野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

都心のシカと埼玉の廃集落

2020年06月11日 | tokoroの日常
先日、山に行った時の事。ボクは埼玉県飯能市の樫久保集落から南沢峠へと続く湯ノ花林道を歩いていた。地図に廃道と書かれるなど、生活道路たる峠道としてはすっかり廃れていたが、舗装路としては維持されていた。舗装路が途切れた後も砂利道が峠の頂上へと導いてくれる。歩きやすい傾斜の古の道を歩いていると獣の鳴き声が林間に響き渡った。あの声はおそらくシカだろう。あのシカは何を呼んでいるのだろうか?等と考えていると谷底を隔てた向かいの斜面から小石が崩れる音がする。音のする方を見ると若いシカがいる。ここは普段人が通らない道で、シカ達にとっては通り道となっていたのだろう。写真でも撮ろうかとスマホを傾けようとすると斜面を駆け上って視界から消えていった。

人里近い奥武蔵の山を歩いていると結構な頻度でシカを見かける。山歩きの記事でそれに言及しないのはそれがごくありふれたことであるからだ。奥武蔵の山を歩いていて、今まで一度もシカに出会ったことが無いという人もいるだろう。でもそれは人の行き来が多いルートしか歩いていないからだ。マイナールートを好んで歩くボクにとってシカとの遭遇は最早日常と言ってもいい。特にシカを探して歩いているという訳でもないのに、それだけシカとの遭遇率が高いということは高密度でシカが生息しているということだろう。またマイナールートを歩いていると廃集落を通ることが多い。廃屋すら残らない古い集落跡もあれば、白岩や武士平のような建物が残る集落跡もある。こうした集落跡を観察するとシカの糞がやたら多いことに気が付く。かつて人の住んでいた廃集落は日当たりの良い所が多い。そこに繁茂する草が格好の餌場になっているという可能性もある。いずれにせよシカが何か特別な保護を必要とする希少な動物であるかのような印象は全く持っていない。

都心に野生のシカが現れたと一時期騒動になったが、結局動物園に引き取られることになったという。動物の命を大切にすることは悪いことではない。ただ山の現状を考えると今後も都心に野生動物が下りてくることは増える一方ではないかと思う。飯能市の人口推移をみると、駅近などの利便性の高い地域では人口増減率は横ばいか増える傾向にある一方、山間地は毎年のように減少傾向にある。山から人が減れば廃集落の様子の観察からもわかるように野生動物の生息域は拡大していく。そして繁殖に都合の良い環境が醸成されていくのだ。開発によって生息域を奪われたから野生動物が人里に現れるのだ、等という寝言はもう止そう。生息域・生息数をともに拡大させてきているという現実を直視したうえで、野生動物との付き合い方をどうすべきか考える時期に来ているのだ。
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