乗ってきました。「能登」
大宮から上野まで。僅かな区間ですがまぁ雰囲気が重要なんですよ(キリッ
というわけで乗車記みたいなもの。
早朝の大宮駅。駅構内はまだ閑散としている。
人気のないコンコースにあるLEDに表示される「急行」と「寝台特急」の文字。
愛称名も交互に表示される。
この2つの列車が同時に表示されている光景が見れるのもあと僅かだ。
ホームに行くと既に入線を知らせるアナウンスがかかっていた。
やがて遠くに3灯のライトが見えてくる。
急行「能登」が入線してきた。
ホームの蛍光灯が489系のボンネット型の先頭車を照らす。
ドアが開く。
大宮から乗る人はごく僅かだ。
開いていたシートに腰掛ける。
乗客はまだ寝ている人が多かった。皆、リクライニングをいっぱいに倒して寝ている。
ガクッ、という揺れの後、急行「能登」は終着駅を目指し静かに走り出した。
ホームの端にはたくさんの三脚が立っていた。たくさんの人が489系の姿をカメラに収めている。
大宮駅を発車し、上野駅を目指して急行「能登」は加速していく。
さいたま新都心駅を通過し京浜東北線の線路と併走していく。
やがて真っ暗だった空が徐々に明るくなっていく。
日の出の時刻は着実に早まってきている。
出庫を待つ京浜東北線の電車。その横を急行「能登」は通過していく。
この日の「能登」は意外にも空いていた。3月のダイヤ改正で廃止されることが決まってから撮影する人は非常に増えたと聞く。
だが、列車自体は空席が目立っていた。
廃止が決定される前はさらに空いていたのであろう。これが夜行列車の現状なのだろうか。
荒川を越えて東京都に入る。赤羽駅では青色で統一されたコンテナを積んだトヨタ・ロングパス・エクスプレスとすれ違った。
尾久を通過したところで鉄道唱歌のチャイムが流れる。
車掌の放送が終点の上野駅に到着することを知らせる。
車掌の最後のアナウンスが心に残った。
「今日は急行能登号をご利用いただきましてありがとうございました。またのご利用をお待ちいたしております。」
急行「能登」は上野駅16番線に滑り込む。
金沢から約8時間かけて走ってきた列車はすべての乗客を降ろし尾久車両センターへと回送される。
ヘッドマークのところには雪が付着していた。
雪国からやってきた列車というのが一目でわかる。
ヘッドライトを点けて、回送の準備が整った。
上野駅でこのボンネット型の車両が定期的に見られるのもあと少しだ。
寝台特急「北陸」の到着を待ち、信号が青に変わる。
489系が静かに発車していく。
急行「能登」は尾久の車庫で待機した後、また夜遅くに上野駅へ向かう。
明るい時間にたっぷりと休んだ後、金沢へ向かうために働き出す。
静かな夜に走る姿は、どこか注目されない存在だったのかもしれない。
しかし、たくさんの乗客を乗せていた時期もあった。
注目を浴びていた時代もあったのだろうか。
ボンネット型の489系で運転される急行「能登」。
今、最後の注目を集めている。
どこか頼もしいこの3灯のライト。
このライトが北陸への路を照らすのもあと僅か。