【円・ドル・人民元】因縁の日米証券攻防

2007年03月15日 | 国際
 「やられたら、やり返すのが国際金融の常道」と霞が関官僚上がりの国際弁護士は言う。今回の日興コーディアルグループの上場維持の決定を聞いて、即座に思いだしたのが、20年以上も前の「幻の米証券大手買収劇」である。

 1986年10月、ワシントンの米連邦準備制度理事会(FRB)での公聴会。住友銀行(当時、三井住友銀行の前身)の峯岡弘専務(当時)がか細い日本語で、台本通り「住友には証券業務進出という野心は一切ない」と証言。身長2メートルを超すボルカー議長ら居並ぶFRB幹部は、小柄な日本人のグループを威圧するような口調で「I’m mystified(意味がわからない)」。

 結局、住銀はゴールドマン・サックスに議決権のない5億ドルを出資。資金繰りで苦境にあったゴールドマンは立ち直ったが、住銀はロンドンでのゴールドマンとの合弁による証券会社設立計画まで放棄させられ、証券業務進出への道を断たれた。当時、日本の金融界は85年9月のプラザ合意後の円高と株式時価発行増資ブームによるマネーパワーを武器に、米国の金融界に買収攻勢をかけようとしていた。住銀はその先駆けだった。だが、ワシントンは米国法をタテに日本の銀行の証券業を阻んだ。米国への出口をふさがれた日本の金融界は、以降、国内の株式投資、不動産融資に集中し、バブルを膨らませ、自滅した。

 当時のゴールドマン経営幹部の一人がシティグループ経営会議議長のロバート・ルービン氏であり、日興コーディアルグループへのTOB(株式公開買い付け)を仕掛け、子会社化をめざしてきた。

 東京証券取引所は事前予想を覆して、上場維持を決定したことで、シティグループはTOB価格の大幅引き上げなど、戦略の見直しを迫られることになった。シティグループは「上場維持を歓迎する」とのコメントを発表したが実は、大誤算だろう。

 2月28日付朝刊で他のメディアに先んじて「日興上場廃止」を「特報」した日本経済新聞は3月13日付の紙面で掲載した「報道の経緯」の中で、東証幹部や「行政当局筋」が上場廃止をあからさまにしていたと釈明している。シティグループも同じ見込みを持ち、1株1350円でのTOB成功の確信を抱いていた。上場廃止なら株式保有者に選択の余地は限られていたからである。だが、東証の基準では廃止に当たらないと、西室泰三東証社長は発表した。

 はしごを外されたのは、かつての住友銀行もそうだった。86年当時、住銀首脳陣はゴールドマンや大物ロビイストの情報から、戦略を立て、ゴールドマンとの当初合意通りの線での認可に確信を得ていた。

 ことはさらに因縁めく。97年6月、橋本龍太郎首相(当時)がニューヨークで、「私は何回か日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたい、という誘惑に駆られたことがある」と公言し、ニューヨーク市場を混乱に陥れた。当時の米財務長官がルービン氏であり、同氏や議会指導者など米側要人を震撼(しんかん)させた。

 この年の9月、アジア各国の経済を崩壊させつつあったアジア通貨危機対策で橋本内閣は、大蔵省(現財務省)の「アジア通貨基金」構想を閣議決定しかけたが、「官邸は直前になって大蔵省幹部にあきらめろと言ってきた」(元大蔵省幹部)。このとき、ルービン財務長官は米国が仕切る国際通貨基金(IMF)体制を損なう、という理由で猛反対。中国の同調を引き出し、日本は孤立し敗れた。

 いくら「日米同盟」をうたっても、金融だけは相手の言う通りにはならない。過去のいきさつからみれば、日興コーディアル・シティをめぐるドラマはまだまだ終わらないだろう。(編集委員 田村秀男)

(2007/03/14 07:52)
http://www.sankei.co.jp/keizai/kinyu/070314/kny070314000.htm




【円・ドル・人民元】「ウォール街」握った中国

米証券市場での海外勢の主役は日本から中国に移った。米財務省の統計によると、2006年1年間の対米純証券投資総額は中国1018億ドル、日本341億ドル。このうち米国債は中国377億ドルに対し、日本はわずかに20億ドルに終わった。

