クレーマー保護者の虚言によって、彼は史上最悪のいじめ教師に仕立てられた。
「早く死ね、自分で死ね!」
2003年6月、全国ではじめて「教師によるいじめ」と認定される事件が福岡で起こった。問題の小学校教師は、担当児童を自殺強要や暴力でPTSDによる長期入院に追い込んだとされ、「殺人教師」とまで報じられた。
だが後に、一連の事実は、児童両親によるでっちあげだったことが明らかになる──。
子供は善、教師は悪という単純な二元論的思考に陥り、550人もの大弁護団を結成した人権派弁護士、保護者の無理難題を拒否できない学校現場や教育委員会、すぐに騒いで教師を悪者にするマスコミ、被害者を救うヒロイズムに酔った精神科医......。
病める教育現場で偽善者たちが引き起こした、驚愕の冤罪劇!
抜粋
序 章
「史上最悪の殺人教師」
火付け役は朝日新聞である。平成15年6月27日の西部本社版に、「小4の母『曾祖父は米国人』 教諭、直後からいじめ」という大きな見出しが踊った。そのショッキングな内容に地元のあらゆるマスコミが後追い取材に走ったが、その時点ではまだ、単なるローカルニュースに留まっていた。
これを一気に全国区にのし上げたのは、同年10月9日号の「週刊文春」である。「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」。
目を剥くようなタイトルと教師の実名を挙げての報道に全国ネットのワイドショーが一斉に飛びつき、連日、報道合戦を繰り広げる騒ぎとなった。
一体、「史上最悪の殺人教師」と名指しされたのはいかなる教師か。教え子を取り殺す悪鬼のような人物だろうか。実際、彼がしでかしたとされることは、極悪非道、悪魔にも等しい所業である。
件の男性教諭は、平成15年5月当時、福岡市の公立小学校で教鞭を取っていた。
発端は家庭訪問である。彼は、受け持っていた9歳の男児の髪が赤みがかっていることに目をつけ、応対した母親に、「○○君は純粋ではないんですよね」と切り出した。そして、男児の曾祖父がアメリカ人(朝日新聞などの第一報では、「母親の曾祖父が米国人」)であることを聞き出すや、「○○君は血が混じっているんですね」と言い、延々とアメリカ批判を展開した。
あまりのことに母親が、「それは差別ですか。学校では差別はいけないと教えているのではないですか」と抗議すると、「私も人間ですから」と開き直り、「建て前上、差別はいけないことになっているが、ほとんどの人間は心の中で差別意識を持っていますよ」と言った。
そして、あろうことか、「日本は島国で純粋な血だったのに、だんだん外国人が入り穢れた血が混ざってきた。悲しいことに、今では純粋な日本人はずいぶん減っている」と、差別意識をむきだしにした"演説"を3時間もまくし立てた。
不幸なことに、別の部屋にいた男児は、教諭がいたダイニングルームの近くを通りかかり、教諭の発した「穢れた血」という言葉を聞いてしまう。男児は、「穢れた」という言葉の意味がわからず、翌日、小学校の図書室に行き辞書で調べた。
その意味を知った男児は子供心に衝撃を受け、母親にしきりと、「僕の血は汚いと? 皆と同じ赤いのに、何で汚いと?」「顕微鏡で見たらわかると? うつらんと?」と聞いてくるようになった。母親は、男児にそう聞かれる度にやりきれない思いにかられた。
そしてこの家庭訪問の翌日から、男児に対する教諭の、言語に絶する虐待が始まった。
~
福岡市教育委員会は、調査の結果、教諭が児童に対しいじめと虐待を行なっていたことを認め、全国初の「教師によるいじめ」を認定、8月22日、教諭に対し、停職6か月の懲戒処分を言い渡した。しかし、事件はこれで一件落着とはならなかった。
男児は、教諭によるひどい虐待の結果、体の震え、嘔吐、腹痛などが止まらなくなり、9月上旬から小学校を欠席せざるを得なくなった。直後に、非常に重度のPTSD(外傷後ストレス障害)と診断され、自殺の恐れもあったため、大学病院の精神科閉鎖病棟に長期入院する事態となる。
ここに至って男児の両親は、PTSDを理由に、教諭と福岡市を相手取って約1300万円(度重なる拡張申し立てにより、最終的には約5800万円)の損害賠償を求める民事訴訟を10月8日、福岡地裁に起こした。
