少年トッパ

『レッドクリフ PartII 未来への最終決戦』の感想

 クライマックスの戦闘シーンは、すごい迫力。泣けるエピソードも盛り込まれているし、美男美女の姿も拝める。そんなわけで、娯楽映画としてはまったくもって申し分ない出来映えじゃないだろうか。でも、どうも描き方が公平じゃないように感じてしまった。
 ちなみに当方、『三国志』には全然詳しくない。なので、比較してどーのこーのという問題ではなく、あくまでも映画を観て受けた印象である、という前置きをした上で言わせていただく。

※お気に入り度→★★★★☆
※1作目の感想→http://gold.ap.teacup.com/toppa/1216.html
※公式サイト→http://redcliff.jp/index.html
 この映画、あまりにも「善と悪」「正と邪」が明確に分かれすぎじゃないだろうか。善玉チームを代表するトニー・レオン&金城武は清く正しく美しく、しかも思慮深くて聡明で機転も利く。対する悪玉チームのボス、曹操(チャン・フォンイー)は無慈悲で卑劣で横暴で、作戦の詰めも甘く、おまけに見た目も冴えない。で、結果的に善玉チームが勝つわけだけど、それって結局「勝者の側から描かれた史実」じゃないか、って思えちゃうのよ。勝った方が自分たちを美化して描く、というパターンね。いや、先に書いた通り、実際の『三国志』(というより、そもそもの史実)がどうだったのかは知らないけどさ。
 しかし、映画の中での善玉ってのは、えてして退屈な存在である。この映画でのトニー・レオン&金城武は見た目もカッコいいし絵になるのだが、皮肉なことに物語が進むにつれ、どんどん面白味に欠ける人物に見えてくる。そして、対照的に魅力を放ち始めるのが曹操だ。傲慢な暴君であるのだが、肝心なところで間が抜けていたり(ヘマした者の首を撥ねさせた直後に大慌て、とか)、妙にウブなところがあったり(リン・リーチン演じる小喬を前にして、腰の退けた対応ぶり)と、なんとも人間臭いのだ。持って回った言い方ばかりしている金城武や、「苦虫を噛み潰したような」という形容そのまんまのような表情を崩さないトニー・レオンよりも、遥かに好感が持てるし、親近感を感じてしまった。『フロスト×ニクソン』でのニクソンに通じるものがあるかも。イヤな奴だけど憎めないのだ。

 善と悪の差を際立たせすぎたことは疑問に思えたが、かといって決して「勝って万歳」という物語ではない。おびただしい数の死体が転がる光景を前に、トニー・レオンは「勝者はいない」と呟く。この台詞こそが作り手の想いを集約したものだろう。結局のところ、戦争に真の勝者は存在しないのだ。しかし、人の世では往々にして、平和は争いの末にしか訪れないものでもある。ああ、虚しい。

 ベタすぎると思いつつ泣けたのは、サッカーが得意な兵士(トン・ダーウェイ)と尚香(ヴィッキー・チャオ)とのエピソード。いかにも香港映画チックなベタさではあるが、そこがまたたまらなく魅力でもあるのだ。

 前編に引き続き、リン・リーチンは美しかった。次はどんな映画に出るんだろう。現代劇でラブコメなんてのもいいんじゃないだろうか。薄幸そうな役が似合いそうだけど、できれば楽しい映画を。

 それにしても、この映画、2本に分ける必要があったんだろうか。3時間半ぐらいで1本にしても良かったんじゃない? でもまあ、大ヒットして儲かってるみたいだから、結果オーライか。僕としては、これを2本にするなら『ウォッチメン』だって2部作にしてほしかったぞ。

 最後に、ひとつ不満を言わせて。どうして中村獅童が出てるの? ほら、アジアのスターたちが競演する映画の主要キャストの中で、唯一の日本人なわけじゃん。だったら、もっと日本を代表するような役者を選んでくれなきゃ。たとえば、阿部寛とか役所広司(最近イマイチだけど)とか香川照之とか。まあ、浅野や永瀬でもいいけどさ、獅童は違うでしょ。いや、そんなに嫌いでもないのよ。でも、日本代表にふさわしいとは思えないなぁ。朝青龍風に言えば「顔じゃない」ってこと。獅童ファンの方々にゃ悪いけど、僕はそう思いましたです。まあ、そもそもあの役を日本人を演じる必要があったのか、って気もするけど。
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