野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

山の思い出 過去編 2008年8月17日蓼科山

2016年08月16日 | 山の思い出 過去編
(蓼科山頂上の火口跡)

夏の過去編シリーズ最終回は蓼科山です。実は当時山から帰ってきたときは百名山のわりにつまらない山だなぁと思ったものですが、今では単に自分の歩き方が甘かっただけと反省しています。本文中にもあるように悔しさを残したままなので、いずれはまた歩いてみたいと思っています。そのときは女神湖に泊まってのんびりといきたいものです。なお記事は当時書いたものをそのまま載せています。


7月に大菩薩峠を訪れた際、18切符を購入した。もっと使うものかと思っていたが、一向に減る様子がない。夏が終われば無効となってしまうので、元を取るべく遠くの山に行くことにしたい。だが貧乏な自分には泊まりで山に行ける資金はない。日帰りで行ける楽そうな山を探していたら、霧ヶ峰と蓼科山が候補に上がった。どちらも茅野駅が基点なので天候を見てどちらかに登ることにした。

朝起きるとどうも天気が良くない。今年はずっと天候が安定しないのだ。そのためになかなか18切符が消費できない。今日はある程度天候が悪くても登る覚悟である。電車を乗り継ぎ茅野駅に着いたのは、地元の駅で電車に乗ってから4時間後であった。なるほど遠いところである。相変わらず空は雲が立ち込めているので、樹林帯を通過する蓼科山に登ることにした。こちらのほうがハードそうなので、一人で来なければなかなか登る機会もないだろうということもある。自宅に連絡を入れ、蓼科牧場行きのバスを待つ。バス乗り場の近くには案内所があり、ここでラウンドバス(※ 現在は蓼科牧場へは行きません)の一日券を購入する。

牧場行きのバスは早朝以外には10時近くに出発するものしかない。蓼科牧場に着くのは11時過ぎとなってしまうが、前泊ではないので致し方ない。バス停で待っていると登山客がぼつぼつと集まってくる。取っ付きにくそうな小父さんにどこまで行くのか話しかけられる。今日の予定を話すと小父さんは女神茶屋のある蓼科山登山口バス停から登るという。なかなか魅力的なプランではあるが、標高差がある上、帰りのバスが心配な行程でもある。そのような話をすると何故か不機嫌になってしまった。他にも中高年男性グループに話しかけられるが、皆頂上の小屋に泊まるのだという。確かに日帰りで登るのはきついし、勿体無く感じる。

バスに乗り込むと大方登山客であるが、軽装の観光客もいる。バスは茅野の市街地を抜けると八ヶ岳の裾野を走るようになる。別荘地に入ると観光客がどんどん乗り込んでくる。意外と利用客が多い。一旦山の上に向かいピラタスロープウェイ乗り場に着くと、登山姿の女性グループが降りる。北八方面に向かうのだろうか。しかし生憎ロープウェイ乗り場も曇っている。バスは山を下っていき、蓼科山登山口バス停に着くと先ほどの小父さんが降りる。あの人よりも早く山頂に着けるだろうか。バスは更に下り蓼科牧場へ向かう。牧場に近づくと売店が立ち並び賑やかな様子である。噴水の前で降ろされるが、何か自分の姿が場違いなように感じる。

白樺高原総合観光センターなる立派な建物の奥からゴンドラリフトが延びているのが見える。今日は出発が遅いので奮発してリフトに乗ることにする。観光センターの建物を抜けるとリフトの奥に蓼科山の頭が見える。リフトの下は草原となっており、冬場はスキーゲレンデに使われていることを窺わせる。チケットを買いリフト乗り場に行くと結構立派なゴンドラである。リフトというよりはもはやロープウェイの様相である。リフトに乗り込み振り返ると、霧ヶ峰が良く見える。雲は多いが霧ヶ峰には掛かっていない。ちょっと選択を誤ったかもしれない。リフトを降りるとまだ周囲は晴れている。だが霧ヶ峰方面を見ると大分曇ってきた。天候が心配である。自然園への道を分け、観光客の通らない蓼科山登山道へ向かう。

(ゴンドラリフト 蓼科山は雲に隠れている)


(ゴンドラリフトの中から)


(ゲレンデから女神湖を見下ろす)


(御泉水自然園に咲くヤナギラン)


(自然園内はロープ柵で囲ってある)