訴訟の先頭に立ったのは、元裁判官で、福岡県弁護士会「子どもの権利委員会」委員長を務める大谷辰雄弁護士。前例のない児童虐待事件に持ち前の正義感をたぎらせた彼は、手紙やインターネットなどで全国の弁護士に呼びかけ、約550人もの大弁護団を結成。記者会見の席で、「男児にしたことを考えれば教師失格。教職を去るべきだ」と怒りを露にした。
12月5日。マスコミ注視の中で第1回口頭弁論が行なわれた。以後、法廷の場で、教師による児童虐待という前代未聞の事件の全貌が暴かれ、この「殺人教師」に正義の鉄槌が下されるはず、だったのである。
ところが裁判は、大方の予想に反して、回を重ねるごとに思いもよらない展開を辿り、驚愕の事実が次々と明らかになっていった。
Amazon.co.jp: でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相: 本: 福田 ますみ
クレーマー保護者の恐怖
福田ますみ『でっちあげ?福岡「殺人教師」事件の真相?』
福田ますみ
平成15年6月の朝日新聞のスクープをきっかけに全国的なニュースにまで発展した「いじめ教師事件」というのをご存じだろうか。福岡市の公立小学校の男性教諭が、アメリカ人の曾祖父を持つ9歳の男児に対し、人種差別に基づく凄惨な虐待やいじめを繰り返していたとされる事件である。
〈『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』〉
「週刊文春」は目を剥くようなタイトルと教師の実名まで曝して、その行状を書き立てた。
発端は家庭訪問である。担任児童の母親から、家系にアメリカ人の尊属がいることを聞き出した教諭は、「外国人の穢れた血が混ざった」などと、差別意識をむきだしにしたアメリカ批判をまくし立てた。
この家庭訪問の翌日から、言語に絶する虐待が始まる。下校前、この児童にだけ10秒で荷物を片づけるよう命じ、できないと、両耳を引っ張る「ミッキーマウス」、鼻をつまんで振り回す「ピノキオ」など、5つの刑の中から一つを児童に選ばせて体罰を行なっていた。このため児童は、耳がちぎれて化膿したり、鼻から大量の出血をするなどした。
さらに教諭は、「穢れた血をうらめ」「アメリカ人は頭が悪い」などと、差別的な暴言を男児に投げつけていた。その上あろうことか、「血の穢れている人間は生きている価値がない。早く死ね」と自殺を強要し、男児が自殺を図ったこともわかった。
保護者の抗議でようやく事実を知った学校側は教諭を担任から外し、教育委員会は全国初の「教師によるいじめ」と認定、停職6か月の懲戒処分に処した。しかし全ては遅すぎた。男児は、教諭の虐待によって重いPTSDを発症、精神病院に約半年間入院する事態となったからだ。
そのため両親は、教諭と福岡市に損害賠償を求め提訴。なんと550人にも及ぶ大弁護団が結成され、法廷の場で、教師による児童虐待という前代未聞の事件の真相が暴かれる??はずだった。
ところが裁判は、思いもよらない展開を辿る。原告側の主張にさまざまな疑惑が浮上したからである。
たとえば、教諭の人種差別の原因とされた男児の“アメリカ人の血”について、被告代理人らが調べたところ、男児の家系にアメリカ人らしき人物は見当たらなかった。また、男児は重いPTSDと診断されたはずなのに、入院中にその症状は全く現れないのだ。これは一体どういうことか。
児童両親の矛盾だらけの言動が次々に明らかになり、ついには、事件自体が原告らのでっちあげである可能性が高まっていった。
ところが、ここに至るまで、学校も、教育委員会も、原告側の弁護士も、男児をPTSDと診断した精神科医も、そしてマスコミも、保護者の話を鵜呑みにして「殺人教師を葬り去れ」と大合唱していたのである。
おかげで教諭は、「事実無根だ」と必死に訴えたにもかかわらず、こうした偽善者たちによって、真綿で首を締められるように「殺人教師」に仕立て上げられていった。
注目の判決は、この事件の顛末を克明に追った本書でぜひ確かめて頂きたい。
今、学校に理不尽な要求を突きつける「困った保護者」が問題になっているが、この事件の両親などは、その究極の例だろう。
お読み頂いた後は、保護者の無理難題に対して、教師や学校現場がいかに無力であるか、くわえてマスコミ報道のいい加減さ、PTSDが損害賠償請求の手段と化している実態などを知って、愕然とされるのではないだろうか。
