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昼行灯(だった)トキの大雑把なひとりごと

クレヨンしんちゃんよりもユルく生きていた(当面過去系)私の備忘録と、大雑把なひとりごと。時々細かく語ることも。

伊坂作品と故郷の風景

2006-07-06 23:28:50 | 読書
10年ほど前、広島に行く用事があり、ついでに寄り道をした。翌日の新幹線で帰るところを、岡山で下車し、そこで一泊。翌朝、後楽園を見物し、また新幹線に乗って、西に逆戻り。降りたのは尾道。
大林宣彦監督作品を始め、様々な映画の舞台となった町だ。
短い滞在だったので、駆け足でこの坂の町を駆け巡った。おもに、映画のロケ地を見て回った。「転校生」の神社の階段、「ふたり」のトラック事故現場(トラックの出てきた道は実は民家の玄関先へ繋がる私道であり、大型車が飛び出して来るような状況には無かった)。高台からは「さびしんぼう」の船着場を見下ろした。
要するに、富田靖子と石田ひかりのファンだった。それだけのことだ。

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伊坂作品で故郷の風景が描写されているのをを目にすると、上記の体験を連想する。ただし、順序が逆だ。物語で見た景色を実際に見るのではなく、実際に見知っている景色が出てくる。小説だから、映画よりも場面の具体性に乏しい。にもかかわらず、おそらくその光景を他者よりもリアルに観念できている。ある種眩暈にも似た感覚。

『ラッシュライフ』では、河原崎と塚本が、泉ヶ岳の山腹、スキー場のゲレンデ用地から街を見下ろす描写がある。
5年ほど前、仕事で泉ヶ岳の北に広がる国有林の調査に同行した折、初夏の泉ヶ岳の山腹から、小説と同じように市街地を見下ろしたことがある。その下、泉ヶ岳に繋がる市道からも、東南に広がる街並みはよく見える。
実は、現在居を構えているのは、その道路と住宅地が接する辺り。だから、この光景は、今の私にとっては「地元」と言ってもいい。車で15分も移動すれば、河原崎の視線になれる。それだけ、馴染み深い。

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いま、文庫版「重力ピエロ」を読んでいる。仙台市内の落書きについて描写がある。作者と私は、同じ落書きを目にし、同じように憤っているのだろう。ところが、彼は、小説の中で落書きを消してみせる。私はというと、憤ることしか出来ない。

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「砂漠」が直木賞候補となった。大学生活を描いた作品と聞いている。基本的に「青春」と呼べる様な時期とは無縁の生活をしてきた自信があるが、もし、そういう時期があったとしたなら、大学生活を含む数年がそれに該当する。読めば、やはり、作品の筋とは異なる部分に反応してしまうことになるのだろう。小説を読むことにおいて、それが幸福な事か否かは、わからない。

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