セミナー、自分の番
週一回、水曜日の朝7時45分から医局会がある。最初の30分くらいはセミナーの時間で、各科の中堅以上の医師が交代で自分の専門の話をすることになっている。
先週の水曜は自分の順番であった。色々考えて前半は「マダニの話」、後半に「指なし手袋の話」をした。
マダニの話をするかどうか迷ったのだが、ほとんどの人は知らないので、興味をもつ人がいるかもしれないという気持ちで画像でマダニの生態を説明し自分の経験したボレリアやリケッチアの話をした。
その日の午後、厚労省からマダニですでに発表している1名以外にも、さらに新型ウイルスで2名死亡していたという発表があったので、突然、旬の話題に躍り出てしまった。すごくタイムリーな話題を提供できたようだ。
厚労省の発表がセミナーの一日前であれば、もっと良かったのかもしれない。ただ、次の手袋の話題の方が今の自分にとって重要であるので、これで良かったのだろうと思う。
指なし手袋の理論
さて、「指なし手袋」の話である。
ある人は、凄く節約していて家でもほとんど暖房を入れないそうだ。寝るときも靴下を3枚はいて寝るそうだが、普通の手袋をはめても、寝ている間に脱いでしまうそうである。
その人に「指先のない手袋」を着用して寝てみるように言うと、次の日の朝、すごく良く眠れたといい、なぜ「指先のない手袋」だと、ポカポカした状態で温かいままよく眠れるのだろうと質問された。
セミナーでは、そこに焦点をしぼって自分なりの理論を考えて説明した。アマゾンで注文した凍傷、低体温症の洋書(1500円前後で安かった)に掲載されていた図を用いて理論を考えて話をまとめたのだ。
使用者の声
何度か書いたかもしれないけど、北海道の離島の老人の反応に加えて、ここの病院の医師、技師、秘書さんなど職員10人前後に指なし軍手をあげて、その感想をスライドにした。
良く眠れるようになった、足が寒くて靴下をはかないと眠れなかったが手袋をはめてから温かくなり靴下を脱いでも大丈夫になった。極端かもしれないが肌の調子が良くなったという声もあった。
みんな自分の実験台
セミナーの最後に、皆の前で病院幹部の3人の先生に手袋をあげた。さらに、女性用2ダース、男性用2ダースの指なし軍手(実費100円以下)を用意したので興味のある方は試してみてくれと言った。
結局、昨日の段階で4ダースすべて誰かが貰って行った。今シーズンの累計で6ダースから7ダースくらいはあげているので、総数70名から80前後の職員が自分の実験台になっている。
それらの方々が寝るときに、自分のあげたゴワゴワの指なし軍手をして寝ている姿を想像すると愉快になってくる。
皆、自分の話を聞いて興味をもって手袋をはめてくれているのだが、自分以外の人が「これいいよ、やってみたら」と勧めたらどうだったのだろうか?
島民や自分の言う事を信用してくれている人は素直に実践してくれるのだけど、最初から自分に対して批判的な人や物事に懐疑的な人は、きっと全く役に立たない、あの人の言う事はおかしいで終わりなのだろう。
それに関して参考になりそうな例を紹介します。
ヒンズースクワット
自分は、普段、ほとんどテレビを見ないのだが、先週の土曜の夜、世界・不思議はっけんを見ていたら、レギュラーの黒柳徹子が健康の秘訣を聞かれて「ジャイアント馬場から勧められたヒンズースクワットを寝る前に50回、毎日やっている」と言っていた。
Wikipedia 黒柳徹子によると、ジャイアント馬場は亡くなる2ヶ月前に「徹子の部屋」にゲスト出演し、その際にヒンズースクワットをすすめられたそうだ。その後、間もなく死んでしまったので、黒柳は「スクワットは馬場さんの遺言」と言っているという。
黒柳徹子さんは、79歳の今も熱心で前向きな人だ。その人が寝る前のスクワットが大事だと言って、いったい何人の人が今晩から寝る前にスクワットを始めるのだろうか。
素直さ
人間、最後はこれに尽きるのだと思う。自分が言ったから、信じて実行してくれて、実際に温かく眠れるようになった人がいるのは事実だが、どうやら100人いたら、素直な人というのは半分くらいしかいないのかもしれない。
ジャイアント馬場がヒンズースクワットを語るのと同じレベルで、医者の自分が新たな健康法を語ると、信じて実行してくれる人が多くなるのは当然だと思うが、懐疑的な人は最初から取り組もうとも思わないようだ。
自分の場合、普段から医者相手に講義をしているので、医者を納得させられれば患者さんに還元されることを知っている。
病気で困った人に対して、有効な方法になる可能性もあると思う。すでに何人かの先生は自分の提唱する方法を患者さんに勧めてみようかと言ってくれた。
これからどう展開していくのか分からない。小さなブームで終わる可能性が高いと思うし、結論めいた事は書けないけど、自分の仮説が徐々に浸透していっているので何となくうれしい。