件の教師に降りかかった災難は、決して稀有な例ではない。子供が今以上に“聖域化”し、教師がますます物を言えなくなる状況が続けば、容易に第2、第3の同様な事件が起こっても何ら不思議はないからだ。
(ふくだ・ますみ ライター)
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/303671.html
2007/01/19
「でっちあげ」はこうして生まれた
1月18日(木)JAL1035便で札幌に着いたときには気温が零下4℃だった。たまたま夕張に住む人から話を聞いた。みのもんたさん、鈴木宗男さん、松山千春さんが最近も訪れた。なかでも顰蹙を買ったのは某テレビ局朝番組の取材だという。取材された人たちが不快感を語っている。仕組まれた構図に住民を当てはめていく。それだけではない。「ほかのテレビ局には答えないでください」などとも言われたそうだ。ふーん、そんなこともあるだろうなと心中で思いながら、機内で読んでいた本のことが蘇ってきた。福田ますみさんの『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)だ。あれはもう4年も前のこと。福岡市の小学校教師がアメリカ人を曽祖父とする教え子に対して「血が穢れている」と言ったことをきっかけにいじめを行ったという事件だ。教師は停職6か月となり、担任も外される。はじめは朝日新聞西部本社版や西日本新聞が報じ、さらには「週刊文春」が記事にしたことで全国問題化した。テレビ各局も「教師によるはじめてのいじめ」認定を大々的に報じていく。その流れで行われた報道では、教師が子供に自殺を求めるというものまであった。「被害者」の起こした民事訴訟には何と500人を超える弁護士が名前を連ねた。わたしもそうした情報を根拠にして「本当なら」と条件を付けながらも教師を糾弾した。ところが事件はまさに「でっちあげ」だった。福田さんは、なぜ事件が作り上げられていったかを具体的に明らかにしていく。マスコミ関係者だけでなく、広く読まれるべき著作だ。
異常な虚言癖と攻撃性のある両親は、問題行動のあったわが子を「守る」ため、学校に抗議をはじめる。表面化してはならないと判断した校長、教頭、そして教育委員会は、事実を正確に把握することなく、両親の言い分をそのまま鵜呑みにしていく。「それは違う」と思っていた教師も、謝ることで問題が沈静化すればいいと思い、不本意ながら情況を受け入れていく。するとさらに両親が虚偽を作り上げて事態はさらに大きくなっていった。「週刊文春」のタイトルは「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『最悪教師』」というセンセーショナルなものだった。テレビで最初に教師の言い分を報じたのは「ザ・ワイド」。さらに「スーパーモーニング」もあとを追う。ところが「週刊文春」はこの報道を糾弾した。「史上最悪の『殺人教師』を擁護した史上最悪のテレビ局」という記事だ。福田さんの本には、こうした記事を書いた記者の実名も明らかにされている。問題はなぜこうした「でっちあげ」が成立したかということである。それは「教育という聖域」では、親の言い分が容易に絶対的な「正義」となりうるからだ。それを助長する学校管理職のことなかれ主義も問題だ。両者の言い分を対等に聞くことがあれば、こうした報道被害も生まれなかっただろう。取材の基本の喪失。意図した構図に「事実」を当てはめていく「見込み取材」がこうした誤報を生んだ。ひどいことだ。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2007/01/post_3fe7.html
軍事評論家=佐藤守のブログ日記 - 虚報・その3
さて、虚報の続きだが、コメンテーターの中に、元三沢基地勤務の隊員がいて当時のことを「補足」してくれたが、自衛隊関係の報道に如何に虚報が多いかを知っている隊員達は、その延長線上で「政治」「経済」「文化」面の記事を読み、自衛隊と同程度の「誤報」が混ざっていることを感じ取っている。少なくとも私はそうしている。