まずは七合目を目指す。笹が生い茂る落葉松の中の道はフラットで歩きやすい。少しずつ登ってはいるが特段きついという感じはない。途中で中高年グループに追いついたので、しばらくご一緒させてもらう。七合目は車道が通るところで沢山の車が停まっている。おそらくここから登る人が多いのだろう。正面に見える山は蓼科山かと思ったら、北にある前掛山であると教えられた。ここからは私のほうが足が速いとのことで先に登らせてもらう。登山口に立つ立派な鳥居を潜るとしばらくは土留めの木段が設置された道を進む。傾斜は緩いが石がゴロゴロしてやや歩き難い。周囲は笹が生い茂る以外は終始樹林帯の中である。変化に乏しい道であると言ってよいだろう。鳥居から15分ほどで馬返し。道標がある以外は特徴がない。意外にも馬返しからは広い道が続く。この辺りから頻繁に軽装の家族連れとすれ違う。軽装でも十分登れる山だということなのだろう。徐々に傾斜のきつくなる道を進んでいくと、だんだんと白い霧に巻かれるようになる。天気の悪さもさることながら標高も高くなってきているのだろう。馬返しから30分で天狗の露地。石がゴロゴロとして開けた場所だが周囲は真っ白。天気が良ければ最高の展望台なのだろう。

(フラットな道を行く)


(ツリガネニンジン)


(正面に見えるのは蓼科山…ではなく前掛山とのこと)


(七合目一の鳥居)


(アザミ)


(ハクサンフウロ?)


(笹の生い茂る樹林帯)


(馬返し付近)


(意外にも広い道が続く)


(ヤマハハコ)


(ここを右へ登ると天狗の露地)


(天狗の露地からの眺め…)

天狗の露地を過ぎると更に傾斜がきつくなり、雷を切って歩くようになる。この辺りはエアリアによるとザンゲ坂というらしい。なるほど懺悔したくなるような厳しい坂である。もうお昼時だがまだ登っている家族連れを追い越し歩き続けること15分、蓼科山荘の建つ将軍平に到着である。古びた山小屋だが人の姿は多い。何かお土産でもと思ったが小屋番さんが忙しそうだったので山頂へ向かうことにする。山頂への道はこれまでに比べるとかなり厳しい。大きな岩がゴロゴロとして足の置き場に苦労する。ステップが高く体力を奪われる。高い木が無くなり展望は良いのだろうが、今日は真っ白で遠望は全く利かない。鎖が掛かるところもあるが登る分には使う必要はない。ただ下山してくる人が多く、通過にどうしても時間が掛かる。ハイマツが生えてくるようになると風が吹き抜けるようになる。まだ暑い夏の盛りなのでこれは有難い。エアリアに書かれた通り30分で山頂に建つ蓼科山頂ヒュッテが見えてくる。何となく蓼科山荘のものよりも建物の外観は綺麗に見える。山頂ヒュッテまで上がると山頂まではまだもう少しある。ちょっと休憩すべくヒュッテに入ってみる。入口には天幕が張ってあってベンチが置いてある。何か注文できるようだがお土産を物色する。すると山バッジが売られている。ストラップはここのところよく買っているのでバッジを購入することにした。声を掛けるとご主人が出てくる。落ち着いた雰囲気の方で好感が持てる。さあ、山頂を目指そう。

(ザンゲ坂 この辺りはきつかった記憶がある)


(蓼科山荘の建つ将軍平)


(鎖が掛けられた露岩の登り)


(森林限界に出る)


(蓼科山頂ヒュッテが見えてきた)

山頂へは黄色いペンキでマーキングされ、それに従って登っていく。どこを伝っても行けそうだが落石の心配もある。登りきると広い岩の広場が広がっている。テニスコート4面分くらいはあるかもしれない。看板に従いまずは三角点を目指す。細長い標柱の立つところが蓼科山の三角点(2530.3)である。流石に人が多く、記念写真を頼むことができた。休憩のため岩の上に腰を下ろす。周囲は雲に覆われているが山頂ヒュッテまでは視通が利く。時折雲が切れて前掛山方面が見え隠れする。待っていてもこれ以上は天候は回復しないだろう。ちょっと山頂を散策してみる。かつては火口であったという山頂は中央がやや凹んでいる。大きな岩が堆積し、歩くにはその岩を踏んでいくしかない。中には動くものもあり、非常に歩きづらい。鳥居のある所でお賽銭を入れ、山名盤のあるところまで行ってみる。するとオバチャンが占拠していてなかなか退いてくれない。何時まで経っても動きそうな気配がないので下山することにする。

(蓼科山頂上)


(山頂ヒュッテを見下ろす)


(アキノキリンソウ?)


