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『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『ヌーン街で拾ったもの』 レイモンド・チャンドラー

2012-01-26 | Books(本):愛すべき活字

『ヌーン街で拾ったもの』
レイモンド・チャンドラー(米:1888-1959)
清水俊二・他訳
1961年・ハヤカワ・ミステリ



俺が何かを発言する時、語尾に

「だヌ~ン」

を付けるようになったのも、元はと言えばチャンドラーの影響だね。

だヌ~ん、に限って言えば、ピエール瀧よりもちょっと早かったと思う。


2007年に早川がチャンドラー短篇全集を新訳で一挙刊行するまで、長らくこのポケミスとか読んでたねー。

古い訳もそれはそれで味があるから、引っ張り出して、こうしてたまに読んじゃうんだけどね。


昔は印刷機の都合で小さい「つ」が印字できなかったみたいで、俺の持ってる1998年の第8刷でも、中身は

「みろ、やつつけたぞ!」

みたいな具合なんで。

まあ、人間すぐに慣れます。


ちなみに、その前の版までは表紙さえ思いっきり

『ヌーン街で拾つたもの』

でした。



『ヌーン街で拾ったもの』(清水俊二訳)


"Pick-Up On Noon Street"(1936年)。

主人公は麻薬捜査官のピート・アングリッチ。

チャンドラーの短篇の中では、さほど好きな話ではないですね。

車から放り投げられたモノを拾うという不自然すぎる設定に、うまく乗っていけない。

ちなみに、ストーリーの途中で主人公のアングリッチが

”・・・・リノを呼べ”

と書かれた紙片を見つけて、急に

「これで読めた」

と金田一耕助的なことを呟くんですが、何がどう読めたのか、お頭の弱いこっちにはからっきし分かないのだった。



『殺しに鶏のまねは通用しない』(清水俊二訳)


そんなこと急に言われてもなぁ。

俺、殺しに鶏のまねが通用するなんて、もともと考えたこともなかったよ。

"Smart-Aleck Kill"(1934年)の邦題が、なぜこうなるかはお釈迦様でも分からない。

主人公はジョニー・ダルマス。

この話では、ダルマスが赤毛の運転手ジョーイを手下として使ってるのが特徴的。

2007年の新訳では、ダルマスの台詞が普通に

「角のところで待機していてくれ、ジョーイ」

となるのが、1961年の清水訳では

「角をまがつたところで待つてる方がいいぜ、ジョーイ」

となる。

「待つてる方がいいぜ」って・・・。

無理やりハードボイルドっぽくしようとしてて、なんか可愛い。



怯じけづいてちゃ商売にならない(清水俊二訳)


タイトルでお説教ですか。

まあ、さっきの「鶏のまね」云々よりは、言ってること、理解できるけどね。

”Trouble Is My Business”(1939年)。

好きな話です。

エンディングも非常に味があるね。

後のチャンドラーの長編を思わせる。

主人公はジョン・ダルマス。

運転手のジョージが印象的。

チャンドラーの小説には、たまにこういうごっついタフな男が出てきますね。



指さす男(田中融二訳)


”Finger Man”(1934年)。

主人公はフィリップ・マーロウ。

別に、これ以外の3話の主人公だって名前が違うだけで、中身はマーロウ(の原型)なんだけど、この話では完全に、我々の知っているマーロウですね。

何回読んでも面白い。

マーロウが、ドラッグストアでタクシー運転手とやりとりする辺り(194頁)で、ストーリーにドライブがかかる感じ。

あそこで引き込まれる。


そんなわけで、この本の表紙の絵。

これが何なのか、分かる人いたら教えてねっと。


■チャンドラー 自己中心派
(1)長編
『長いお別れ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
『さらば愛しき女よ』 (1976年・ハヤカワ文庫) 
『湖中の女』 (1986年・ハヤカワ文庫) 
『高い窓』 (1988年・ハヤカワ文庫) 
『リトル・シスター』 (2010年・早川書房)  
(2)短篇
『ヌーン街で拾ったもの』 (1961年・ハヤカワミステリ) 
『赤い風』 (1963年・創元推理文庫) 
『チャンドラー短篇全集』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(3)トリビュート/アンソロジー
『プードル・スプリングス物語』 (1997年・ハヤカワ文庫)
『フィリップ・マーロウの事件』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(4)チャンドラー研究
『レイモンド・チャンドラー読本』 (1988年・早川書房)
(5)映画でチャンドラー
『三つ数えろ』 "The Big Sleep"(1946年) 
『ロング・グッドバイ』 "The Long Goodbye"(1973年) 
『さらば愛しき女よ』 "Farewell My Lovely"(1975年) 
(6)ドラマでチャンドラー
『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) 



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  ヌーン街で拾ったもの (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 611)
清水 俊二
早川書房

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