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(クリスティーンが手紙を読んでいると、舞台上手の階段からアンドレ、フィルマンがそれぞれの妻を伴って高笑いしながら現れる。シャニュイ(ラウル)も彼らと一緒に登場。)
ANDRÉ:(アンドレ)
A tour de force! There’s no other way to describe it! すばらしい! 他に言いようがない。
FIRMIN:(フィルマン)
What a relief! Not a single refund! ほっとした。1枚の払い戻しもない!
MME. FIRMIN:(マダム・フィルマン)
Greedy. あさましい。
ANDRÉ:(アンドレ、フィルマンに)
Richard, I think we've made quite a discovery in Miss Daaé. リチャード、クリスティーン・ダーエは掘り出し物だと思う。
※リチャードは英語読みの名前。登場人物はフランス人であるから、フランス語読みのリシャールにすべきだが、リチャードと聞こえるのは俳優(ガレス・スヌーク)が間違ったのだと思われる。
FIRMIN (フィルマン、ラウルにクリスティーンの居場所を示して)
※ハー・マジェスティー劇場では舞台上にクリスティーンの楽屋セットがあるが、記念公演では舞台上に化粧台があり、クリスティーンがそこにいる。
Here we are, Monsieur le Vicomte. こちらです、子爵。
RAOUL:(ラウル)
Gentlemen, if you wouldn't mind. This is one visit I should prefer to make unaccompanied.
皆さん。できれば私一人で彼女を尋ねたい。
(ラウルはクリスティーンへお祝いをするつもりなのか、手に一輪のバラを持っている)
ANDRÉ:(アンドレ)
As you wish, Monsieur. どうぞ、そのように。
FIRMIN:(フィルマン、ラウル以外の者に)
They appear to have met before. 彼ら(ラウルとクリスティーン)は以前会ったことがあるようだ。
(ラウルはクリスティーンの傍に行く)
RAOUL:(ラウル)
Christine Daaé, where is your scarf? クリスティーン・ダーエ、君のスカーフはどこかな。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Monsieur? どちら様ですか。
RAO UL:(ラウル)
You can't have lost it. After all the trouble I took. I was just fourteen and soaked to the skin...
失くしてはいないはず。あの時は大変だったよ。僕はちょうど14歳で、ずぶ濡れになったんだからね。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Because you had run into the sea to fetch my scarf. Oh, Raoul. So, it is you!
ということは、あなたが私のスカーフを取りに海に入って行ったわけね。あぁ、ラウル、あなたなのね。
RAOUL:(ラウル)
Christine. クリスティーン!(と言って彼はバラを渡す。)
※第3場のこの場面で、ラウルとクリステシーンが幼なじみで、時を隔てて再会したことが分かる。そして二人の共通の思い出が語られていく。
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"LITTLE LOTTE"
※クリスティーンの父が話していたロッテの物語の一節を二人で思い出している場面。
RAOUL:(ラウル)
'Little Lotte let her mind wander.' 「かわいいロッテはあれこれと空想した。」
CHRISTINE:(クリスティーン)
You remember that, too... あなたもそれを覚えているのね。
RAOUL:(ラウル)
'...little Lotte thought: Am I fonder of dolls...' 「…かわいいロッテは思った:私が好きなのは人形かしら…」
BOTH:(二人で)
'...or of goblins, of shoes... 「…それともお化け、靴…」
CHRISTINE:(クリスティーン)
'...or of riddles, of frocks...' 「それともなぞなぞ、フロック(コート)かしら」
RAOUL:(ラウル)
Those picnics in the attic... '...or of chocolates.' あの屋根裏でのピクニック…「それともチョコレート。」
※ピクニックとは本来食事をする場所以外で食事をすること。必ずしも屋外や芝生の上とは限らない。
CHRISTINE:(クリスティーン)
Father playing the violin. お父さんがヴァイオリンを弾いて
RAOUL:(ラウル)
As we read to each other dark stories of the North お互いに北の国の物語を読んだ。
CHRISTINE:(クリスティーン)
'No - what I love best, Lotte said, is when I'm asleep in my bed, and the Angel of Music sings songs in my head!'
