野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成24年3月30日 天覧山と多峯主山

2012年04月01日 | 奥武蔵へようこそ
(多峯主山から 中央の山が天覧山)

ようやく山歩きをしてきました。ショートコースでかつ山というよりは公園のような所ではありましたが、いくらかリフレッシュできたと思います。


今僕は飯能の街を歩いている。駅前がすっかり寂れてしまった所沢などとは異なり、まだいくらか駅前商店街は活気を残している。平日ということもあり、大通りは多くの人が行き交う。意外にもビルや商店が立ち並ぶ通りからは山並を望むことはできない。地形図を開くと東飯能駅と市立図書館を結ぶ通りを西に行けばわかりやすそうだ。古い商店の続く通りからは遠くに山が見えてきた。春霞の掛かる曇り空のせいか遠近感がつかみにくいが、結構遠くの山が見えているらしい。やがて目印となる図書館が近づいてきた。図書館の向こう側はかつて材木を筏に組み直した飯能河原が広がる。だが今日は河原へは向かわず、図書館前の新しい道路を北へ進む。地形図には反映されていない立派な道路を行くと黒木に覆われたこんもりとした小山が見えてきた。松の木が山頂付近に立っていることからするとおそらく天覧山であろう。幼稚園前を抜けるとさくら祭りの準備で賑やかな中央公園脇に出る。天覧山は一応桜の名所なのだ。

(新しい道路から天覧山を見上げる)

中央公園の向かいにある能仁寺の境内から天覧山への道が延びている。奥武蔵自然公園と書かれた立派な看板を横目に進むと向こうから中高年のグループがやって来た。皆山を歩くというよりも軽い散歩に行くというような出で立ちだ。そういう僕も上はフリースに風避けの雨具を着ているが、下はジーパンにスニーカーという格好だ。でもそんな格好で気軽に歩けるのがこの山の良さなのだ。墓地を避けるように簡易舗装された道が山頂へ向かって延びる。新緑にはまだ早いこの時期、舗装された道はどうしても無味乾燥なものとなってしまう。しかしそんな舗装路もGWを迎えれば赤いヤマツツジのトンネルとなるのだ。

(天覧山の入口 脇にあるコンビニは多数のフレーバーのソフトクリームで有名)


(立派な看板)


(山頂への道)


(2008年4月29日の様子)

舗装路が尽きると東屋とトイレの建つ広場に出る。現地の標識で天覧山中段と呼ばれる所だ。ここもまたヤマツツジの名所となっている。天覧山といえばかつては桜の名所であった。飯能駅から天覧山まで桜並木が続いていたという。しかし今桜並木は中央公園から飯能河原へと延びていて、半ば天覧山とは切り離されたような雰囲気がある。むしろ現在天覧山を彩るのは4月上旬に咲き始めるミツバツツジやGWに見頃となるヤマツツジなどのツツジ類である。広場には平日なのに子供連れが多い。考えてみればちょうど子供たちは春休みなのだな。

(天覧山中段)


(2008年4月29日の様子)

天覧山中段から山頂まではほんの少しの距離しかない。整備された山道を進むと道標が立つ。ここは十六羅漢・岩場と書かれたほうへ進むのが面白い。露出された岩壁が見えてくれば十六羅漢像だ。徳川綱吉快癒を機に能仁寺へ送られたものだという。岩壁を回りこんでいくと樹林に覆われたクライミング場となっている。展望台下の岩場に裸足で取り付いている小父さんには驚かされたが、クライミング場のほうは男性が一人練習しているだけであった。クライミング場を見送って石段を上がっていくとコンクリートで出来た展望台のある天覧山頂(197)に出る。平日にもかかわらず山頂は先ほど見かけた中高年グループや家族連れなどで賑やかだ。松の木の側には以前売店の小屋があったのだが、すっかり更地となっていた。歳とって営業を止めたのだろうか。展望台からは霞の掛かった空ということもあり、奥多摩辺りの山々はシルエットとなって浮かび上がっている。ここでも目立つのは二段重ねで盛り上がる大岳山だ。それに比べると御前山は随分と平凡に見える。石尾根から見ると御前山は実に格好良い山に見えたのだが、天覧山は少し東に寄り過ぎているのだろう。また空気が澄んでいれば、奥武蔵では珍しく富士山が顔を覗かせるのだが、今日は流石に見えない。

(十六羅漢)


(クライミング場となっている岩場)


(天覧山頂上の様子)


(2008年4月29日の様子)


(かつてはこんな小屋があった)




(天覧山のパノラマ)


(2009年9月20日の展望の様子 富士山がシルエットで見える)

軽く食事を取った後、多峯主山へ向かって出発。山頂標識左の木段を下っていく。下りすぎると谷津田に出てしまうので、最初に見えてくる東屋の前を通って目立たなく付けられた木段を下っていくと天覧山中段からの道に合流する。地形図だとちょうどこの辺りだろう。天覧山から多峯主山へは様々なルートが採れるが、天覧山中段から合流するこの尾根に乗るのが一番楽だと思う。雑木林の気分の良い尾根を進むと10人は座れるほどのベンチのある広場に出る。きっと遠足で使うことが多いのだろうね。広場の先は高麗峠からの道に合流し、多峯主山へと道は延びている。緩やかな鞍部に下ると天覧入の谷津田への道が分岐している。先ほどの東屋左の木段をそのまま下っても谷津田に出るが、ここの分岐は谷津田の少し奥に出られる。

(東屋 ここを右に行く 左の木段を下ると谷津田に出る)


(気分の良い尾根道)