 「共産党が支配する中国政府の機関が米国債を大量に保有しているのを、不安に思いませんか」。このほど来日したポールソン米財務長官に直接聞いた。

 「心配ない。米国債市場の取引規模は巨大で、中国のだれが売ろうとも中国の保有額は1日の取引額程度でしかない」

 ニューヨーク・ウォール街で「ミスター・ボンド(債券)」と呼ばれる長官は動じない。米証券大手ゴールドマン・サックス会長時代、70回以上も訪中した「知中派」で北京との信頼関係に自信もある。

 米国債のプロが太鼓判を押しても、実際にはウォール街の証券アナリストを含め中国が持つ米国債を大量に売りに出せば、市場が大混乱に陥るとみる向きは多い。長官も「米国でもいろんなところからよく同じことを聞かれる」と懸念が広がっていることは認める。

 何しろ、中国の外貨準備は1兆ドルを超え、日本をしのいで世界一。そのうち3分の2以上を米国債などドル建て資産で運用している。1997年6月には橋本龍太郎首相(当時)がニューヨークで、「私は何回か日本政府が持っている財務省証券を大幅に売りたい、という誘惑に駆られたことがある」と公言し、ニューヨーク市場を騒然とさせ、当時のルービン財務長官などワシントンを慌てさせた。

 中国は毎月200億ドルのペースで外準を増やしているのに、相変わらず米国証券中心の運用で、ドル安になればなるほど評価損が発生する。温家宝首相は外準資産について「積極的に運用チャンネルと方法を探求し、拡大せよ」と指示。これを受けて、金人慶財政相は東京のあと北京にきたポールソン長官と会談、その2日後、莫大(ばくだい)な外貨資産を運用するための政府直属の専門投資会社「国家外貨投資公司(仮称)」の設立準備に入ったと発表した。

 中国の要人は橋本発言のような「勇み足」はしないし、「ドル離れ」のそぶりすらみせない。中国は対米を中心とする輸出で高成長を続けている。米経済と金融市場の安定は中国にとっても不可欠だ。中国は、米国の同意のもとに戦略的な外貨資産運用に乗り出すわけである。

 だが、見方によっては、ニューヨーク市場の安定のカギを中国に預けたのも同然である。年間で1兆ドル以上の外資流入がないと回らない米国市場、その最大のスポンサーになった中国では政治、軍事の総元締めの共産党がドル資産を取り仕切る。何らかの思惑からドル資産を「政治的武器」に使ったらどうなるか。

 もうひとつ、難点がある。上海株式バブルが再び膨張し、本格的に崩壊すると、日本で90年代に起きたようなバブル崩壊不況になる恐れがある。国有企業は債務超過、銀行は不良債権の山に埋もれる。

 緊急策として、北京は外貨準備の取り崩しに走るだろう。米国債を売却した資金で株式市場に介入したり、国有商業銀行に資本注入して不良債権を処理する。北京はすでに、米国債を売却しないまま、国有商業銀行の資本に組み入れる試みを始め、中国銀行と建設銀行には総額450億ドルを注入した。それはいわば、「見せガネ」だが、規模が大きくなるとそんな帳簿操作だけでは済まなくなる。これから株式の新規上場をめざす中国農業銀行だけでも1400億ドルの投入が必要とみられている。

