『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『高い窓』 レイモンド・チャンドラー

2013-08-10 | Books(本):愛すべき活字

『高い窓』
レイモンド・チャンドラー(米:1888-1959)
清水俊二訳
"The High Window" by Raymond Chandler(1943)
1988年・ハヤカワ文庫


日常生活の中で、あの台詞は言わないようにしている。

「いつやるの?」

「今でしょ!」

という例のアレだ。


すっかりブームも去ったと思っていたが、女性誌In Red9月号の特集は

「今でしょ!モテるゾ!カジュアル」

ということで、まだしばらく使いまわされるようだ。

(↑どーでもいい情報をよく知ってますね)


こないだ、誰かと話していて、自然な流れでどうしても

「今でしょ!」

を言わざるを得ないシチュエーションになってしまい、慌てて

「す・・・、すぐだろうな」

と、「今でしょ」を避けるあまり、かなり不自然な言い回しになってしまったのだった。 


別に予備校講師がスキとかキライじゃなくて、言いたくないもんは言いたくないんジャイ!


言いたくないといえば、夏のこの時期「あの台詞」も、ありがち過ぎて言いたくない。

「高校野球のお兄さん達がもう年下だと気付いたときは、愕然としましたよね」

というヤツだ。

確かにそん時は愕然としたけど、台詞としてはもう黴が生えている。


さて、高校球児など遠に過ぎ去った俺の世代にとって、次の大ショックはフィリップ・マーロウが年下になった時ではないだろうか。

嘘でしょ・・・、あのマーロウが、俺よりも?

という。


いやー、果たして、その時、俺は自分自身の成熟度を許せるだろうか。

マーロウほどの大人の男を、他に知りませんからね。



マーロウのいい男っぷりの最たるものは『長いお別れ』で友人テリー・レノックスをかばい続けてお巡りさんに散々いびられシーンにあると思いますが、

あーいうのって、年をとればとるほど難しさが分かってくるもんです。

あかん、俺には無理やな、と。


マーロウに追いつくのは、まあ、幾つになっても不可能だ。

日々やれる範囲のことを一生懸命やって、自分を磨いていくしかない。


目標として・・・

『長いお別れ』 で、マーロウがレノックスにしてあげることは、多分目指しても目指しきれない。

無理っス。

俺としては、今後、本書『高い窓』でマーロウが秘書マールにしてあげること、あの優しさ辺りを目標にして頑張ることにしたい。


物語の終盤で、マールに隠された真実を伝える時のマーロウ(330ページ)ったら、もう!

マーロウはんの素敵さは、ほんま五臓六腑に染み渡るでぇ。


<おまけ>

そういえば、2008年12月号の『yom yom』で、石田衣良が

『ベスト・ヒット・名探偵』

というのをやっていて、ここでもまず最初にマーロウが挙げられていた。


石田衣良は

「ちなみにぼくが初めて全篇を読み通した英文のペーパーバックは『The High Window』(高い窓)。

感想は、むずかしくてよくわからなかった!」

と書いている。


英文でコレ読みましたか。

日本語で読んでも、まあまあ込み入ってるからね。


それでも、マーロウが事件のからくり(バニヤーの強請りのネタ)に気付くシーン(272頁)はちょっとゾクっとしますね。

珍しく、普通のミステリとして。


■チャンドラー 自己中心派
(1)長編
『長いお別れ』 (1976年・ハヤカワ文庫)
『さらば愛しき女よ』 (1976年・ハヤカワ文庫) 
『湖中の女』 (1986年・ハヤカワ文庫) 
『高い窓』 (1988年・ハヤカワ文庫) 
『リトル・シスター』 (2010年・早川書房)  
(2)短篇
『ヌーン街で拾ったもの』 (1961年・ハヤカワミステリ) 
『赤い風』 (1963年・創元推理文庫) 
『チャンドラー短篇全集』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(3)トリビュート/アンソロジー
『プードル・スプリングス物語』 (1997年・ハヤカワ文庫)
『フィリップ・マーロウの事件』 (2007年・ハヤカワ文庫) 
(4)チャンドラー研究
『レイモンド・チャンドラー読本』 (1988年・早川書房)
(5)映画でチャンドラー
『三つ数えろ』 "The Big Sleep"(1946年) 
『ロング・グッドバイ』 "The Long Goodbye"(1973年) 
『さらば愛しき女よ』 "Farewell My Lovely"(1975年) 
(6)ドラマでチャンドラー
『ロング・グッドバイ』 (2013年・NHK・浅野忠信主演) 


<Amazon>

高い窓 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
清水 俊二
早川書房
The High Window
Mark Billingham
Penguin

 


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