道東を発見する旅 第3の人生

鈍足のサッカー選手、一瞬で置き去りにする、視野が狭い、

鈍足で世界の頂点に立ったサッカー選手

ワールドカップ開催まで1ヶ月を切りました。

普段、サッカーにはあまり興味のない方も日本代表選手の露出度が上がっている事をお気づきだと思います。ましてや、サッカーファンの場合、気持ちがどんどん高ぶっているのではないでしょうか。自分も、何となく心がザワついているようです。

このところ、どこの本屋に行っても、その一角にワールドカップのコーナーがあってサッカー選手の本が山積みされています。

今日は、その中から一つ、岡崎慎司選手の「鈍足バンザイ」を紹介します。先日、山積みの上から1冊取って購入しました。

興味をもったきっかけは、新聞の書評欄での絶賛です。今シーズン、サッカーのドイツリーグで大活躍した岡崎選手が大化けした理由は、サッカーに興味のない方にとっても面白いエピソードだと思います。

この選手の背景

まず岡崎選手について説明します。本田や香川と違い地味な雰囲気の選手です。Jリーグからドイツのサッカーリーグであるブンデスリーガに移籍して4シーズンを過ごしています。

最初のチーム、シュットガルトには3シーズン在籍しましたがパッとしませんでした。特に最後のシーズンはわずか1ゴールしかできずクビになりそうだったらしいです。

しかし、今シーズン、ドイツリーグの別のチーム、マインツに移籍して、突然ゴールを量産し始めたのです。シーズンが終わってみると、ドイツリーグで香川選手が持つ日本人累計ゴール数記録の13を抜き、何と15ゴールもゴールを奪ったのです。

なぜ、そんなに大化けしたのだろう?自分も興味があったし、誰でも不思議に感じるでしょう。そして、本を買ってびっくりしたのは、本人は足が遅いそうで、さらに華麗なテクニックも持っていないと書いています。

それでは、本題に入ります。

以下、「鈍足バンザイ」岡崎慎司 幻冬舎 から引用します。

裏をとる(本文145ページから引用)

僕は足が遅い。にもかかわらず、デフェンスの選手を置き去りにして、その背後に回ってパスを受けられるのには訳がある。

それは裏をとることを常に最優先に考えているからだ。

中略

まずディフェンス(相手の守備の選手)の手前でパスを受け、そこから(味方の選手に)パスを落とすとき、「味方に向かって、丁寧にパスを落とそう」なんて考えているのではダメだと思う。

パスを落とすのと同時に、ディフェンスラインの裏へ飛び出さないといけないからだ。優先順位としては自分が落とすパスの精度のことよりも、自分が裏へ飛び出すタイミングを測ることが先に来る。

引用終わり

ここが、この人の大活躍のキモです。言葉ではイメージがつかみにくいですので動画も紹介しておきます。

実際に動いてゴールを奪うシーンがYoutubeにアップされています。興味のある方はご覧ください。あえて文章にしてみます。

パスでボールが飛んでいくと、なぜかその先に岡崎選手が立っている。そしてつきまとっていたデフィエンダーがいつの間にか岡崎選手の後ろに隠れてしまっている。

そしてデフェンダーを嘲笑うかのように、岡崎の蹴ったボールが無情にゴールを揺らしている。そんな感じでしょうか。

動画には、サッカー解説者の説明がありますので、字幕を抜き出しておきます。

岡崎慎司 特集 進化の理由とは going3/22
http://www.youtube.com/watch?v=50sWJhGw3zE

ディフェンスを1瞬にして置き去りにして、フリーな時間で、短いタイミングで、味方からのボールを受けて入れているケースが増えている
ディフェンスを止めさせて、1瞬のスピードで前に出る、その動き出し(がすごい) 元々ディフェンスを外す動き出しはうまいが(今シーズンは)それがさらに洗練されてきた印象がある

引用終わり


感想

動画の中では、ディフェンダーとの駆け引きのうまさもあげています。ディフェンダーとの距離をわざと近づけたり、またタイミングをはずしたりして、動き出しの1瞬にすべてをかけている様子がよくわかります。

踏み出す一歩の素早さ、一瞬の動きだしでディフェンスを置き去りにする。

世界の一流選手なら誰でも出来そうな当たり前の話のように思えます。

しかし、その背後に岡崎選手が長年、感じてきた悩み、苦しみがあり、それを克服したプロセスがあるのです。

本の中に出てきますが、チームのエースがゴールを決められない場合、日本では「気にしすぎるな」と声をかけてくれます。

しかし、ドイツではチームメートからの冷たい視線を浴び、監督からは、「良いプレーなんてどうでもいいから、どんな形でもいいから、ゴールを決めろ」と言われてチームを追い出されそうになり、そこで初めて、自分の生き方を変えたそうです。

それが、「エゴイストになるしかない」でした。

次に、自分が考える、もっとも重要な核心の部分を紹介します。

視野が狭い(本文33ページから引用)

サッカーの世界では、よくそんな表現をする。僕は目の前のことしか見えない。ものすごく視野の狭い選手なのだ。これには、けっこう悩んでいた。まわりが見えなくなって、独りよがりのプレーをして反省する事も多かったし、今のままでは成長できないと忠告を受けたこともあった。