たとえばその昔、原子力関係の意図的とも言うべき虚報で、我が国の原子力研究が大きく後退したことがあった。コメントにもあったが、茨城の原子炉で「放射線漏れ」が発生したとき、A者の記者は「放射能漏れ」と書いて国民を誤った方向に誘導した。その時の責任者であった「遮蔽室長」に聞いたところ、腕時計の夜光塗料程度の放射“線”漏れに過ぎず、握り飯を当てて遮蔽できる程度のものだったのだが、記者は意図的か不勉強からか“放射能”と書き、広島・長崎を持ち出したから国民は恐怖に走り、政府関係者はしり込みして、原子炉の研究は大幅に遅れる結果になった、と悔やんでいた。あの時の新聞記者は、むしろ、その程度の微量な「放射線漏れ」を探知したシステムを評価すべきだったのに・・・と彼は言った。 その後、原子力船「むつ」に飛び火し、ついに「むつ」は一度も全うな研究航海をすることなく、青森県の陸奥湾を追い出され、県内各所をたらいまわしにされて、莫大な「ばら撒き行政」に“貢献”し続けただけで廃船となった。
今、テレ朝が朝のワイドショーで、行政の不始末を鋭く追及しているが、「原子力船むつ」の実態は、それと比較にならないほどの垂れ流しであった。下北半島を廻って見るが良い。巨大な埠頭、港湾施設が廃屋のように林立している筈である。
それと同時に、地上波テレビ局には「行政の不始末」のみならず、自分達「メディアの虚報」がもたらした莫大な国家の損失を追及して欲しいと思っている。
航空自衛隊も、創設以来「虚報」には泣かされっぱなしであった。現場で実情を知る我々若手幹部は、切歯扼腕したものだったが、当時の「お偉いさん方」の誰一人として「反論」する方はいなかった。
そこで広報室長に任命された私は、たまたま整備不良が原因で墜落し、520名もの犠牲者を出したJALー123便事故の際、救助活動をした陸上自衛隊と航空自衛隊員に対して「言われなき非難」が浴びせられたので、防衛庁始まって以来の「官姓名を名乗った反論」をしたのであった。
“虚報”はその都度徹底的に反論しなければ、“南京大虐殺”や“100人斬り”、そして今回の“従軍慰安婦”問題のように、一人歩きして「歴史教科書入り」する事態になるのである。
虚報ほど国益に重大な損害を与えるものはない。国民一人ひとりが、「我関せず」であっていいはずはないと思う所以である。
http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20070307/1173233230
「早く死ね、自分で死ね!」
2003年6月、全国ではじめて「教師によるいじめ」と認定される事件が福岡で起こった。問題の小学校教師は、担当児童を自殺強要や暴力でPTSDによる長期入院に追い込んだとされ、「殺人教師」とまで報じられた。
だが後に、一連の事実は、児童両親によるでっちあげだったことが明らかになる──。
子供は善、教師は悪という単純な二元論的思考に陥り、550人もの大弁護団を結成した人権派弁護士、保護者の無理難題を拒否できない学校現場や教育委員会、すぐに騒いで教師を悪者にするマスコミ、被害者を救うヒロイズムに酔った精神科医......。
病める教育現場で偽善者たちが引き起こした、驚愕の冤罪劇!
抜粋
序 章
「史上最悪の殺人教師」
火付け役は朝日新聞である。平成15年6月27日の西部本社版に、「小4の母『曾祖父は米国人』 教諭、直後からいじめ」という大きな見出しが踊った。そのショッキングな内容に地元のあらゆるマスコミが後追い取材に走ったが、その時点ではまだ、単なるローカルニュースに留まっていた。
これを一気に全国区にのし上げたのは、同年10月9日号の「週刊文春」である。「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』」。
目を剥くようなタイトルと教師の実名を挙げての報道に全国ネットのワイドショーが一斉に飛びつき、連日、報道合戦を繰り広げる騒ぎとなった。
一体、「史上最悪の殺人教師」と名指しされたのはいかなる教師か。教え子を取り殺す悪鬼のような人物だろうか。実際、彼がしでかしたとされることは、極悪非道、悪魔にも等しい所業である。
件の男性教諭は、平成15年5月当時、福岡市の公立小学校で教鞭を取っていた。
発端は家庭訪問である。彼は、受け持っていた9歳の男児の髪が赤みがかっていることに目をつけ、応対した母親に、「○○君は純粋ではないんですよね」と切り出した。そして、男児の曾祖父がアメリカ人(朝日新聞などの第一報では、「母親の曾祖父が米国人」)であることを聞き出すや、「○○君は血が混じっているんですね」と言い、延々とアメリカ批判を展開した。