「いいえ、私が一番好きなのは」とロッテが言った。「ベッドで寝ていると私の頭の中で音楽の天使が歌を歌う時なの。」
BOTH:(二人で)
'...the Angel of Music sings songs in my head!' 「…音楽の天使が私の頭の中で歌を歌うの。」
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(クリスティーンは父のことを語り始める。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
Father said 'When I'm in heaven, child, I will send the Angel of Music to you'. Well, father is dead, Raoul, and I have been visited by the Angel of Music.
お父さんは言ってたの、「私が天国人行ったなら、お前のところに音楽の天使を行かせよう。」ってね。そう、ラウル、お父さんは死んでしまって、音楽の天使が私のところに来ているの。
RAO UL:(ラウル)
No doubt of it - And now we'll go to supper! それは間違いない。では、今から食事に行こう。
※ラウルはクリスティーンの歌のうまさを認め、音楽の天使について語ろうとする彼女に生半可に合わせている。すぐにでも彼女と食事に出たいのである。
CHRISTINE:(クリスティーン)
No, Raoul, the Angel of Music is very strict. だめよ、ラウル、音楽の天使はとても厳しいの。
RAOUL:(ラウル)
I shan't keep you up late! 遅くならないようにするよ。
CHRISTINE:(クリスティーン)
No, Raoul... だめよ、ラウル。
RAOUL:(ラウル)
You must change. I must get my hat. Two minutes - Little Lotte.
君は変わらなければ。帽子を取って来るよ。2分待って、かわいいロッテ。
(と言ってラウルは足早に立ち去る。)
CHRISTINE:(クリスティーン)
Raoul! ラウル(呼びかけたが彼は戻らない) Things have changed, Raoul. いろいろ変わってしまったわ、ラウル。
(ここで突然、怪人の声が聞こえる)
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PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
(怪人はまずラウルに悪態をつく。クリスティーンが怪人に対して声をかけると、怪人は彼女を誘うように呼び掛ける。)
Insolent boy! This slave of fashion, basking in your glory! 無礼な奴だ! この気取り屋め、自惚れやがって!
Ignorant fool! This brave young suitor, sharing in my triumph! 無知な愚か者め! 私が勝ち取ったものに近づくなんて!
CHRISTINE:(クリスティーン)
Angel! I hear you! Speak - I listen… stay by my side, guide me! エンジェル!聞こえるわ。 話して、聞くから…傍にいて導いて!
Angel, my soul was weak- forgive me... enter at last, Master!
エンジェル、私の心は弱かった。許してください…先生!私のところに来てください。
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
Flattering child, you shall know me, see why in shadow I hide!
私に憧れを抱くお前は私を知り、なぜ私が陰に隠れているかわかるだろう。
Look at your face in the mirror - I am there inside! 鏡で自分の顔を見ろ。私はその中にいる。
(鏡の中に怪人の顔が現れる。)
CHRISTINE:(クリスティーン、鏡の中の怪人に向かって)
Angel of Music! Guide and guardian! Grant to me your glory!
音楽の天使! 指導者そして保護者!あなたの栄光を私にください。
Angel of Music! Hide no longer! Come to me, strange angel...
音楽の天使! 不思議な天使、もう隠れていないで、私の所に来てください。
PHANTOM'S VOICE:(怪人の声)
I am your Angel... Come to me: Angel of Music...
私はお前の天使だ。私のところに来なさい、音楽の天使
I am your Angel of Music… Come to me: Angel of Music...
私はお前の音楽の天使だ。私のところに来なさい、音楽の天使
(怪人の顔が怪人に替わりクリスティーンに手を差し延べる。クリスティーンは怪人に誘われるまま鏡の中に入って行き、二人は中に消える。)
※怪人は自分をクリスティーンの音楽の天使だと名乗り、同時に彼女を音楽の天使と呼んでいる。怪人にとって彼女は音楽を教える相手ばかりでなく、この後明らかになってくる彼自身の音楽を体現する天使として考えていることがここで示唆される。
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(戻ってきたラウルが、クリスティーンに贈ったバラが落ちているのを見つけるが、彼女はそこにいない。)
RAOUL:(ラウルが彼女の名を呼ぶ。)
Christine! クリスティーン!
(舞台が暗くなり第3場が終了。その後すぐに第4場になる。)
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