 国際金融をめぐる米中間のバランスは維持しなければならないが、いかにも危うい。

 (編集委員 田村秀男)
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/finance/43747/




「上場廃止・維持の基準分からず」竹中氏が日興問題で指摘

 竹中平蔵慶応大学教授(前総務相)は14日、都内で開かれたシニア・ライフ・シンポジウムで講演し、「高齢化社会では資産などのストックをいかに活用するかが大事になる」と語り、運用の場である株式市場の重要性が高まると強調した。そのうえで東京証券取引所が日興コーディアルグループの上場を維持したことについて「上場廃止・維持の基準が本当によく分からない」と指摘し、市場の透明性向上を訴えた。
 このシンポジウムは日本経済新聞社、日本経済研究センター、高齢社会NGO連携協議会、米を中心とする高齢者団体のAARPが開催した。
 竹中教授は「少子高齢化で人口が減少する社会ではフローの所得はそれほど増えないため、証券投資などで1500兆円の個人金融資産の運用利回りを引き上げる必要がある」と発言。「トラブルの目立つ株式市場の改善は高齢化社会における非常に重要なインフラ整備」と述べ、さらに「会計制度の整備や企業統治の向上も必要」との認識を示した。(16:07)
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20070314AT3S1400V14032007.html




シティの対日戦略の核心、邦銀買収との見方が急浮上
2月26日10時23分配信 ロイター
 [東京 26日 ロイター] シティグループ<C.N>が日興コーディアルグループ<8603.T>への出資比率引き上げによって、傘下に入れる戦略を表面化させた。国内証券業界は、再編加速の契機になると身構えているが、シティ戦略の核心は、邦銀買収による日本での収益力拡大ではないかとの見方が急浮上している。シティは東証上場の検討に入ったことを表明したが、これが実現した場合、手持ちの株式を利用してメガバンクさえも買収できる資金的な裏づけができる。「日興は前菜に過ぎずメーンディッシュは銀行」というシナリオが現実味を帯びてきている。
 <金融庁とも蜜月>
 関係筋によると、シティグループのチャールズ・プリンスCEOは、このところほぼ4カ月に1度の割合で来日し、金融庁にはそのたびに姿を現している。五味広文長官とは毎回、1時間ほど意見交換しているという。
 グループ傘下のシティバンク在日支店は2004年、不正取引で同庁から営業認可取り消し処分を受け、国内4拠点を閉鎖。プライベート・バンキング部門から撤退した。現在も四半期に1度のペースで経営健全化計画を策定、同庁から履行状況のチェックを受けている。
 しかし、金融庁のシティに対する評価は当時と様変わりだ。プリンスCEOは「金融庁が行政処分を下した国内外の金融機関の中で、長官にもっとも頻繁に会っている経営トップ」と同庁関係者は明かす。「規制当局者の望むところを的確に把握し、応えるように努力している」(同庁幹部)のが評価されている理由だという。
 2006年通期のシティグループの最終利益は215億4000万ドル(約2兆5800億円)。シティは日本市場から上がる収益を公表していないが「収益に対する貢献度は1割にも達していない」(銀行アナリスト)のが現状だ。にもかかわらず、プリンスCEOが頻繁に来日を繰り返すのは「シティが今後、日本市場に対して強力に力を入れていくことの表れ」(大手行首脳)と受け止められている。
 <東証上場で、株式交換を利用した銀行買収も可能に>
 日本での柱は、「ディック」ブランドで事業を展開する消費者金融事業のCFJと、日興コーディアルグループと合弁で設立した日興シティーグループ証券の2本建てだ。
 しかし、CFJは改正貸金業法の成立でグレーゾーン金利が撤廃され、これまでのような高い収益性は望めなくなった。シティは06年第4四半期(10-12月期)にCFJのリストラ費用4000万ドルなどを計上し、日本での銀行も含むリテール部門の収益は悪化している。
 日興シティグループ証券も、日興サイドの不正会計問題が響き、継続中だった新規上場や公募増資案件などが「軒並みライバル証券会社に流れている状況」(メガバンク幹部)に陥った。「このままでは日本における2本柱を失いかねない危機感がシティにはある」と同社に近い関係者は明かす。
 こうした状況下で、シティの新たな収益の柱と見られているのが、日本での銀行業務だ。もともと日本市場への関心は高く「邦銀買収の可能性を探っている」(金融庁幹部)とも指摘され続けてきた。在日支店の不祥事がその芽を摘んだ格好となっていたが、金融庁との蜜月関係が構築されれば、もう1度、日本でのビジネス拡大に踏み出すことも可能となる。
 シティは19日、東京証券取引所への上場を検討すると表明。銀行界では「これが実現すれば、今後シティは邦銀買収の手段が増える」(大手行企画担当者)との受け止めが急速に広がった。
 昨年、みずほフィナンシャルグループ<8603.T>はニューヨーク証券取引所に上場を果たしたが「狙いの1つは米国の投資銀行の買収で、株式交換を使うことだ」(大手行企画担当者)という。時価総額が大きい企業の買収には、現金だけでは資金繰りが厳しくなるからだ。
 シティの場合も同じだ。同社の当期利益は2兆6000億円と巨額で、買収資金が不足している状況ではない。しかし、東証への上場は、シティの時価総額約32兆円が新たに買収資金に使えることを意味する。ある大手行幹部は「シティの邦銀に対する買収の手段がより柔軟になるのは間違いない」と危機感を募らせている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070226-00000584-reu-bus_all