中略

あるとき、視野とピントを合わせる力がどのくらいなのかを測る人がいたので検査をしてもらうと・・・・

「君は目の前のものを見る能力がずば抜けているよ」

どうやら僕は2つのものを同時に捉える能力が極端に低いらしい。周囲の様子を視界に入れながら目の前のものを見ようとするとき、うまくピントを合わせられない。

その代わり、目の前のものを見つめる能力だけは、ずば抜けているそうだ。

心強いアドバイスだった。悩んでいた僕が、「目の前のものをくっきり見る能力はあるんや」と考えられるようになったからだ。

引用終わり

感想

長くなるので話を端折ります。3シーズン目が終わった時、このアドバイスをきっかけとして、「思い切ってゴールだけを見よう、エゴイストになってみよう」と決心したそうです。

それまでは視野の狭い事がコンプレックスで、色々なものを見ようとして失敗していたそうです。

だが、このアドバイスをきっかけとして、周りの様子を見ずに、ゴールだけを見ることに専念しようと思ったといいます。

そして、覚悟を決めたこの時期、国別対抗の国際試合、コンフェデレーションカップが行われました。そこで、シーズン31試合でわずか1ゴールしか決めることが出来なかった岡崎は、強豪イタリアとメキシコからそれぞれゴールを奪いました。

そのプレーをマインツの監督がテレビで見て、一刻も早く獲得しようということになったそうです。

「ゴールだけを見て、エゴイストになる」という決心で、人生感が大きく変わったようです。

そのエピソードを引用します(35ページから)

引用開始

3試合目のメキシコとの試合では、こんなやりとりがあった。前半、ペナルティエリア内にいた僕は、転びながら強引にシュートを放った。しかし、ボールはゴールの左にそれていった。

「なんで、パスを出さないんだ!」

近くにいた圭祐(本田選手)の声が聞こえた。普段ならば、「悪い悪い」と言ってしまう僕も、このときばかりは言葉を返した。

「オレは自分なりのちゃんとした考えがあって、やっているんだ」

圭祐はこちらの話にも耳をかたむけてくれる選手だから、それ以上、文句を言うことなどなかった。ただ、そこまで言うなら僕も結果を出さないといけなかった。そして、後半41分に僕はゴールを決める事が出来た。

中略

一つの決意(ゴールを見る、エゴイストになる)をもって戦った強豪のとの3試合で2つのゴールを決められたことは自信にもつながった。

中略

大会後に加わったマインツでは、2014年4月1日現在、11ゴールを決めている(注釈:今シーズンの得点は15点で自身のキャリアーハイだそうです)。

これもまた、周囲の状態を余裕を持ってみられるようになったからだ。

ゴールを見ることだけに集中する→多くのゴールを決める→そこから余裕が生まれる。

ゴールという幹をくっきり捉えることで、今度はゴール以外の枝葉部分も目に入るようになったのだ。

最近になって気づいたのは、そうした考え方は他にも応用出来るということ。余計なものをシャットアウト出来れば、不器用な人間でもそれなりの成果を手に出きるような気がしている。

引用終わり

まとめ

本田圭祐とのやりとりは、それまでの岡崎選手の立ち位置を示しているようです。

日本代表チームという調和を大事にする雰囲気の中で、自分はエゴイストを貫くという強い決意があったからこそ、強引な(多分?)リーダーである本田選手に対して、初めて反論し自分の決心を見せつけたという象徴的なエピソードだと思います。

岡崎のゴールのおかげで、日本代表はサッカーはいいプレーをするけど、イタリアやメキシコなどの強豪相手では全く歯が立たず点を取れないという情けない評価をくつがえす事が出来たのです。

そして、その覚悟があったからこそ、ブンデスリーガでの大活躍につながっていくのです。自分は、心一つで人生を変えることができた、というワクワクするようなエピソードだと感じました。

そして、本題である鈍足にもかかわらず一瞬でディフェンダーを置き去りにする能力は、実は「目の前のものを見るずば抜けた能力」が関係しているように思ったのです。

サッカーの試合を見ていると、いわゆるミッドフィルダーと呼ばれる中盤の選手が、遠くを見渡して、正確なパスを送っている姿を見かけます。

岡崎選手は、これが出来ないのでしょう。それまでは、デキないけど「それではサッカー選手として成長しない」と言われた事に心がとらわれたまま、もがき苦しんでいたのでしょう。


しかし、目の前のものを見る能力が優れていたからこそ、目の前に立っているゴールキーパー、そして厄介なディフェンダーの一瞬の細かな動きを把握できるのでしょう。それが出きるので、相手の裏をかけるのだと思います。

これは本能に近いような能力で、これまでも十分に発揮しながら世界のトップレベルまでたどり着いたのです。

しかし、その雲の上の世界では、今までの考え方では通じませんでした。このまま、日本に戻っていたかもしれない彼が、開き直ってゴールだけを見るようにして、エゴイストに徹しきることで、自分の本能のままに動けるようになった結果、世界の頂点をきわめたのです。


最後の一文にある、「余計なものをシャットアウトすることでそれなりの成果を手にすることが出来る」、これは非常に大事な提言だと思います。

今、自分も、エゴイストになろうとしています。自分なりに目標を設定しました。まだ、ここで詳細を明らかにするのは早すぎますが、とりあえず半年先を目指して頑張ります。

皆さん、ワールドカップでは、ぜひ岡崎選手のゴールに期待しましょう。

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