面白そうでしょ? 実際、面白いです。観ようかどうか迷っている方は今すぐ映画館へ行くべし。
というわけで、以下はネタバレ。これから観る予定の方は絶対に読まないように!
「真相」は二転三転し、一人ひとりの正体(ミキとの関係)が明かされるたびに、さっきまでの真相がひっくり返る。その辺の語り口が実に見事。ところどころ矛盾があるように思えるし、コミカルさを狙いすぎてスベっている箇所もなくはない。でも、それも許せる範囲内だ。ミキが実は前向きに生きようとしていたという事実が明らかになるまで、観客は時に爆笑しつつも、息を詰めて画面に見入ることになる。いやはや、ホントにアッパレ。ここでさっさとエンドロールを流せば、今年の日本映画の中でもトップ3に入る傑作となっただろう。
しかし、この映画、最後の10分ほどで、それまでの面白さを台無しにしてしまう。まずは天井に星空を映し出しながら、それぞれが回想に耽るシーン。これが少々長い上に、変に加工を施した安っぽい映像なのだ。でもまあ、それで終われば問題はないのだが、そのあと生前のミキが歌っている姿を画面で見せてしまうのである。そこに現れるミキは、明らかに「イタイ」女の子だ。まあ、売れっ子アイドルになれなかったわけだから美人なのは不自然かもしれないけど、もうちょっと可愛い子に演じさせてほしかった(演じた人には申し訳ないけど)。というか、歌はともかく、顔は出さない方が良かったんじゃない? すでに観客はそれぞれ思い思いの如月ミキ像みたいなものを心の中で描いていただろうから、それを壊すことはないじゃん。
しかしまあ、そこまではまだオッケー。ミキの歌に合わせて踊る5人の姿を楽しく眺めていると、少々の不満は吹き飛んでしまう。最大の問題は、ミキの歌が終わった直後。そう、宍戸錠が登場する場面だ。1年後に同じ場所に集まった5人は、そこで宍戸錠演じる司会者の口から、新たな事実を明かされようとするのである。
えええーーっ、って声を出したくなった。なんで、そこでひっくり返そうとする? ミキは自殺したのではなく、不注意から火事を起こした。すぐに外へ出れば助かったのに、大切なファンレターを持ち出そうとして逃げそびれてしまった。本当はこれからも芸能界で頑張っていくつもりだった。それでいいじゃん。なんで、わざわざ最後にぶち壊す?
もちろん、こうした「付け足し」はサスペンス映画やホラー映画では常套手段である。すべてが解決したと見せかけて、エンドロール終了後に「実はまだヤツらは生き残っていた」とか「本当の真相は突き止められていなかった」と観客に知らしめるのである。最後の最後まで楽しませてくれるわけだから、そういうサービス精神は悪くない。しかし、それも使い方次第だ。少なくとも、この『キサラギ』に関しては、まったくの蛇足だったとしか言いようがない。いや、蛇足どころか、それまでの面白さを台無しにしてしまったのだから、自分で自分の首を絞めるような愚行だった、と言っていいだろう。まったくもって残念である。
『キサラギ』公式サイト→http://kisaragi-movie.com/
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