と異なり、日本人被疑者の場合は、捜査官への自白が罪責感情を軽減させる機能を果たしていることを知るべきである。

犯人が被疑者としての取り調べを受けることになったとき、とくに身柄の拘束を受けたとき、その直後は新しい環境に緊張するが、それに慣れ、取調官と親和す る心理状態になれば、取調官との間に感情移入により“悔悟”の心情が芽生えて自白がなされるのである。したがってわが国における取り調べは、欧米でのそれ のように、取調官と被疑者の対立闘争関係ではない。

私の体験からしても、自白はむしろ取調官と被疑者が友好的関係になり、心のラポートがかかったとき、すなわち琴線に触れたとき生まれるものであり、対立抗争の関係にある間はそれがないため自白は生まれない。だから怒号とか理詰めの尋問は決して有効でない。

≪真相解明のための手段≫
第2に、取り調べの録音・録画を実施している諸外国では、取り調べ以外に真相解明のためのさまざまな捜査手段が用意されていることを知るべきである。例え ば「司法取引」や「刑事免責」は、重大事件の犯人を逸することのないよう機しているし、「通信傍受」「おとり捜査」「潜入捜査」なども、「取り調べ」方式に代わる真実発見方法としての機能を果たしている。真実発見も適正な手段によることが強調されるわが国では、それらの代替手段は好まれない。


また、録音・録画記録制度を採用した先進国であるイギリスですら、同制度には次のような問題があるとしている。(1)取り調べを形式的・画一的な手続きに してしまう(2)被取調者は将来その内容が一語一句すべて公開されることを覚悟しなければならず、自白がしづらくなる(3)何らかの理由で録音・録画がな されなかった場合、そのことをもって当該供述の証拠価値が低く見られてしまう-など。

現在わが国では東京地検をはじめ十数地検において、犯罪事実を立証する実質証拠としてではなく、任意性・信用性を立証する補助証拠として録音・録画を試行しているが、この試行の成果を見た上で方向性を探るのが順当であろう。
(つちもと たけし)

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土本氏の意見を、見出し順に整理して見出しとキーセンテンスを並べてみると、以下のようになります。

■録音・録画は自白を困難にする
≪犯罪を最もよく知る者≫「真犯人は1人も取り逃がしてはならない」
 ≪取調官と親和する心理≫「取調官と被疑者の対立闘争関係ではない」
 ≪真相解明のための手段≫「取り調べの録音・録画を実施している諸外国では、取り調べ以外に真相解明のためのさまざまな捜査手段が用意されている」

となります。
実は元検事などの出自はともかく、少なくともネット上で、取調べの可視化について明確に反対意見を表明している学者は、土本氏しか見当たりません。
(ご存じの方はコメントで教えてください)

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「ショージ」こと桜井昌司さんは、自身のブログ「獄外記」で、何度か土本氏のメディアでの発言に批判をしていますが、このうち最も新しい記事を引用します。

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2010.12.14

フジテレビを見ていたらば、大阪東署の脅迫取り調べに付いてのニュースを流していた。
そこに、またまた土本武司がコメントしていた。土本と似たり寄ったりの元検察官、若狭勝の出演付きだから、まあフジテレビでは仕方ないが、可視化に否定的な方向が主だ。
土本は、暴力団の取り調べを例に出して、ゆえに自白が得られなくなるから反対と言うもの。暴力団は背中に旗印を背負っているのだから、暴力団は例外にする手段がないわけではないのに、反対者は、何時もこれを言う。こういうのを馬鹿の一つ覚えと言うのかも知れないね。本当に付ける薬はない。

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何時か、この男とも対面しようが、その日が楽しみだねぇ。

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はいそうですね、(^.^) 管理者も、楽しみです。

1月27日の学習会でも取調べ可視化についてしっかり学習し、2月12日の上映会&トークショーでは「ショージとタカオ」お二人のご意見を聞きましょう。

松戸市民劇場を満員にして、取調べ全面可視化への世論作りに貢献したいものです。


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2011年2月12日(土)13時
「ショージとタカオ」上映会inまつど
松戸市民劇場にておまちしています。
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2・12松戸市で上映予定の「ショージとタカオ」がキネマ旬報で1位に

2011-01-13 09:19:27 | 日記
嬉しいニュースが飛び込んできました。

2011年2月12日に、千葉県松戸市で上映予定のドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」がキネマ旬報社が毎年明けに発表している「2010年 第84回キネマ旬報ベスト・テン」の選考において第1位になりました。


