パラレルワールド

又井健太さんの『阿佐ヶ谷ラプソディ』を読みました。
JR中央線沿線の住人ですから、このタイトルが気にならないわけがありません。阿佐ヶ谷はほぼ毎日電車で通過している駅だし、たまに途中下車してダイヤ街で買い物をして帰ったりするし。さらに私、阿佐ヶ谷に4年ほど住んでいたことがあるのです。
このようなことから、読まずにはいられなくなった作品でした。

放浪の旅から帰国した蔵川楽観。帰国早々、深酒をして意識を失い、財布も何もかも失って阿佐ヶ谷の路上で目が覚める。無一文の楽観は、無料クーポン付のビラを手にし、その店「バー・ラプソディ」へ。そこには自称・天才発明家の老マスターがおり、楽観は「バー・ラプソディ」で住み込みで働くことになる。バーテンダーとなった楽観は、街の再開発に反対する個性的な常連客達と親しくなり、不動産業者やマルチ商法の団体に立ち向かう。

小説ではあるものの、阿佐ヶ谷の街の雰囲気とか、商店街の細部とか、実際にあるものも登場するので、元住民としてはリアルに思い浮かべながら読むことができました。そして登場人物たちと一緒に、街を歩いたりする感覚を持ちながら楽しむことができました。
確かに、物語の中に出てくるような、ちょっと不思議でノスタルジックなムードが、土日祝に快速電車が停まらない高円寺・阿佐ヶ谷・西荻窪にはあるんです。ここ数年「住みたい街」で吉祥寺がトップにランキングされていますが、沿線での長年の住人から言わせてもらえれば、より魅力的なのは「休日に快速電車が停まらない」ところなんですよね。

そして物語は後半に入ってより不思議な世界になって行きます。ほぼネタばれなことを言ってしまうと「パラレルワールド」に。そんなパラレルワールドが、何故かしっくりする「休日に快速電車が停まらない」街…。
ちょっとパールセンター、行って来る！