あまりのことに母親が、「それは差別ですか。学校では差別はいけないと教えているのではないですか」と抗議すると、「私も人間ですから」と開き直り、「建て前上、差別はいけないことになっているが、ほとんどの人間は心の中で差別意識を持っていますよ」と言った。
そして、あろうことか、「日本は島国で純粋な血だったのに、だんだん外国人が入り穢れた血が混ざってきた。悲しいことに、今では純粋な日本人はずいぶん減っている」と、差別意識をむきだしにした"演説"を3時間もまくし立てた。
不幸なことに、別の部屋にいた男児は、教諭がいたダイニングルームの近くを通りかかり、教諭の発した「穢れた血」という言葉を聞いてしまう。男児は、「穢れた」という言葉の意味がわからず、翌日、小学校の図書室に行き辞書で調べた。
その意味を知った男児は子供心に衝撃を受け、母親にしきりと、「僕の血は汚いと? 皆と同じ赤いのに、何で汚いと?」「顕微鏡で見たらわかると? うつらんと?」と聞いてくるようになった。母親は、男児にそう聞かれる度にやりきれない思いにかられた。
そしてこの家庭訪問の翌日から、男児に対する教諭の、言語に絶する虐待が始まった。
~
福岡市教育委員会は、調査の結果、教諭が児童に対しいじめと虐待を行なっていたことを認め、全国初の「教師によるいじめ」を認定、8月22日、教諭に対し、停職6か月の懲戒処分を言い渡した。しかし、事件はこれで一件落着とはならなかった。
男児は、教諭によるひどい虐待の結果、体の震え、嘔吐、腹痛などが止まらなくなり、9月上旬から小学校を欠席せざるを得なくなった。直後に、非常に重度のPTSD(外傷後ストレス障害)と診断され、自殺の恐れもあったため、大学病院の精神科閉鎖病棟に長期入院する事態となる。
ここに至って男児の両親は、PTSDを理由に、教諭と福岡市を相手取って約1300万円(度重なる拡張申し立てにより、最終的には約5800万円)の損害賠償を求める民事訴訟を10月8日、福岡地裁に起こした。
訴訟の先頭に立ったのは、元裁判官で、福岡県弁護士会「子どもの権利委員会」委員長を務める大谷辰雄弁護士。前例のない児童虐待事件に持ち前の正義感をたぎらせた彼は、手紙やインターネットなどで全国の弁護士に呼びかけ、約550人もの大弁護団を結成。記者会見の席で、「男児にしたことを考えれば教師失格。教職を去るべきだ」と怒りを露にした。
12月5日。マスコミ注視の中で第1回口頭弁論が行なわれた。以後、法廷の場で、教師による児童虐待という前代未聞の事件の全貌が暴かれ、この「殺人教師」に正義の鉄槌が下されるはず、だったのである。
ところが裁判は、大方の予想に反して、回を重ねるごとに思いもよらない展開を辿り、驚愕の事実が次々と明らかになっていった。
Amazon.co.jp: でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相: 本: 福田 ますみ
クレーマー保護者の恐怖
福田ますみ『でっちあげ?福岡「殺人教師」事件の真相?』
福田ますみ
平成15年6月の朝日新聞のスクープをきっかけに全国的なニュースにまで発展した「いじめ教師事件」というのをご存じだろうか。福岡市の公立小学校の男性教諭が、アメリカ人の曾祖父を持つ9歳の男児に対し、人種差別に基づく凄惨な虐待やいじめを繰り返していたとされる事件である。
〈『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『殺人教師』〉
「週刊文春」は目を剥くようなタイトルと教師の実名まで曝して、その行状を書き立てた。
発端は家庭訪問である。担任児童の母親から、家系にアメリカ人の尊属がいることを聞き出した教諭は、「外国人の穢れた血が混ざった」などと、差別意識をむきだしにしたアメリカ批判をまくし立てた。
この家庭訪問の翌日から、言語に絶する虐待が始まる。下校前、この児童にだけ10秒で荷物を片づけるよう命じ、できないと、両耳を引っ張る「ミッキーマウス」、鼻をつまんで振り回す「ピノキオ」など、5つの刑の中から一つを児童に選ばせて体罰を行なっていた。このため児童は、耳がちぎれて化膿したり、鼻から大量の出血をするなどした。