管理者は、昨日あんずさんからいただいたコメントでこのニュースを知りましたが、そこに井手洋子監督の喜びの声が。
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こんにちは。ショージとタカオ上映委員会のあんずです。
本日キネマ旬報ベスト・テンが発表され、文化映画部門で、井手洋子監督の「ショージとタカオ」第1位受賞しました。
井手監督は「14年間の長い取材とこの映画づくりを高く評価してもらえて最高に嬉しいです。一人でも多くの方にこの映画を観て欲しい」と喜びのコメント。3月新宿に続き、横浜でも劇場上映が決まりました。
松戸の上映会でも、ぜひ多くの方にご覧いただけるとうれしいです。
http://www.kinejun.com/kinejun/best10/tabid/64/Default.aspx
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「ショージ」こと桜井昌司さんは、さっそくご自身のブログ「獄外記」で受賞の感想を書いておられます。

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昨日、これを知らされてはいたが、実際に新聞で見てみると、へぇー、ふぅーん、って感じだ。(中略)判る人は少ないだろうが、あの作品、多くの人に見て貰い、これからの俺の闘いの力になれば有難い限りだ。
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「タカオ」こと杉山卓男さんからは管理者あてのメールで受賞の感想をいただきました。
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この映画は、私達本人の意志に反して、昨年のキネマ旬報賞に選ばれました。
昨年のNo.1だとの評価を受けました。日本の司法界がいかに腐っているか、冤罪とはいかに恐ろしいものか、をこの映画を通じて知っていただきたいと思います。

取調べの全面可視化、証拠開示、弁護人の取り調べ段階での立ち会いが、冤罪防止には不可欠です。
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「ショージとタカオ」お二人の「へぇー、ふぅーん、って感じ」「私達本人の意志に反して」という感想が面白いですね。意外だったということでしょう。


さあ、2月12日の上映会まであと1ヶ月を切りました。
チケットお問い合せの電話も相当数いただいているようです。
この受賞を機に私たち東葛総合法律事務所友の会も、上映会成功にむけてさらにがんばります。

チケットのお問い合せは、東葛総合法律事務所 電話047-367-1313 までどうぞ。

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2011年2月12日(土)13時
「ショージとタカオ」上映会inまつど
松戸市民劇場にておまちしています。
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東葛総合法律事務所友の会




取調べ可視化を訴える「ショージとタカオ」VS.可視化反対論者

2011-01-12 21:04:36 | 日記
東葛総合法律事務所友の会は、2月12日・ドキュメンタリー映画「ショージとタカオ」上映会&トークショーin松戸市民劇場 の開催にむけて準備と宣伝活動をおこなっています。

ネット上の情報から、取調べ可視化への反対論をアットランダムに紹介していきます。
今回は長文のため、ひとつだけ掲載しました。

 審議会議事録で発言している宗像紀夫氏について、ウィキペディアには「東京地検特捜部長を務めたが、検事退官後は、あらかじめ決められた検察のストーリーに合うようにゆがんだ捜査が行われていると特捜部批判を行っており、大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件については起こるべくして起きた事件と評した。また佐藤栄佐久の主任弁護人を務めている。」とあります。

 なお、この最後の部分に名前の出てくる「佐藤栄佐久」氏は、福島県ゼネコン汚職事件において、一審二審とも収賄罪で有罪判決をうけた前福島県知事(上告中)。
 このブログで昨年末にとりあげた「法と民主主義」2010年12月号(日本民主法律家協会 発行)に布川事件の記事と並んで、当の本人が「特捜検察は、知事と福島県民を『抹殺』した」という記事を寄稿しておられます。
特集「検察の実態と病理」第454号に興味のある方は日本民主法律家協会にお問い合せください。
日本民主法律家協会:〒160-0022 東京都新宿区新宿1丁目14番4号 AMビル2・3階 TEL03-5367-5430


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◆平成12年7月25日・第26回司法制度改革審議会議事録 より抜粋

宗像紀夫最高検察庁総務部長の発言:

【法務省(宗像最高検総務部長)】それから、御質問のありました可視化の問題ですけれども、先ほど来、自白偏重、自白中心主義ということをいろいろ言われますけれども、私ども検察の立場から考えますと、刑事事件の捜査の中で、真実解明のためには、被疑者の取調べというのは一番重要だと考えているところであります。犯罪事実について一番物を知っている可能性のある者からこれを聞くということは、捜査の常道であると考えておるところであります。

 勿論、検察官は被疑者の取調べのほかにも目撃者、被害者、参考人の取調べを並行して行いますし、押収した証拠物の分析も行う。これを全部突き合わせて、実際に犯罪を犯したかどうかということを見極める作業を日々行っているわけであります。

 問題は、被疑者の取調べなんですけれども、現実に一般の人がテレビなどの影響で思っているように、我々が被疑者に対して取調べをする場合には、自白せよ、自白せよといって迫るということじゃないわけです。真に犯罪を犯した者であれば、事実を述べて改心すると言いますか、そういう方向で進める。それから、事実犯していないというのであれば、それについて合理的な説明を求めて、その裏付けをこちらが取るという作業をするわけで、一方的に自白しろ、自白しろと言って調べをしているわけではないということを御理解いただきたいと思います。

