老後資金のこと
自分が50歳代の半ば頃、急に老後が心配になり始めた。
たまたま、ネットで「老後にいくらかかるか」という記事を読んだのがきっかけだ。
それまで、老後なんて遠い先の出来事のように思っていた。
しかし、自分達の期待に反して2人の子供が自立せず大学を卒業してもさらに大学院や専門学校に行きたいと言いだしていた。
それで、いつまでも教育費が負担になっていた。
今にして思えば家内は自分と違っていつまでも家にいて欲しいと思っていたようだ。
そんな事情があり我々の貯金はほとんど無かった。
自分は一家の主として、将来の事を色々考えた結果、転職を決意して老後のために頑張って貯金することにした。
それ以来、何年もかかったが、ある程度の貯えは出来てきた。しかし、老後のための資金として十分なのかどうか全く分からない。
文芸春秋
そんなある日、新聞を読んでいて、雑誌文芸春秋の広告に目が留まった。
「老後資金1億円をどう作るか」という見出しである。
1億円??
老後資金に、そんなにいるのか、とビックリした。あわてて本屋に走り文芸春秋を買ってきた。
ツルツルした表紙にザラザラの紙、雑誌の手触りが昔のままだ。
若いころ(20代の前半)自分はこの月刊誌の熱烈な読者で毎号隅から隅まで目を通していた。
社会時になってからは、ゆっくりと目を通す時間も無くなりいつの間にか読まなくなってしまった。
最後に読んだのは30年くらい前かもしれない。
懐かしい気持ちが沸々と湧いてきて、昔のように新鮮な気分で雑誌を読み始めた。
記事の引用
以下、くだんの記事から、大事な部分を抜粋して引用します。
文芸春秋2017年10月号、276ページ、岩崎日出俊 「老後資金1億円をどう作るか」
3つの変数
第2の人生で必要なお金の計算に使う変数は主に3つしかありません。
自分と配偶者が何歳まで生きるか
毎月の支出はどれくらいあるか
毎月の収入はどれくらいあるか
この3つの数字がわかれば、ほぼ計算出来てしまうのです。
中略
そこでこの原稿では分かりやすく、夫婦ともに90歳まで生きると仮定し60歳から30年間に必要なお金を計算していきます。
総務省統計局が出している世帯主が60歳以上の家庭は月の平均支出が約25万6千円です。これが30年間続くとして総額9200万円となります。これに予備費として数百万円とすると「老後の暮らしに1億円はかかる」という言説は正しいのです。
中略
現在支給されている年金の平均額は、基礎年金は月約5万6千円、定年まで会社勤めした夫の老齢年金は約14万8千円で、夫婦2人で月20万4千円というのが現在の平均的な受給額です。
平均的な支出額が25万6千円ですから、これでは毎月5万円も不足することになります。
90歳までの年金の総受給額は7300万円なので年金だけでは2700万円も不足するというわけです。
引用終わり
感想
自分は記事の見出しを誤解していたようだ。
老後資金を1億円用意しなければいけません、という訳ではなく、夫婦2人で共に90歳まで生きるとして、ザクッと1億円必要とすれば、年金による充当分を引いて計算すると2700万円くらい不足するという内容であった。
それでも、夫婦2人で毎月の支出が25万円という事が前提である。
これまでの生活では、何だかんだと出費が多くて毎月の固定費が25万どころではない。
自分はもう65歳を過ぎているし、家内はあまり長生きは出来ない。90歳まで2人という事は難しいので2700万円も足らないという事にはならないだろう。
したがって、自分1人がいつまで生きるかを前提に老後のことを考えればよい。そう考えると随分気が楽になった。
そして3つの変数以外に、当たり前だが、誰でも介護という第4の変数を考えなければならないことに気がつく。
介護にいくらかかるか、というコスト計算は変数として考えておかなければならないのだ。
入院費用や在宅介護のこと
家内が癌を発症してもうじき6年になる。抗がん剤治療や何度もの入院、そして在宅へと我々の経験している第4の変数は相当な額に達している。
自分がラッキーだったのは、2人の息子のうち1人が自立しないまま家にいるので、何年にもわたる家内の闘病生活を支えてくれていることだ。おかげで自分はまだ仕事を続けられていて収入を確保できている。
そして在宅介護の当事者の立場になってみて本当に介護の大変さ、過酷さを痛感している。
実際問題として体力のことがある。
家内をベッドから車椅子に移したりベッドの上で横向きにしたりするとき(下半身が麻痺しているので一人で寝返りがうてない)、息子も自分も手を痛めたり腰を痛めたりするのだ。
自分は趣味で筋トレをしているので、家内の移動なんて軽いもんだと甘く考えていた。実際はベッド上で家内を横向きにするとき、左の手首を痛めてしまった。息子も肘が痛いとか言ってたり、自分も腰が痛かったりしている。
前述したように老後資金の貯えを崩して車いすに移乗するリフトとか車椅子固定装置のついた車などを導入できたのだが、それでもこんなに苦労するとは思ってもいなかった。
次は自分
自分は65歳という年齢で介護生活の大変さを経験できて良かったと思っている。
家内の次は自分なので、この経験を生かして、出来るだけ息子たちに依存しないように、どう老後の生活を組み立てていくか、それを今後の課題である。
自分のために住環境をどう整備していくか、とか息子たちとの距離をどうするか、規則的におこなう運動、そして健全な食生活など、色々考えて行こうと思っている。