さらに教諭は、「穢れた血をうらめ」「アメリカ人は頭が悪い」などと、差別的な暴言を男児に投げつけていた。その上あろうことか、「血の穢れている人間は生きている価値がない。早く死ね」と自殺を強要し、男児が自殺を図ったこともわかった。
保護者の抗議でようやく事実を知った学校側は教諭を担任から外し、教育委員会は全国初の「教師によるいじめ」と認定、停職6か月の懲戒処分に処した。しかし全ては遅すぎた。男児は、教諭の虐待によって重いPTSDを発症、精神病院に約半年間入院する事態となったからだ。
そのため両親は、教諭と福岡市に損害賠償を求め提訴。なんと550人にも及ぶ大弁護団が結成され、法廷の場で、教師による児童虐待という前代未聞の事件の真相が暴かれる??はずだった。
ところが裁判は、思いもよらない展開を辿る。原告側の主張にさまざまな疑惑が浮上したからである。
たとえば、教諭の人種差別の原因とされた男児の“アメリカ人の血”について、被告代理人らが調べたところ、男児の家系にアメリカ人らしき人物は見当たらなかった。また、男児は重いPTSDと診断されたはずなのに、入院中にその症状は全く現れないのだ。これは一体どういうことか。
児童両親の矛盾だらけの言動が次々に明らかになり、ついには、事件自体が原告らのでっちあげである可能性が高まっていった。
ところが、ここに至るまで、学校も、教育委員会も、原告側の弁護士も、男児をPTSDと診断した精神科医も、そしてマスコミも、保護者の話を鵜呑みにして「殺人教師を葬り去れ」と大合唱していたのである。
おかげで教諭は、「事実無根だ」と必死に訴えたにもかかわらず、こうした偽善者たちによって、真綿で首を締められるように「殺人教師」に仕立て上げられていった。
注目の判決は、この事件の顛末を克明に追った本書でぜひ確かめて頂きたい。
今、学校に理不尽な要求を突きつける「困った保護者」が問題になっているが、この事件の両親などは、その究極の例だろう。
お読み頂いた後は、保護者の無理難題に対して、教師や学校現場がいかに無力であるか、くわえてマスコミ報道のいい加減さ、PTSDが損害賠償請求の手段と化している実態などを知って、愕然とされるのではないだろうか。
件の教師に降りかかった災難は、決して稀有な例ではない。子供が今以上に“聖域化”し、教師がますます物を言えなくなる状況が続けば、容易に第2、第3の同様な事件が起こっても何ら不思議はないからだ。
(ふくだ・ますみ ライター)
http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/303671.html
2007/01/19
「でっちあげ」はこうして生まれた
1月18日(木)JAL1035便で札幌に着いたときには気温が零下4℃だった。たまたま夕張に住む人から話を聞いた。みのもんたさん、鈴木宗男さん、松山千春さんが最近も訪れた。なかでも顰蹙を買ったのは某テレビ局朝番組の取材だという。取材された人たちが不快感を語っている。仕組まれた構図に住民を当てはめていく。それだけではない。「ほかのテレビ局には答えないでください」などとも言われたそうだ。ふーん、そんなこともあるだろうなと心中で思いながら、機内で読んでいた本のことが蘇ってきた。福田ますみさんの『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮社)だ。あれはもう4年も前のこと。福岡市の小学校教師がアメリカ人を曽祖父とする教え子に対して「血が穢れている」と言ったことをきっかけにいじめを行ったという事件だ。教師は停職6か月となり、担任も外される。はじめは朝日新聞西部本社版や西日本新聞が報じ、さらには「週刊文春」が記事にしたことで全国問題化した。テレビ各局も「教師によるはじめてのいじめ」認定を大々的に報じていく。その流れで行われた報道では、教師が子供に自殺を求めるというものまであった。「被害者」の起こした民事訴訟には何と500人を超える弁護士が名前を連ねた。わたしもそうした情報を根拠にして「本当なら」と条件を付けながらも教師を糾弾した。ところが事件はまさに「でっちあげ」だった。福田さんは、なぜ事件が作り上げられていったかを具体的に明らかにしていく。マスコミ関係者だけでなく、広く読まれるべき著作だ。