日興:東証が上場維持決定 その経緯や報道の影響を検証
http://blog.goo.ne.jp/think_pod/e/9c0411adac994e44218bd179da047f70
シティバンク無法金融 米大手銀行が日本で犯した罪
http://blog.goo.ne.jp/think_pod/e/f8a82ed9f5d0452eee0f3846ee291c86






米国大使館、98年以降土地賃貸料を日本側に支払わず

 東京都港区赤坂の国有地にある米国大使館(敷地約1万3000平方メートル)の土地賃貸料を、米国側が1998年以降、日本側に支払っていないことが16日わかった。
 衆院外務委員会で照屋寛徳議員(社民)の質問に財務省などが答えた。米国が払っていた97年までの賃貸料も1平方メートルあたり年間200円弱で、麻生外相は「明らかに公平さを欠いている。きちんと調べて、(米国側と)交渉したい」と述べた。
 財務省理財局によると、83年から97年までの賃貸料は年額約250万円だった。日本側が98年分以降の賃貸料アップを米国側に求めたが、合意に至らず、米国側は同年以降、支払わなくなった。同局は「米国側と交渉中で、その中身は言えない」としている。
 照屋議員は「一等地にあるにもかかわらず、(97年までの賃貸料が)たった250万円で、それ以降払っていないのはとんでもないこと。(米国は)未納大国だ」と指摘した。
 この問題について、米国大使館のマイケル・ボイル報道官は「日本政府とは真剣に協議を続けており、時宜にかなった解決を得られることを期待している」とコメントしている。
 国有地にある大使館の賃貸料は、過去の経緯などを参考に、財務、外務両省が相手国と交渉して決めているという。千代田区一番町の英国大使館(敷地約3万5000平方メートル)の場合、98年以降は年額3500万円(1平方メートルあたり1000円)となっている。
 外務省によると、米国ワシントンにある日本大使館の土地は日本政府が所有しており、賃貸料を米側に払う必要はない。
(2007年3月16日21時3分??読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070316i213.htm





アメリカで「ゴールドマン・サックス」社員の法外な報酬に批判集まる

景気後退への懸念が出始めたアメリカで、「ゴールドマン・サックス」の待遇が話題になっている。
時価総額最大の投資銀行、ゴールドマン・サックス社員の暮らしぶりが、批判の矢面に立っている。
きっかけは、今週、株主が起こした訴訟で、ゴールドマンの幹部が不当に高額な報酬を受け取っていると訴えたもの。
四半期ごとに最高益を更新しているゴールドマンでは、社員の平均年収が7,600万円、CEO(最高経営責任者)は、2006年に63億円を受け取った。
社員が衣装代に700万円をつぎ込んだ例が、「成功の鍵は、ブランドスーツ」と、メディアでやゆされたこともあり、ゴールドマンの稼ぎの行方は、好奇の目にさらされている。
アナリストのリチャード・ボブ氏は「日本の金利上昇で、米国への資金流入が少なくなれば、ゴールドマンは減益」と語った。
裁判の行方だけでなく、日銀の利上げ状況までが、高級ブランドスーツに身を固め、ウォール街を闊歩(かっぽ)するゴールドマン社員のさっそうとした姿を変える要因として注目されている。
[25日7時52分更新]
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn/20070325/20070325-00000615-fnn-bus_all.html
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