 取調べなんですけれども、黙秘権を持っている被疑者に対して、取調べの最初に黙秘権を告知しなければいけないわけです。あなたは黙秘権がありますと。何も意思に反して述べる必要はありませんということを被疑者に言います。しかし、そうは言っても、疑われて、逮捕されている状況にある被疑者に対して、黙秘権はあるけれども、もし自分がやっているなら真相をしゃべってくれないかと、黙秘権を超えて真実を引き出すという努力を我々はするわけです。

 そういうふうにしないと、国民から我々に付託されている捜査権限を全うしたということは言えないんじゃないか。刑事事件の捜査の場合に、例えば被疑者がしゃべらなければ、実際に犯罪が明らかにならないというのはたくさんあるわけです。

 例えば単独犯による強盗殺人事件で目撃者がいないという場合に、一体どういう方法で金を取ったのか、物を取ったのか、全然分からんわけです。例えば殺人事件などでも遺体をどこに埋めたかというのは全然分からんわけです。これは自白によって、初めてそこを掘り起こして、実態が分かる。例えば贈収賄事件などでも、ある人からある人に公務員に金が流れたという外形的な事実はある。しかし、一体それがどういう理由の金なのかということは、被疑者の口を借りなければ出てこないわけです。そういう状況があって、難しい事件になればなるほど被疑者の取調べは重要になる。被疑者の取調べが悪だという考えは私は取りません。しかも、その自白を求めることは真相に迫るという、そういう感覚で私達はやっております。

 今、問題になっているのは、では、こういう場に弁護人が立ち会うとか、あるいは録音・録画の機械をセッティングして、調べを監視するというのは一体どうなんだということ、捜査手続が適正に行われているかどうかということを危惧する向きがあるということは私たちも十分理解しています。そういった、取調べに問題があった事例が過去にもありますので、それは謙虚に私たちもそういう必要性を否定するわけではないんですけれども、ただ、取調べが正しいかどうかを見るために、人が立ち会う、あるいは機械をセッティングするという直接的な方法を取る必要はないんではないか。そういう直接的な方法を取ることによって、真実が引き出せないという状況が私は必ず起こるだろうと思います。

 私も三十何年検事をやっていますけれども、例えば被疑者が重大な事実を自白するかしないかというときは、検察事務官と検事は一緒に仕事をしているわけですけれども、「検事、検察事務官をちょっとはずさせてくださいませんか。」と、こういうことを言う被疑者はたくさんいます。これはいろんな多くの検事が経験しているところであります。それから、自白しても、「悪いけれども、このことは付いている弁護士の先生には言わないでほしい。」と言う被疑者もいます。それから、自白しても、「私は共犯者よりも早く自白したという形になりたくない。だから、もっと遅めの形にしていただけませんか。」とか「今日は調書を取らないでほしい。」とか、こういう被疑者もいるわけです。

 いろんなそういう状況下で、言ってみれば、取調べというのは真剣勝負で一対一でやっているわけです。そこに第三者が後ろで聞いて、機械であれ何であれ、後ろで聞いたり、見たり、人が立ち会っているところで、自分が人を殺したとか、賄賂を受け取ったとかいう自白がなかなか引き出せるはずがないだろうと思います。人に見られているところでは、取り調べる側もしゃべる側も本音が出てくるということはないのではないか。私の体験から言いましても、手続を可視化するということは非常に大事なことだけれども、それはそういうような直接的な方法でなくて、弁護人の接見をしょっちゅうできる形に柔軟な運用をするとか、それから重要な事件については、被疑者の段階から弁護人が必ず付くとか、裁判所がお書きになっているような取調経過表といったものをつくって、それを義務付けるという形でもってできるんだろうと。日本の刑事司法の中で、検察官であれ誰であれ、真実を引き出す努力をする機関というのがなきゃいけないと私は思います。人が介入することなしにですね。こういうことなしに、弁護人が立ち会い、機械がセッティングされて、表面的なことで事件の捜査が進んでいくということでは、我々に付託された真実の発見ということはできないんじゃないかと思います。

 ということで、可視化の問題については、法務省のペーパーでも出ておりますような、別な形の方法でやっていただきたいなというふうに、これは私が検察の現場で長年やってきた一つの感想みたいなものとして申し上げました。

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長文の引用となりましたが、この後で紹介する予定の可視化反対論と、表現はことなっても同じトーンを感じることができる代表的発言です。ご一読いただければと思います。

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2011年2月12日(土)13時
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