異常な虚言癖と攻撃性のある両親は、問題行動のあったわが子を「守る」ため、学校に抗議をはじめる。表面化してはならないと判断した校長、教頭、そして教育委員会は、事実を正確に把握することなく、両親の言い分をそのまま鵜呑みにしていく。「それは違う」と思っていた教師も、謝ることで問題が沈静化すればいいと思い、不本意ながら情況を受け入れていく。するとさらに両親が虚偽を作り上げて事態はさらに大きくなっていった。「週刊文春」のタイトルは「『死に方教えたろうか』と教え子を恫喝した史上最悪の『最悪教師』」というセンセーショナルなものだった。テレビで最初に教師の言い分を報じたのは「ザ・ワイド」。さらに「スーパーモーニング」もあとを追う。ところが「週刊文春」はこの報道を糾弾した。「史上最悪の『殺人教師』を擁護した史上最悪のテレビ局」という記事だ。福田さんの本には、こうした記事を書いた記者の実名も明らかにされている。問題はなぜこうした「でっちあげ」が成立したかということである。それは「教育という聖域」では、親の言い分が容易に絶対的な「正義」となりうるからだ。それを助長する学校管理職のことなかれ主義も問題だ。両者の言い分を対等に聞くことがあれば、こうした報道被害も生まれなかっただろう。取材の基本の喪失。意図した構図に「事実」を当てはめていく「見込み取材」がこうした誤報を生んだ。ひどいことだ。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2007/01/post_3fe7.html
軍事評論家=佐藤守のブログ日記 - 虚報・その3
さて、虚報の続きだが、コメンテーターの中に、元三沢基地勤務の隊員がいて当時のことを「補足」してくれたが、自衛隊関係の報道に如何に虚報が多いかを知っている隊員達は、その延長線上で「政治」「経済」「文化」面の記事を読み、自衛隊と同程度の「誤報」が混ざっていることを感じ取っている。少なくとも私はそうしている。
たとえばその昔、原子力関係の意図的とも言うべき虚報で、我が国の原子力研究が大きく後退したことがあった。コメントにもあったが、茨城の原子炉で「放射線漏れ」が発生したとき、A者の記者は「放射能漏れ」と書いて国民を誤った方向に誘導した。その時の責任者であった「遮蔽室長」に聞いたところ、腕時計の夜光塗料程度の放射“線”漏れに過ぎず、握り飯を当てて遮蔽できる程度のものだったのだが、記者は意図的か不勉強からか“放射能”と書き、広島・長崎を持ち出したから国民は恐怖に走り、政府関係者はしり込みして、原子炉の研究は大幅に遅れる結果になった、と悔やんでいた。あの時の新聞記者は、むしろ、その程度の微量な「放射線漏れ」を探知したシステムを評価すべきだったのに・・・と彼は言った。 その後、原子力船「むつ」に飛び火し、ついに「むつ」は一度も全うな研究航海をすることなく、青森県の陸奥湾を追い出され、県内各所をたらいまわしにされて、莫大な「ばら撒き行政」に“貢献”し続けただけで廃船となった。
今、テレ朝が朝のワイドショーで、行政の不始末を鋭く追及しているが、「原子力船むつ」の実態は、それと比較にならないほどの垂れ流しであった。下北半島を廻って見るが良い。巨大な埠頭、港湾施設が廃屋のように林立している筈である。
それと同時に、地上波テレビ局には「行政の不始末」のみならず、自分達「メディアの虚報」がもたらした莫大な国家の損失を追及して欲しいと思っている。
航空自衛隊も、創設以来「虚報」には泣かされっぱなしであった。現場で実情を知る我々若手幹部は、切歯扼腕したものだったが、当時の「お偉いさん方」の誰一人として「反論」する方はいなかった。
そこで広報室長に任命された私は、たまたま整備不良が原因で墜落し、520名もの犠牲者を出したJALー123便事故の際、救助活動をした陸上自衛隊と航空自衛隊員に対して「言われなき非難」が浴びせられたので、防衛庁始まって以来の「官姓名を名乗った反論」をしたのであった。
“虚報”はその都度徹底的に反論しなければ、“南京大虐殺”や“100人斬り”、そして今回の“従軍慰安婦”問題のように、一人歩きして「歴史教科書入り」する事態になるのである。
虚報ほど国益に重大な損害を与えるものはない。国民一人ひとりが、「我関せず」であっていいはずはないと思う所以である。
http://d.hatena.ne.jp/satoumamoru/20070307/1173233230