『レイモンド・チャンドラー読本』"The World of Raymond Chandler"1988年・早川書房1988年に、レイモンド・チャンドラーの生誕100年を記念して早川文庫が出版。24年も経って言うのもなんだけど、このクオリティーで本書を仕上げてくれた編集者の方にお礼を言いたい。ありがとうごじゃいまシュ。(諸見里風)熱狂的なチャンドラーファンを指す「チャンドラリアン」という造語があるも . . . 本文を読む
『真夜中のギャングたち』バリー・ユアグロー(米:1949-)柴田元幸訳”Gangster Fables” by Barry Yourgrau(2010)2010年・ヴィレッジブックス++++ひどく味気ない退屈にまみれて、一人の囚人が気晴らしに、架空の女の子をめぐる物語をでっち上げる。故郷の田舎町で、囚人はその子にぞっこん惚れ込んでいるが、向こうは相手にしてくれない。消灯時間 . . . 本文を読む
『告白』湊かなえ(日:1973‐)2008年・双葉社2010年・双葉文庫ぐいぐい読ませる。これがデビュー作だなんて、巧いよなぁと思う。一つの出来事をいろんな登場人物の視点から見せる、映画で言うと『エレファント』とか『バンテージ・ポイント』みたいな形式で各短篇が進んでいくので、読み進めるうちに、へー、こいつこんな風に思ってたのか、という興味も満たされる。でも、最初の短篇『聖職者』でそうとうミステリア . . . 本文を読む
『共喰い』田中慎弥(日:1972-)2012年・集英社【以下、完全に100%ネタバレ。読むばやいそこんとこヨロシクね】なんかちょっと照れちゃうわね。ごくたまに、こんな話題作のことなんか喋ろうとすると。昭和63年。主人公の17歳の少年が住む地域は川辺と呼ばれ、家々の汚水がそのまんまストレートに川に流れこんでるから、臭気、っていうか要するにウン〇の匂いが町全体にたちこめている。俺なんか基本的にウン〇の . . . 本文を読む
『スティル・ライフ』池澤夏樹(日:1945-)1988年・中央公論社1991年・中公文庫++++少女たちは大声をあげて木のまわりを走り、川に足を浸し、持参したお菓子の類をたくさん食べた。四人は厳密にぼくと等距離を保った。ぼくに電話をしてきた子でさえ、他のみんなと同じ語数しかぼくに話しかけなかった。ぼくは彼女らを無視し、川岸に寝ころがって桜を見ながら、佐々井の仕事のことを考えた。「近くに川魚料理の店 . . . 本文を読む
『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹(日:1949-)2007年・文芸春秋2010年・文春文庫++++そのようにして、朝の五時前に起きて、夜の十時前には寝るという、簡素にして規則的な生活が開始された。一日のうちでいちばんうまく活動できる時間帯というのは、人によってもちろん違うはずだが、僕の場合のそれは早朝の数時間である。その時間にエネルギーを集中して大事な仕事を終えてしまう。そのあと . . . 本文を読む
『新訳 君主論』マキアヴェリ(伊:1469-1527)"Il Principe" by Niccolò Machiavelli(1514)※1532年刊1995年・中公文庫2002年・改版++++さて、こういう実例は、昔から歴史上、枚挙にいとまがないが、教皇ユリウス二世の最新の実例だけは、わたしはなんとしても見逃すわけにはいかない。彼がフェラーラ征服を望んで、そのために、全面的に自分 . . . 本文を読む
「マンガが好きで好きでたまらない」まではいかない俺だけど、新幹線のなかで塩野七生を読み終えて、カバンの中に読むもんがコレしか入ってなかったので、熟読。こういう特集って、買っても読まないよね。2005年6月のSTUDIO VOICEのコミック特集とか、結局読んでないねぇ。表紙の松本大洋は素晴らしい。(その昔、1993年に鉄コン筋クリートの連載が始まったとき「これは俺のマンガや!」と思ったもんだ)でも . . . 本文を読む
『蛇の石 秘密の谷』バーリー・ドハティ(英:1943-)中川千尋訳"The Snake-Stone" by Berlie Doherty(1995)1997年・「アンモナイトの谷」新潮社2001年・新潮文庫++++お父さんが、ぼくの肩を抱きよせた。クラブのほかの子がもう来てるんじゃないかと、気が気じゃなかった。「遅れちゃうよ」からだをよじって逃げようとすると、お父さんは大声で笑いだした。「親子なん . . . 本文を読む
『in our time』アーネスト・ヘミングウェイ(米:1899-1961)柴田元幸訳"in our time" by Ernest Miller Hemingway (1924)2010年・ヴィレッジブックス++++朝六時半に大臣六人が病院の壁を背にして射殺された。中庭のあちこちに水たまりがあった。中庭の敷石に濡れた落葉があった。雨が強く降っていた。++++本文わずか30ページ、部数わずか17 . . . 本文を読む
『ヌーン街で拾ったもの』レイモンド・チャンドラー(米:1888-1959)清水俊二・他訳1961年・ハヤカワ・ミステリ俺が何かを発言する時、語尾に「だヌ~ン」を付けるようになったのも、元はと言えばチャンドラーの影響だね。だヌ~ん、に限って言えば、ピエール瀧よりもちょっと早かったと思う。2007年に早川がチャンドラー短篇全集を新訳で一挙刊行するまで、長らくこのポケミスとか読んでたねー。古い訳もそれは . . . 本文を読む
『去年を待ちながら』フィリップ・K・ディック(米:1928-1982)寺地五一・高木直二訳"Now Wait For Last Year" by Philip K.Dick (1966)1989年・創元SF文庫++++「彼は独裁者だが―――それが彼の実体だということはきみも知ってのとおり、ただ、その言葉をわれわれが使いたくないだけのことなんだが―――その独裁者としては異例の人物だ。まず、第一に現時 . . . 本文を読む
『優雅で感傷的な日本野球』高橋源一郎(日:1951-)1988年・河出書房新社2006年・河出文庫(新装新版)++++ぼくは伯父が『偉大な選手通り(グレートプレイヤーズストリート)』と名付けたアスファルトの路を歩いて北に向かった。途中で、塾へ通う小学生の一団とすれちがった。「やあ」とぼくは言った。その一団の中に、たぶん一人ぐらいは知り合いがいるだろうと思ったからだ。「やあ」「やあ」「やあ」「やあ」 . . . 本文を読む
『犬は吠えるⅠ ローカル・カラー/観察記録』トルーマン・カポーティ(米:1924-84)小田島雄志 訳”The Dogs Bark” by Truman Capote(1951,57,65,66,68,69,71.72.73)1988年・早川書房2006年・ハヤカワepi文庫++++<問>もしあなたがどこか一つの場所に住まなければならないとしたら―――永久にですよ―――どこ . . . 本文を読む
『いちばんここに似合う人』ミランダ・ジュライ(米:1974-)岸本佐知子訳"No One Belongs Here More Than You" by Miranda July(2007)2010年・新潮クレストブックス++++で、彼女のほうは、あなたのその―――いろんなことを知ってるの?女の人のこととか?いいや。私たちはしばらく無言でお茶を口に運んだ。十二年前には私もその”いろんなこ . . . 本文を読む