(山頂には祠も)


(雲に覆われたり晴れたりと落ち着かない天気)

雲が次々に湧き上がり視界が悪いので一旦山頂ヒュッテまで戻る。ここには女神茶屋方面への道標が確り立っている。ペンキで女神茶屋と書かれたマーキングもあるので迷うことはない。ペンキとオレンジのポールを辿って進み始めると一瞬雲が切れる。振り返ると二子山の姿がチラッと見える。今日はこれで十分だ。そのまま山頂を巻くように進むと傾斜が急になる。落石を起こさないようソロリソロリと下っていくと見覚えのある顔が見えてくる。蓼科山登山口バス停で降りた小父さんである。やはり女神茶屋からの道はきつかったらしい。私の顔に気付かずに黙々と登っていく。小父さんを見送り道標のあるところまで来ると約2450mと書かれている。恐怖を感じさせる露岩帯を過ぎるとようやく高山性の針葉樹林帯に入る。道は相変わらず岩がゴロゴロとした急斜面だが、樹林帯に入っただけで何故か安心する。道は上部が開けているので終始明るい。やがて枯れ木が立ち並ぶ斜面に差し掛かる。周囲を見渡すとこの一帯だけが枯れているようだ。こういう現象を縞枯れ現象というらしい。

(雲が湧きあがり見晴らしはきかない 残念)


(こんな感じでペイント類は多い)


(お花畑)


(お花畑脇を行く)


(お花畑のヤマハハコ)


(二子山方面が少し霽れる)


(恐怖を感じる急坂)


(縞枯れ現象)

針葉樹林帯を抜けると落葉松が生える森の中を進むようになる。大分薄暗くなってきたが、柔らかい黄緑色の葉が美しい。傾斜が緩みフラットな道を進む。やや登り返しがあり、前方が明るくなっている。再び下っていくと展望地となっている。エアリアによると天気が良ければ南八ヶ岳方面が見えたらしい。今日は麓が少し見えるだけである。道標には2120mと書かれている。まだ女神茶屋までは大分距離がある。ここからは再び樹林帯の急な下りとなる。滑る道に難儀しながら下っていると上から若者二人連れが下ってくる。立ち止まって道を譲るとあっという間に見えなくなってしまった。この辺りの山にはやはり健脚が揃っている。

(落葉松林の急坂)


(一旦傾斜が緩む)


(苔生す道を登り返す)


(南八ヶ岳方面が望めるというが…)


(フジバカマ?)


(ヤマホタルブクロ)

一旦傾斜が緩み、また急傾斜となると道の両側に笹が目立つようになってくる。雷を切りながら下ると所々笹で道が隠されてしまう。時々笹の下に大きな石があり、どうしても引っ掛けてしまう。怪我は無かったが歩き難い道だ。九十九折を下りきると道がフラットになる。もう女神茶屋は近い。依然笹の被る道を進むと車の音が聞こえてきた。樹林帯を抜けると女神茶屋の建物が見える。ここまで来ればほぼ下界である。さてあとはどのようにして駅に向かうかだが、当初の予定ではこのまま八子ヶ峰を下って白樺湖に出るというものであった。周囲は霧で薄暗いがちょっと八子ヶ峰まで行ってみよう。道路を渡り、女神茶屋の裏手の道を上がり始める。うーん、きつい。天気が良くて時間が早ければまだ行けそうだが、どうも気分が乗らない。今日はもう山はイイや。元来た道を戻りバスを待つ。ある意味敗退決定である。家族に連絡を入れ、白樺湖行きのバスに乗る。悔しさを残してしまった。もう一度天気の良い日に訪れよう。そう誓って帰路に着いた。


(笹の道 ここを下りきると女神茶屋)


(女神茶屋)

DATA:
茅野駅(アルピコバス)11:04蓼科牧場(ゴンドラリフト)11:19御泉水自然園入口~11:39七合目登山口~11:53馬返し~12:45将軍平~13:17蓼科山13:39~15:24蓼科山登山口(アルピコバス)東白樺湖(アルピコバス)茅野駅

地形図 蓼科山 蓼科 

当時はアルピコバスにより蓼科高原ラウンドバスが蓼科牧場まで運行されていましたが、現在は東白樺湖から千曲バスに乗り換えて女神湖まで(芦田行き)運行されています。また高速バスで蓼科牧場へ行くことも可能です。

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