鞍部からはやや傾斜がきつくなる。流石にここは少々汗をかかされる。地形図だと201のピークへ上がるように道が描かれているが、実際はこのピークを南に巻いている。多峯主山へ近づくにつれて杉・檜の植林に覆われるようになる。高麗駅(武蔵台分譲地)方面の分岐を見送ると見返り坂からの道に合流する。まずは山頂へ行こう。道標にしたがい石段を登っていく。それほど傾斜はきつくない。一旦左に折れると道が二手に分かれる。鎖が付けられた道は子供限定。大人はその脇の石段を登っていくことになる。山頂へ近づくと次々と下山してくる人と擦れ違う。ここも天覧山に負けず劣らず人気があるようだ。

(201のピークの巻き道を振り返る)


(山頂へ向かう石段)


(子供限定の鎖場)

頭上が明るくなってくると多峯主山(とうのすやま 270.8)の頂上に飛び出す。山頂の明るさについ嬉しくなって歩みが速くなってしまう。山頂は北側の一部を除き展望が開けている。来し方を振り返れば天覧山のこんもりとしたピークの向こうに飯能・入間の市街地が広がる。南側はここでも大岳山がよく目立つ。ただ枝が邪魔をしているところがあるので、展望を求めるなら冬枯れが良いだろう。そして西側は奥武蔵の山並が広がる。横手・永田台の分譲地の先は子ノ権現へと続く尾根だ。鉄塔にモヒカン頭のようなピークを見せるのは天覚山。そこから右に行った尖がったピークは大高山だろう。天覚山の左奥に薄く頭を見せるのは伊豆ヶ岳・古御岳だろうか。天覚山と大高山の間に見える目立つピークは武甲山。ずーっと右へ見ていてもあまり顕著なピークはないが、唯一ミニ大岳山のような形をした越上山だけがよく目立つ。直ぐ近くの日和田山はちょうど木に隠れてしまう位置にあるのだが、木の間から見えるところがある。三組ほどのグループが屯っている山頂はあまり居心地の良いものとはいえない。それでもしばらく居ついてしまうほど眺めは良い。

(日和田山も見える)


(山頂標識)




(南側のパノラマ)




(西側のパノラマ)

名残惜しいが明日も仕事なので下山することにした。南側の見晴らしから下ると武蔵御嶽神社を示す道標がある。武蔵御嶽神社へ下ればあの四里餅が買えるが、今日は午後から約束がある。已む無く飯能駅へ向かって下りることにする。木段交じりのジグザグを下るとお墓らしきものが見えてきた。黒田直邦候の墓だ。何度かこの山には来ているが、この墓を訪れたのは初めてかもしれない。墓から更に下ると山頂南側の巻き道に出る。巻き道から往路を戻ると雨乞池だ。雨乞池から先は緩やかな尾根道が続く。やがて道は長い下り坂となる。見返り坂と呼ばれる坂だ。多峯主山もそうであるが、ここも源義経の母常盤御前の伝説が残る所である。現地案内板によると顔振峠と似たような謂れがあるらしい。親子揃って似たようなエピソードを持つとは何とも不思議。

(黒田直邦の墓)


(雨乞池)


(見返り坂上部)


(見返り坂下部)

見返り坂を下りきると谷津田と呼ばれる湿地帯に出る。年々乾燥化が進んでいるとは聞くものの、能仁寺へと向かう道はかなりぬかるんでいる。天覧山への分岐を見送れば車道に出る。民家が立ち並び、天覧山の斜面には墓地がへばり付いている。墓地の脇が例のクライミング場となっている。車道を下っていくと意外にも小さな梅林がある。梅はみな満開である。この山旅で唯一と言ってもよい春を感じさせる瞬間であった。能仁寺脇へ出て、中央公園・市民会館脇の車道を下っていく。ここは飯能河原の手前まで桜並木が続く名所だ。下りついた先は国際興業バスが通る名栗街道である。道路を渡れば飯能河原へと下りることも出来るが、今日はパス。狭い歩道を進むと今朝見かけた図書館の前に出る。ここからは再びあの賑やかな街中を抜けていくことになる。山から俗世へ。この喧騒へ心を少しずつ慣らしていこうとしたとき、突然携帯電話が鳴った。呼び出しの電話だ。飯能駅から電車で直接東京へ行かなければならなくなった。山の余韻を味わう間も無く、あの煩わしい現実へと一気に引き戻されてしまったのだった。

(谷津田)


(梅)


(能仁寺)


(中央公園)


山歩きの入門編と言われる奥武蔵にあってなお入門編と呼ばれるほどの歩きやすい山です。ファミリー向けの山なので、トレランなどをすると顰蹙を買うかもしれません。中央公園・飯能河原の桜は例年4月の上旬から中旬が見頃。多峯主山のミツバツツジは見頃は4月の中旬から下旬。但しどちらも今年はやや遅れ気味のようです。天覧山のヤマツツジは例年はGW頃が見頃です。また能仁寺の境内でもGW頃ツツジ類が見頃となります。谷津田の周辺は5月の上旬にシャガの白い花が見られます。ヤマツツジと見頃が重なるので同時に楽しめます。


DATA:
飯能駅10:30~10:48能仁寺~10:56天覧山中段~11:05天覧山~11:21高麗峠分岐~11:43多峯主山~11:55黒田直邦候の墓
~11:57雨乞池~12:11谷津田~12:22能仁寺~12:45飯能駅

トイレ 天覧山中段 水洗で綺麗です

地形図 飯能
山と高原地図 奥武蔵・秩父 2010年度版 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今日の一曲 One For The Vin... | トップ | 今日の一曲 Winter Wine by ... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

奥武蔵へようこそ」カテゴリの最新記事