道東を発見する旅 第3の人生

論文リスト

申請書類

昨年の12月初め、以前の勤務先から非常勤講師になってほしいとの依頼があった。特に断る理由はないので引き受けることにした。

そのために必要な書類を書かないといけない。学長あての申請書類のファイルを貰った。ファイルには履歴書、業績リストがある。

履歴書はすぐ書けるのだが、業績リストは、過去に自分の名前が入った何十篇かの論文と100回近い学会発表を記入しなければならないのである。これが自分にとってとても面倒だ。

論文リストを廃棄

普通、研究者なら常時、論文リストを更新しつづけるものだ。自分の場合、割と昔に生物実験系の信ぴょう性に疑問を持ち、それ以来中途半端な研究活動しかしてこなかったという負い目がある。

だから、大学を辞める時、「もう研究活動に未練はない」とばかり持っていた業績関連の資料をすべて捨ててしまったのだ。

論文や学会発表リストをゼロから作り直さないといけない。これがどんなに大変な事なのか、なかなか理解してもらえないかもしれない。

ここまでが12月初めの話で、その後、すぐに嫁さんが入院し書類作成どころではない毎日が続いていた。その結果、気になりながらも書類作成は放置したままであった。

催促メール

10日ほど前、「年度末が近づきました。新年度から非常勤講師に就任してもらうためには、教授会の了承が必要で、遅くとも3月の初めには書類を提出しなければならないのですが・・・」という控えめながらも「厳しい現実に直面して下さい」というメールが届く。

それから困った、困ったとつぶやきながら、自分の足跡を探すリスト作成という発見の旅が始まった。

アメリカのデータベース

頼みの綱はアメリカのデータベースだ。NCBIという機関にアクセスすれば世界最大の生命科学関連のデータベースである”Pubmed”がある。そこで、自分の名前とキーワード(大学名とか共著者名)を入力すれば英語の論文をほとんど引っ張ってくることが出来る。これは問題なくスムーズに出来た。

ついでに遊び半分で「グーグルスカラー」で自分の名前を検索した。これは過去の論文の引用数を見ることが出来のである。

自分でもびっくりしたが、一番引用回数の多かった論文が、なんと632回、次が198回である。100回以上がこれ以外に3件ほどあった。10回から100回以下も結構あるのでびっくりした。

「ヘー」とか「ホー」と言いながら楽しくやっていたが、自分の心が大きな不安で吹き飛ばされそうな気分であった。その理由が和文のリストである。

和文の業績

さて、日本語の論文と学会発表である。こっちは真っ暗闇で全く光が見えない状態だ。どこでどう探せばいいのか見当もつかない。

いよいよ追い詰められたら大学の図書館に行き、自分の記憶を頼りに片っ端から雑誌のバックナンバーを調べたらいいのだが、それだとどのくらい時間がかかるか見当もつかない。

不安を抱えながら、金曜日の朝、コンピュータの画面に向かった。

日本人研究者の識別子

自分の名前と「科研」というキーワードでグーグル検索した。こうすれば過去の自分の研究費取得歴のデータベースにアクセスできるのだ。そこで自分が作成した成果報告書の論文リストをチェックしようと思っていた。

すると、グーグルの検索結果の最初に見慣れない言葉が並んでいる。

「研究者リゾルバー」、いったいこれは何なんだろう?狐につままれた思いで、リンクを開いてみた。

リンク先を開いていくと、突然、自分の名前の入った過去の抄録集のリストや日本語の中途半端な論文のリストがズラズラと85ばかり出てきた。驚きながらも、一つ一つを丹念に見ていくと、確かに自分の名前が入った抄録集や和文の論文リストである。

凄い!まったく新しい日本語の論文検索システムが出来ていたのだ。つい先日までの検索では影も形もなかったので完成したのは最近なのだろう。興味のある方は以下のサイトをご覧ください。

研究者リゾルバー(Researcher Name Resolver)とは、日本の研究者を対象とした研究者識別子であり、かつWeb上の研究者リソースへのリンキングを実現したサービスです。現在、198,861名の研究者が登録されています。 (2012年4月27日現在) http://rns.nii.ac.jp/html/help.html

同姓同名がいない

自分の場合、登録された研究者、19万人の一人であって、同姓同名がいないようだ。これが幸いして一発で自分の業績だけを検索する事ができた。

このシステムで嫁さんの名前を検索すると、悲しい事に同姓同名の研究者が日本全国で数人いることがわかる。だから検索結果は入り混じっているようで、その中の一部が嫁さんの業績である。

いずれにせよ、このデータベースで材料をそろえることが出来た。ところが、一難去ってまた一難である。また、次の問題が出てきた。

特殊なファイル

プリントしたリストをもとに一つずつ入力すればいいのだが、量が多すぎて面倒なので、ファイルとしてダウンロードした。

すると、このファイルがRISファイルと言って、タイトル、名前、発行年月日などにそれぞれタグがついている、特殊な形式のファイルである。

どうやって加工するか、これにも頭を悩ませた。結局、自分が持っているデータ分析ソフトで加工することにした。

さすがに自分の使い慣れた、そのソフトは万能で、数時間かかったが、全てのリストを、題名別、著者別に並べ替えることが出来た。

具体的には、左から5文字削って別のリストにするとか、行と列を交換したりと自分の可能なスキルを総動員して何とか資料を完成させた。そこから、エクセルに移し、最終的に最小限のコピペで入力できるようにした。

終わりに

今回は、自分にとってもかなりの難題であったのだが、ドキドキしながらやっていると、いつのまにか最後まで行き着いてしまっていた。正直に言えば夢の中にいたような気分だ。

さらに、おまけもついてきた。完成した書類を大学に持っていくときに、写真が無いのに気がついた。あわてて、スピード写真のボックスをさがしたのだが、それもまた色々あって、ほんの目と鼻の先にあったのであるが、詳細は割愛します。

さて、このところ、寒かったけど、だんだんと春の雰囲気になってきた。

2月もあと2日で終わる。去年の今頃から3月にかけて、離島で荷物をまとめながら、ひっこしの準備をしていた。

色んな物を島民に安く譲ってあげたことを想い出す。島民は、質素につつましく暮らしているので、自分のあげたモノをいつまでも大事にしてくれている事だろう。

さて、今年の3月は、どんな時間が過ぎていくのだろうか。ワクワクしながら3月を迎えます。

 

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