あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

生き延びたとしても

2017-12-17 | 本(文庫本)
三浦しをんさんの『むかしのはなし』を読みました。
読書記録、もの凄く久しぶりに記します。本を読んでいなかったわけじゃないけど、かなりスローペースだったかな。ここのところ読書に集中できていなかった証拠ですね。

3か月後に隕石がぶつかって地球が滅亡。抽選で選ばれたわずかな人だけが脱出用ロケットに搭乗できると決まった。何らかの変化が起きたとき、人は誰かに何かを語り伝えたいと願う。昔話にインスパイアされた7つの中短編(連作)で、昔話となってしまった「地球」での出来事を懐かしむ。

隕石がぶつかって地球が消滅することが決まっていることを前提にした物語というと、以前読んだ伊坂幸太郎さんの『終末のフール』も似たような設定でした。あの作品と違うのは、地球脱出用のロケットがあって、少数の人だけがそれに乗れる、という不公平な設定があるというところです。
最後の「懐かしき川べりの町の物語せよ」は、ロケットに乗ることができた主人公が、昔話となった地球での素敵な思い出と後悔の気持ちを語る中編。地球を脱出して生き延びることができたとしても、きっと宇宙をさまようロケットの中は絶望的な空間でしかないのだろうなと想像できます。
だとしたら、地球と一緒に消滅してしまった方がすっと良かったのではないか? あたふたせずにその時を静かに迎えた方が良いのではないか?
『終末のフール』を読んだときに「希望」が見えたような人生が、私は美しいと思うのです。だから本作で登場するモモちゃんが言う「死ぬことは、生まれたときから決まってたじゃないか」が「本当に本当のこと」として胸に迫るのだと思います。
4番目の物語「入江は緑」のような、穏やかでいつもと変わらない時を過ごしながら、終末を迎えられるのなら、それがイチバン幸せな状態なのかも。海も川も木も緑もない暗い宇宙の中に放り出されるよりは、ずっと幸せ。
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